相続した不動産を売却するメリットとデメリット

亡くなった両親の実家を相続したが、「今後住むことや利⽤する予定はないので売却したい」、「相続⼈間で公平に分割するために不動産を売却して現⾦化して分け合いたい」、その他にも「思い⼊れのある実家などを相続税の納税するために売却する必要がある」など、相続した不動産を売却する理由は様々です。

ここでは、相続した不動産を売却した方が良いケースや売却するメリットやデメリット、不動産の売却先について、ご参考までにご説明いたします。

相続した不動産を売却した方が良いケース

①相続税の納税が必要になる

相続税は、相続財産の評価額や規模によっては高額になることがあります。

相続税の納税は金銭で納付する必要があり、原則として相続した土地そのもので支払うこと(物納)は、認められていません。

また、相続税は、故人が亡くなった日から10か月以内に申告と納税をしなければならないという期限があります。

相続財産に、不動産以外にも現金や預貯金などの金融資産が含まれていれば、相続税を納税することは比較的容易かもしれません。ただし、相続財産の大部分が不動産の場合は、相続税の納税資金を確保するために相続した不動産を売却することも検討しなければなりません。

②相続財産のうち不動産が占める割合が多い

相続財産のうち不動産が占める割合が多い場合には、遺産分割の際に金銭とは異なり不動産を簡単には分割することはできず、相続人全員にとって公平に分け合うことが難しくなります。

また、不動産を複数の相続人が共有(相続)することも考えられます。ただし、不動産を共有することは、リスクやデメリットになることが多く、あまりお勧めしません。

不動産を共有した後に、共有者(所有者)の一部に相続が発生したり、認知症等により判断能力が失われてしまうと簡単には不動産を管理・売却することができなくなるためです。

相続する財産の大部分が不動産であれば、所有者となる当事者が少ないうちに不動産を売却することも選択肢になります。

③不動産を相続しても利用する予定がない

相続した不動産に居住したり、人に貸すなど、不動産を利用する予定が無ければ売却することも検討します。

不動産を所有されている方には、「管理責任」という義務があります。相続した不動産を利用する予定が無く、そのまま空き家として放置すると不法投棄や空き巣の被害に遭ったり、放火をされたりするリスクも高く、不審者やホームレスなどが勝手に空き家を利用したりと近隣の住民に悪影響を与えてトラブルになることがあります。

こういったトラブル防ぐためにも不動産の所有者は、適切に管理する責任を負うことになります。

ただし、空き家の管理責任があるのはわかっていても、現実的にどうしても管理が難しい場合には、相続した不動産を売却することが適切な場合もあります。

相続した不動産を売却するメリット

①不動産を売却して現⾦化できる

相続財産が現⾦であれば各相続⼈の相続分に応じた配分で⾦額を調整できます。ただ、相続財産が不動産の場合は、家をそのまま切り分けるわけにもいかず、⼀部の相続⼈が相続するとなると、不公平感が出てしまい、後に相続⼈間でトラブルになる可能性があります。

また、複数の相続⼈が共同で不動産を相続したとしても、そのまま放置している間に、2次相続、3次相続が発⽣して、将来相続⼈が多数となり不動産を売却するための意⾒がまとまらず、直ぐに売却したいと思っても簡単には売却することができなくなります。

相続した不動産を利⽤する予定がなければ、ご⾃⾝の相続を機会に不動産を売却して現⾦化した⽅が公平な遺産分割が可能となり後々のトラブルも防ぐことができます。

②管理責任がなくなる

不動産の所有者には管理責任があります。代表的な例としては、建物の管理責任です。

たとえば、建物の所有者は建物の倒壊や⽕事が起こらないよう補強⼯事などの予防措置をとったり、雑草や害⾍が発⽣するのであれば除草、駆除しなければなりません。

これらの管理を怠ったことにより、近隣住⺠へ損害が発⽣した場合には賠償責任を負担することになります。

不動産を売却することにより、こういった管理や維持するための負担から解放されるというのもメリットの⼀つです。

③毎年の固定資産税の納税義務がなくなる

不動産を相続した所有者は、相続税以外にも毎年固定資産税という税⾦を⽀払うことになります。

固定資産税とは、毎年1⽉1⽇時点で家屋やマンション、⼟地などの不動産を所有する⽅が⽀払う税⾦です。

この固定資産税は、⼟地上に、居住⽤の建物が建っていると特例により、敷地⾯積に応じて6分の1(または3分の1)まで減額がされます。

ただし、建物が建っていても空き家のまま管理をせず⻑期間放置してしまうと、減額特例の適⽤が受けられなくなり、固定資産税が最⼤6倍にまで跳ね上がる可能性があります(空き家対策特別措置法)。

相続した当初は税負担が軽くても⻑期間放置したままでいると思わず税⾦が⾼くなることもあり、不動産を売却することでこういった税負担が無くなることもメリットになります。

相続した不動産を売却するデメリット

①不動産を売却すると収益を得る機会を失う

⼟地