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面識のない相続人から相続に関する手紙が届いたときの対応方法

2023-10-20

記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。

ある日、面識のない遠縁の相続人や司法書士事務所から相続に関する手紙が届くことがあります。

突然、送られてきた手紙に驚かれて、どのように対応してよいのか、困惑している方もいるかと思います。

本記事では、相続に関する手紙が届いたときの対応について解説いたします。

手紙を受け取った方は相続人であるということ

相続に関する手紙が送られてくるということは、受け取った方は相続人であり、かつ、相続手続きの当事者になります。

多くのケースでは、手紙を送る前に司法書士事務所などの専門家に相続人の調査を依頼して、戸籍上から相続人であることを確認してから手紙をお送るので、誤って手紙を送ることはなく、受け取った方は相続人であることは間違いありません。

したがって、送られてきた手紙の中には、差出人である相続人の連絡先と併せて、司法書士事務所などの専門家の連絡先が記載されていることがあります。

手紙が送られてくる理由

差出人である親族(相続人)が手紙を送る理由とは、相続手続きに協力してもらうためです。

相続手続きの多くは、遺産分割協議など相続人全員の協力のもと手続きを進める必要があるため、たとえ面識がなかったり、疎遠になっている相続人であっても協力を得る必要があります。

手紙を受け取った後の対応について

手紙を受け取った後の対応については、以下の3つが挙げられます。

相続手続きに協力する旨の連絡をする

手紙の内容から協力しても問題がないと思われるのでしたら、相続手続きに協力する旨の連絡をします。

その後は、差出人である相続人や手続きを担当している司法書士等の専門家から今後の手続きについての案内がきます。

内容を把握するために連絡する

手紙の内容がよく分からず、不安に感じる方や相続手続きを経験したことがない方は、まずは、手紙の差出人である相続人や手紙に記載されている司法書士等に連絡して、相続財産や手続きの詳細について、電話などで問合せをしてみることをお勧めします。

関わりたくないときは、「相続放棄」する旨を連絡する

相続手続きに関わりたくない方は、初めから「相続放棄」をする旨を連絡して伝えるようにしましょう。

相続放棄とは、相続人として財産を承継する権利や地位を自ら手放す法律上の手続きのことです。相続放棄をすることで、相続人ではなくなるため、手続きに関わる必要もなくなります。

ただし、相続放棄は、相続の開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。つまり、今回のケースでは手紙を受け取った時から3か月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。

ご自身で相続放棄の手続きを行うことが難しいと感じる方は、手紙に記載されている司法書士に依頼することもできますし、ご自身の判断で、別の司法書士や弁護士などの専門家に依頼することもできます。

相続放棄について、詳しくは「相続放棄とは」をご覧ください

手紙を受け取った後に無視することのリスク

手紙を受け取った後に、返信を無視したり放置することはリスクになることがあります。

3か月以上放置すると「相続放棄」ができなくなる

先程もご説明しましたが、相続放棄をしたい方は、相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申し立てをする必要があります。

「相続の開始を知った」とは具体的には、手紙を受け取った時から3か月以内に申立てる必要があり、何もせず3か月以上放置してしまうと、もはや相続放棄ができなくなります。

そして、もっともリスクになるのが被相続人(亡くなった方)が借金をしていた場合です。3か月以上何もせず放置すると法律上は、相続することを認めたことになり、被相続人が残した借金を手紙を受け取った相続人自身が返済する義務を負います。

相続放棄をしたい方は、放置せず、なるべく早めに対応することをお勧めします。

裁判所を介した手続きになることもある

相続手続きは、相続人全員が協力しあいながら手続きを進める必要があり、手紙を無視し続ける限り相続手続きを進めることができなくなります。

したがって、手紙の差出人である相続人からすると、連絡が取れない以上、遺産分割協議もできないため、強制的に遺産分割を行う手続きに移行する可能性があります。

その方法というのが「遺産分割調停・審判」になります。遺産分割調停は、家庭裁判所を介して遺産の分け方を決める手続きのことです。

遺産分割調停に移行すると、手紙を受け取った方にも裁判所から呼び出し状が届きます。そして、呼び出しにも応じなければ、遺産分割の審判に移行します。遺産分割審判とは、家庭裁判所が相続人である各当事者の主張を聞き、遺産の分け方を決める方法になります。

家庭裁判所を介せば、最終的には強制的に相続手続きを解決することができます。ただし、通常の相続手続きとは異なり、時間と費用が掛かります。

手紙を無視することは、ご自身を含めた相続人にとってデメリットになることも多く、必ず何らかのアクションを起こすことをお勧めします。

まとめ

記事を最後までご覧いただき、ありがとうございました。

相続人が多数となると、中には面識のない相続人が含まれることがあります。

手紙を受け取った方は内容を確認して、不明な点があれば差出人である相続人か司法書士等の専門家に相談してみて、ご自身はどうしたいのか希望や要望を伝えるようにしましょう。

当事務所では相続手続きに関するご相談を初回は無料で承っております。

今回の記事のような事案でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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相続放棄以外にも遺産を手放す方法がある

2023-10-06

記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田でございます。

相続放棄する以外にも遺産を手放す方法があります。

相続放棄の手続きは、家庭裁判所への申立てが必要になるなど、何かと手間が掛かる手続きになります。

そして、相続放棄以外の方法として、遺産を相続する権利を手放すことができる「相続分の譲渡」という方法があります。

本記事では、相続分の譲渡の方法と注意点をご紹介したいと思います。

相続分の譲渡とは

相続分の譲渡とは、相続人として故人の遺産を相続できる権利や地位を他の相続人や第三者に譲渡することをいいます。

例えば、父が亡くなり、長男・長女・次女の3名が相続人になるとします。この場合、長男・長女・次女の相続分は各1/3になります。そして、相続人の1人である長男が、次女に自身(長男)の相続分1/3を譲りたいとして、次女に相続分を譲り渡すことを相続分の譲渡といいます。

次女が長男から相続分を譲り受けると、各相続人の相続分は長女1/3が、次女が2/3となります。そして、相続分を譲り渡した長男は相続人として離脱することになります。

譲渡する相手方

相続分の譲渡は、他の相続人だけではなく、相続人以外の第三者に譲渡することもできます。

ただし、相続人以外の第三者に相続分が譲渡された場合、他の相続人は、取戻権という権利を行使して、第三者が取得した相続分を取り戻すことが可能です(民法第905条)。

これは、相続分を譲り受けた第三者は、相続人としての立場を有することになるので、遺産分割協議に参加することもできます。ただ、家族以外の第三者が遺産分割協議に参加するとなると、他の相続人との間で争いになる可能性があり、法律上は、第三者に譲渡された相続分を取り戻すための権利が認められています。

ただし、この相続分の取戻権を行使できるのは、相続分の譲渡があった時から1か月以内という期限がありますので、ご注意ください。

相続分を譲渡できる時期と方法

相続分を譲渡する方法ですが、相続分を譲り渡す相続人と譲受ける人が合意をすることで成立します。相続放棄とは異なり、裁判所に対する手続きも必要ありません。もっとも実務上は、「相続分譲渡証明書」を作成して書面として残します。

また、相続分を譲渡したい場合は、遺産分割協議が成立する前に譲渡する必要があります。

遺産分割協議が成立した後に、相続分の譲渡を行ってしまうと、新たに相続権を持った人を加えて、再度遺産分割協議をやり直す必要があるため、協議が成立した後は、相続分の譲渡を行うことはできません。

相続分を譲渡したときの税金

相続分を譲渡するときの対価は有償でも無償でも構いませんが、譲渡した相手によって税金の課税有無や課税される税金の種類が異なります。

相続人間で相続分を譲渡したときの税金

他の相続人に無償で相続分を譲り渡したとしても、譲渡人・譲受人である相続人に贈与税などは課税されることはありません。もっとも相続分を譲り受けた相続人には相続税が課税されます。

一方、有償で譲渡した場合には、譲渡人である相続人が受け取った対価が相続税の対象となります。そして、相続分の譲り受けた相続人は、その支払った対価を差し引いた相続財産に対して相続税が課税されます。

相続人以外の第三者に相続分を譲渡したときの税金

相続分を譲り受ける相手方が相続人以外の第三者である場合、相続分を無償で譲渡すると、譲り渡し人である相続人には相続税が課税されて、譲受人には贈与税が課税されます。

一方で、相続分を有償で譲渡した場合は、譲り渡した相続人には相続税と譲渡所得税が課税されます。

これは、第三者に相続分を譲渡する行為は、譲り渡し人である相続人がいったん財産を相続したものと税務上は取り扱われてしまい、第三者に相続分を譲渡したのが有償・無償を問わず、相続税が課税されることになります。また、有償で譲渡したときに、利益が発生した場合には、譲渡所得税もあわせて譲り渡した相続人が負担することになります。

相続放棄と異なる点

「相続放棄」と「相続分の譲渡」は、故人が残した財産を相続する権利を手放すという部分においては共通しています。

ただし、相続放棄と相続分の譲渡の異なる重要なポイントとしては、故人(被相続人)が残した借金などのマイナス財産の取扱いです。

「相続放棄」の場合は、家庭裁判所に申立てをして受理されると、法律上は最初から相続人ではなかったという取り扱いになります。したがって、債権者から借金の返済を求められたとしても相続放棄をしたことを理由に、借金の支払いを拒むことができます。

一方、相続分の譲渡をするとマイナスの財産も譲受人に移転することになります。ただし、債権者は、譲り渡し人である相続人に借金の支払いを請求することができ、相続分を譲渡したことを理由に借金の支払いを拒むことができません。

そのため、相続分を譲り渡した相続人は、債権者からの請求に応じて、一旦借金を返済したうえで、相続分の譲受人に対して支払った分を請求することになります。

ここが「相続放棄」と「相続分の譲渡」の異なる点になります。

相続放棄について詳しくは、「相続放棄とは」をご覧ください。

相続分の譲渡を利用するケース

ここまでのご説明を踏まえて、相続分の譲渡をするケースをご紹介します。

  • 故人に借金はないが、相続財産を承継したくない
  • 遺産分割など、相続手続きに関与したくない
  • 相続人同士の争いに巻き込まれたくない
  • 自分が相続するよりも他の相続人に相続してもらいたい
  • 相続人の数が多く、相続する権利を集約したい
  • 相続財産が不動産しかなく、代わりに現金を受け取りたい
  • 相続すること自体に興味がない

まとめ

記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ここでは、相続放棄以外に遺産を手放す方法として相続分の譲渡という方法をご紹介しました。相続放棄と比べて、裁判所に対する手続きも不要なため、手間を掛けずに相続手続きに関与したくない方には、お勧めの方法です。

もっとも、故人が借金をしていた場合は、相続分の譲渡をしたとしても支払い義務を免れることはできないのでご注意ください。

当事務所では、相続分の譲渡に関わらず、相続手続き全般に関するご相談を承っております。

お気軽にお問い合わせください。

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相続放棄した人が生命保険金を受け取る際の注意点

2023-09-22

記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。

相続放棄をすると故人が残した財産の一切を受け取ることができなくなります。

ただし、例外もあり、生命保険金については一定の要件を満たすことで相続放棄をした人でも受け取ることができます。

本記事では、相続放棄した人が生命保険金を受け取る際の注意点について解説いたします。

相続放棄しても生命保険金は受け取れる

生命保険金は、相続放棄した相続人でも受け取れます

相続放棄すると故人が所有していた財産の一切を相続できなくなるため、一般的には、生命保険金も受け取れないと思われる方もいるのではないでしょうか。

もっとも法律上は、生命保険金については故人から相続する財産ではなく、保険契約に基づいて保険会社から支払われる金銭のため、保険契約で指定された受取人の財産(固有財産)とされています。

つまり、相続放棄をした人でも生命保険金の受取人として指定されていれば生命保険金を受け取れます。

以下は、相続放棄をしても生命保険金を受け取れるケースになります。

相続放棄した人が生命保険金を受け取れるケース

  • 相続放棄した人が保険金の受取人として指定されている
  • 受取人が特定個人ではなく、「相続人」と指定されている

相続放棄した人が生命保険金を受け取れないケースもある

相続放棄した人が生命保険金を受け取れないケースも存在します。

それは、生命保険金の受取人が亡くなった本人(故人)である場合です。

この場合、生命保険金を受け取るための権利が亡くなった人の相続財産に含まれることになります。つまり、相続放棄した相続人は、相続財産を受け取ることができないため、当然生命保険金も受け取ることができなくなります。

相続放棄した人が生命保険金などを受け取れないケース

  • 亡くなった本人(被相続人)が受取人に指定されている生命保険金
  • 亡くなった本人が受け取っていた医療保険の入院給付金
  • 亡くなった本人が契約者である生命保険の解約返戻金

生命保険金を受け取る際の注意点

①相続放棄した後に、生命保険金を受け取るようにする

相続放棄をする前でも生命保険金を受け取ることできますが、事前に保険契約や保険約款を確認して、生命保険金を受け取っても相続放棄に問題がないか確認する必要があります。

相続放棄をする前に確認せず、先に生命保険金を受け取ってしまうと相続放棄ができない理由を作ってしまうことにもなりかねません。

ただし、相続放棄ができるのは、相続の開始をした日から3か月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。相続放棄を確実にしたい方や期限が迫っている方は、相続放棄をした後に、生命保険を受け取れるか確認をする方が安全です。

②生命保険金を受け取った後の税金の課税について

相続放棄をした人が生命保険金を受け取ると相続税が課税されます。

もっとも、生命保険金には相続税の非課税枠があります。

生命保険金の非課税枠とは「500万円×法定相続人の数」までは、生命保険金を受け取っても相続税が課税されないという制度のことです。

では、相続放棄した人が生命保険金を受け取ったときに、この非課税枠を利用して相続税を計算できるのでしょうか。

答えは、相続放棄をした人が生命保険金を受け取った場合は、この非課税枠を利用することができず、課税される相続税を減らすことはできません。というのも非課税枠の適用を受けるには、相続放棄をしていない相続人が生命保険金を受け取ることが要件になっているからです。

つまり、相続放棄をした人でも生命保険金は受け取れますが非課税枠を利用できず、相続税が課税されることは、ご注意ください。

まとめ

記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。

相続放棄をした人でも生命保険金を受取ることは可能です。

しかし、生命保険金の非課税枠が適用されないため、結果として相続税が課税されることになります。また、保険契約の内容や保険約款を確認せずに生命保険金を受けると相続放棄ができなくなる可能性もありえます。

相続放棄を検討されている方で生命保険金を受け取るつもりのある方は、一度は専門家に相談したうえで手続きを進めることをお勧めします。

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他の相続人が相続放棄しているか調べる方法  

2023-07-31

記事をご覧いただき、有難うございます。港区の司法書士山田武史です。

相続放棄とは、亡くなった人の財産を引き継ぐ権利を相続人自らが手放すための法律上の手続きのことです。

そして、他の相続人が相続放棄をしているか知りたい場合には、管轄の家庭裁判所に対して、相続放棄の申述の有無を照会することで確認することができます。

本記事では、他の相続人が相続放棄をしているのか確認する方法をご紹介します。

相続放棄について、詳しくは「相続放棄とは」をご覧ください。

家庭裁判所に照会して確認することができる

被相続人(故人)が亡くなった時の住所地を管轄する家庭裁判所に問い合わせる(照会する)ことにより、他の相続人が相続放棄しているのか確認することができます。

ただし、家庭裁判所に電話で問い合わせても教えてくれるわけではありません。

他の相続人が相続放棄をしているのか確認するには、正式な手順を踏む必要があります。

照会ができる人

照会の申請ができるのは、以下の人に限られます。

  • 相続人(共同相続人など)
  • 利害関係人(故人に対する債権者など)

必要書類

相続人が照会する場合

  • 照会申請書および被相続人の目録(引用元:東京家庭裁判所ウェブサイト)
  • 被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票(ともに本籍地入り)
  • 被相続人と相続人の関係が分かる戸籍謄本(3か月以内)
  • 相続人の住民票(本籍地入り)
  • 相続関係説明図
  • 返信用封筒と返信用切手
  • 手数料は無料

利害関係人(債権者など)が紹介する場合

  • 照会申請書および被相続人の目録(引用元:東京家庭裁判所ウェブサイト)
  • 被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票(ともに本籍地入り)
  • 利害関係人の住民票(法人であれば登記簿謄本)
  • 利害関係の存在を証明する書面(金銭消費貸借契約書、債務名義等のコピー)
  • 相続関係説明図
  • 返信用封筒と返信用切手
  • 手数料は無料

管轄の家庭裁判所に必要書類を提出又は郵送

提出先は、被相続人が亡くなった時の住所地を管轄する家庭裁判所です。

被相続人が亡くなった時の住所地が東京23区であれば、東京家庭裁判所になります。

裁判所の管轄については、裁判所の管轄区域をご覧ください。(引用元:裁判所ウェブサイト)

家庭裁判所から回答書が届く

書類を提出した後、先順位の相続人が相続放棄していた場合は、家庭裁判所から事件番号や受理された日が記載された「回答書」が届きます。反対に、相続放棄していなければ、相続放棄がされていないことの証明書が届きます。

相続人が相続放棄した後の相続権について

特定の相続人が相続放棄した後は、他の相続人に相続権が発生することになります。

もっとも相続人になれる人には法律上の順位があり、一部の相続人が相続放棄した後は、法律の規定に従って、他の相続人に相続権が発生することになります。

【相続人の順位】
  • 第1順位 亡くなった人の子・孫など
  • 第2順位 亡くなった人の父母・祖父母など
  • 第3順位 亡くなった人の兄弟姉妹

※被相続人の配偶者は、各順位の相続人と共に相続人となります。

上記のとおり、第1順位の相続人は子(孫)であり、子全員が相続放棄すると第2順位の相続人である父母に相続権が発生します。

つまり、先順位の相続人全員が相続放棄をしない限り、後順位の相続人が相続放棄を含めた相続手続きをすることはできません。

ただ、亡くなった人が借金を残していた場合に、後順位の相続人にとっては先順位の相続人が相続放棄しているのかは、大変重要になります。

他の相続人が相続放棄していた後の対応について

上述したとおり、先順位の相続人(全員)が相続放棄した後は、後順位の相続人に相続権が発生します。そして、後順位の相続人も相続放棄したい場合は、原則として先順位の相続人が相続放棄をしていることが判明した日から3か月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。

ご自身に関係ないと思っていた相続手続きでも他の相続人の相続放棄をきっかけに、相続人として相続放棄するのか選択する当事者になります。

相続放棄をした親族に連絡が取れるのであれば、相続放棄をした経緯や故人の遺産内容について確認したうえで、相続放棄を選択するか判断することもできます。

ただ、既に故人の債権者から督促が届いている方は、可能な限り早めに相続放棄をするための準備を進めるようにしましょう。

まとめ

最後まで、記事をお読みいただきありがとうございます。

日頃から連絡を取り合っている親族同士であれば、相続放棄をしていたか直ぐに分かることもありますが、長年疎遠で他の相続人が相続放棄したかどうか不明な場合は、家庭裁判所に照会することをお勧めします。

当事務所では、相続放棄の手続きはもちろんですが、他の相続人が相続放棄をしているのか家庭裁判所に対する照会についてもサポートいたします。

お気軽にお問い合わせください。

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相続放棄した後の遺産の管理責任について

2023-07-24

記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。

相続放棄をしたとしても直ぐに遺産との関係がなくなるわけではありません。

相続人が相続放棄した後は、遺産についての管理責任が残ります。せっかく、相続放棄をしても管理責任があると聞くと戸惑う方もおられるかと思います。

そこで、本記事では、令和5年4月1日に改正された民法を踏まえて、相続人が相続放棄した後の遺産の管理責任について解説いたします。

「相続放棄」とは

まず、前提として相続放棄とは、どんな手続きであるのかを簡単にご説明します。

相続放棄とは、故人の財産を引き継ぐ権利を相続人自らが手放す法律上の手続きのことです。

相続人が故人から引き継ぐ財産には、不動産や預金だけではなく、故人が生前に借金をしていた場合には、その借金も相続人が引き継ぐことになります。

そして、故人の借金を引き継ぎたくない場合は、相続放棄をすることで借金を引き継ぐこともなくなります。

詳しくは、「相続放棄とは」をご覧ください

相続放棄した後の遺産の行方

特定の相続人が相続放棄をした後は、他の相続人に遺産を相続する権利が発生します。

もっとも、相続人になれる人には、法律上の決まりがあります。

【法定相続人の順位】

  • 第1順位 (故人の)子・孫など(直系卑属)
  • 第2順位 (故人の)父母・祖父母(直系尊属)
  • 第3順位 (故人の)兄弟姉妹

上記は、法律に定められた相続人になれる人の順位(順番)になります。

相続放棄との関係では、故人の子(又は孫)である第1順位の相続人全員が相続放棄をすると第2順位の相続人である故人の父母などに相続権が発生します。そして、第2順位の父母(祖父母など)全員が相続放棄をすると、第3順位の兄弟姉妹に相続権が発生します。

なお、故人の配偶者は、上記の順位に応じた相続人と共に相続権を有しますが、一度相続放棄した後は、その時点で相続人ではなくなります。

相続放棄した後の管理責任

相続放棄をした後は、直ぐに故人の遺産と関係がなくなるわけではありません。

故人が残した遺産に借金以外の建物や土地などが存在していた場合は、誰かが管理する必要があります。

そこで、法律上は相続放棄した相続人は、その放棄をした後でも一定の遺産については管理責任を負うとしています。

民法第940条 (相続の放棄をした者による管理)

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

管理責任があるのは、現に占有している遺産について

管理責任の対象になるのは、相続放棄した相続人が現に占有している遺産についてです。

占有とは、「物を事実上、支配している」ことをいいます。

例えば、故人が所有している建物に、相続放棄した相続人が居住している場合は、相続財産を占有している状態といえます。したがって、その遺産である建物について管理責任を負うことになります。反対に、相続放棄した相続人自身が一切関与・支配していない財産については、管理責任を負いません。

遺産を管理する方法

占有している相続財産の管理方法は、「自己の財産と同一の注意義務をもって」とされています。具体的には、相続放棄した相続人の後に続く、他の相続人のために遺産を滅失又は損傷させないように保存(保管)するなど、必要最小限度の管理方法で良いとされています。

管理責任は、他の相続人に対して負う

なお、この管理責任は相続放棄することにより、新たに相続人となる他の相続人若しくは、後述する相続財産清算人に対して負うことになります。

対外的な責任について(土地工作物の占有者責任:民法717条)

民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

いつまで管理する必要があるのか

相続放棄した相続人による遺産の管理は、いつまで続ければ良いのかケース別にご説明します。

 他に相続人がいる

先にも述べたとおり、相続放棄した後は、他の相続人に相続権が発生します。したがって、相続放棄をしていない他の相続人に連絡して占有している故人の遺産を引き渡すことで管理責任は終了します。

他に相続人がいない

相続人が1人しかおらず、若しくは後順位の相続人も含めて相続人全員が相続放棄をした場合は、法律上の相続人が存在しなくなります。

こういった場合は、家庭裁判所に「相続財産清算人」を選任してもらい、その清算人に故人の遺産を引き渡すことで管理責任を免れることになります。

相続財産清算人とは

相続人全員が相続放棄をした場合やそもそも相続人が存在しない場合は、家庭裁判所から相続財産清算人を選任してもらいます。

相続財産清算人は、故人が負担していた借金を返済するなどの清算手続きを行い、残った財産を国庫に帰属させる手続きを行います。

相続財産清算人には、弁護士や司法書士などの専門家が選任される傾向にあり、家庭裁判所に選任申立する際は、その専門家に支払う報酬や遺産の管理経費として、予納金(数十万程)の支払いが必要になります。

まとめ

記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

相続放棄の手続きでもっとも問題になるのが、相続放棄をすることで他に相続する人がいない場合や相続人全員が相続放棄をした場合に、誰が遺産を管理するのかです。

もっともシンプルな解決方法は、家庭裁判所から相続財産清算人を選任してもらうことですが、申立ての際に予納金を納める必要があり、傾向として高額になることがあります。

ただし、ここまで説明したとおり、そのまま放置することはせず、管理責任の負担から確実に開放されるためにも相続財産清算人を選任して遺産の管理を任せるようにしましょう。

当事務所では、相続放棄を含む相続に関する相談を、初回は無料で承っております。

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相続放棄を検討中の方が受け取れる財産

2023-07-17

記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。

相続放棄とは、相続人としての地位や権利を相続人自らが手放す手続きのことです。

相続放棄を検討中の方に、特に注意いただきたいのが、特定の財産を受け取ると相続放棄自体ができなくなることです。

本記事では、相続放棄を検討中の方に向けて、相続放棄の有無に関係なく受け取れる財産と受け取る際は、慎重になる必要がある財産について、解説いたします。

相続放棄について、詳しくは「相続放棄とは」をご覧ください

相続放棄を検討中の方でも受け取れる財産

生命保険金

故人(被相続人)が被保険者(保険対象者)として生命保険に加入していた場合に、保険会社から支払われる死亡保険金は、受取人に指定された人の「財産(固有財産)」とされてます。

そのため、保険契約により、受取人として相続人が指定されている場合は、相続放棄した相続人であっても保険金を受け取ることができます。その反対に保険金を受け取った後に相続放棄をすることもできます。

「亡くなった本人」が受取人に指定されている生命保険金には注意

死亡保険金の受取人として「亡くなった本人(故人)」が指定されている場合は、保険金を受け取るための権利が「相続財産」に含まれるため相続放棄をした相続人は、死亡保険金を請求もしくは受け取ることはできません。なお、相続放棄をする前に受け取ってしまうと相続したとみなされて、相続放棄自体ができなくなる可能性があります。

遺族年金

遺族年金とは、亡くなった方が国民年金(又は厚生年金保険)の被保険者であった場合に、残されたご家族に支給される年金のことです。

遺族年金を受け取る権利は、受給者である遺族の固有の権利であるため、相続放棄の有無に関係なく遺族年金を受け取ることができます。

未支給の年金

未支給の年金とは、亡くなった方が年金受給者であった場合に、亡くなったときに支給されていなかった年金や故人が亡くなった後に支給された年金のことです。

そして、未支給の年金は、「相続財産」ではなく、一定の遺族に対して支給される「固有財産」とされています(最判平成7年11月7日)。そのため、相続放棄の有無に関係なく、遺族は未支給の年金を受け取ることができます。

また、年金が支給される一定の遺族とは、故人が亡くなった当時、生計を同じにしていた①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹、⑦その他3親等内の親族と請求できる人には順位が決まっています。

この未支給年金は、老齢年金だけに限らず、障害年金や遺族年金も該当しますが、上述した遺族年金とは別に請求する必要があります。

死亡退職金

死亡退職金とは、亡くなった人が受け取るはずであった退職金を遺族に支払われる金銭のことです。

この死亡退職金については、亡くなった人の勤務していた会社の死亡退職金の支給に関する規定に、受取人が指定されている場合は、その受取人の固有財産とみなされます。

したがって、受取人として指定された人は、相続放棄の有無に関係なく死亡退職金を受け取ることはできます。

受取人の指定がない死亡退職金は注意

故人が勤務していた会社の死亡退職金の支給に関する規定に、受取人の指定が無い場合は死亡退職金は相続財産に含まれることになります。したがって、相続放棄した方は死亡退職金を受け取ることはできませんし、相続放棄をする前に、受け取ってしまうと相続したとみなされて相続放棄自体ができなくなる可能性があります。

お香典・ご霊前

お香典やご霊前は、通夜や葬儀費用を負担している喪主への贈与とされていますので、相続財産には含まれません。

したがって、相続放棄の有無に関わらず、受け取ることができます。

祭祀財産(お墓・仏壇)

仏壇やお墓などの祭祀財産は、相続財産には含まれず、慣習や習慣に従って、祭祀承継者が引き継ぐものとされています。したがって、相続放棄の有無に関係なく祭祀財産を承継することはできます。

埋葬料・葬祭費

埋葬料・葬祭費とは、社会保険又は国民健康保険、後期高齢者医療制度に加入していた方が亡くなられた場合に、喪主の方に支給される給付金のことです。

葬祭費・埋葬料は、故人が亡くなったことにより自治体から支給される給付金になりますので、相続財産には含まれません。したがって、相続放棄の有無に関係なく受け取ることができます。

受け取る際は、慎重になる必要がある財産

故人の財産(相続財産)

故人が亡くなった時に所有していた財産(相続財産)は、相続放棄した相続人は受け取ることができません。また、相続放棄をする前に受け取ってしまい、処分(売却)してしまうと相続したとみなされて、相続放棄ができなくなります。

以下に、相続財産の具体例を記載します。

【相続財産】

  • 故人が所有していた預貯金、現金、有価証券、不動産
  • 故人が所有していた宝石、貴金属、絵画など

受取人に故人が指定されている生命保険金

先にもご説明しましたが「亡くなった本人」「受取人として指定されている」生命保険は、「相続財産」に含まれるとされています。

したがって、相続放棄をした相続人は、故人が受取人となっている死亡保険金を受け取ることはできませんし、相続放棄する前に受け取ってしまうと相続放棄ができなくなる可能性があります。

医療保険の給付金(入院給付金・通院給付金)

故人が医療保険に加入し、かつ受取人となっている「入院給付金」「通院給付金」などは、相続財産に含まれるため、相続放棄をした相続人は給付金を受け取ることはできません。

なお、相続放棄をする前に受け取ってしまうと相続放棄ができなくなる可能性があります。

給付金の受取人がご家族の場合は受け取れる

医療保険の契約者及び被保険者が故人で、給付金の受取人がご家族の場合は、医療保険給付金については、受取人の固有財産となります。したがって、受取人であるご家族が相続放棄をしている場合でも給付金を受け取ることができます。

高額療養費の還付金

高額療養費の還付金とは、医療機関(病院・薬局)等で支払った金額が自己負担分を超えた場合に、その超えた部分について、後から払い戻される制度です。

高額療養費の還付金は、世帯主又は被保険者に支払われます。したがって、亡くなられた方が世帯主もしくは被保険者であった場合は、還付金を受け取る権利が相続財産に含まれることになり、相続放棄をした相続人は受け取ることはできません。

また、相続放棄の前に受け取ってしまうと相続放棄ができなくなる可能性があります。

被扶養者や世帯主以外の方が亡くなった場合は受け取れる

故人が被保険者や世帯主ではない場合は、還付金を受け取る権利は世帯主又は被保険者にあるため、亡くなった人の相続財産に含まれず、世帯主や被保険者(相続人)は、相続放棄したとしても高額療養費の払い戻しを受けられます。

所得税等の還付金

所得税・住民税・国民健康保険料・介護保険料・後期高齢者医療保険料などを払い過ぎたときの還付金は納付した人に支払われるため、納付した方が亡くなっている場合は、還付金を受ける権利は、相続財産に含まれます。

したがって、相続放棄をした相続人は還付金を受け取ることはできませんし、相続放棄の前に受け取ると相続放棄自体ができなくなる可能性があります。

未払いの給与

亡くなった方が会社に勤めていた場合に、未払いの給与が発生することがあります。

未払いの給与は、勤務していた故人に支払われるのが原則であるため相続財産に含まれることになります。したがって、相続放棄をした相続人は未払いの給与を受け取ることはできず、相続放棄をする前に受け取ってしまうと相続放棄自体ができなくなる可能性があります。

勤務先の就業規則に受取人の指定があれば受け取れる

勤務先である会社の就業規則に受取人の指定があれば、未払いの給与は、その受取人の固有財産となるため相続放棄をしても受け取ることができます。

判断に迷ったら専門家に相談する

ここでは、相続放棄を検討中の方に向けて、受け取れる財産と受け取る際は慎重になる必要がある財産をご紹介しました。

ただ、実際には相続放棄を検討中の方に取って受領しても問題ない財産であるかは、個別に判断をしていくことになります。

安易に受け取ってしまうと相続放棄が出来なくなる財産もありますので、判断に迷っている方は、受け取る前には、必ず専門家に相談されることをお勧めします。

当事務所では、相続放棄に関するご相談やご依頼を承っております。

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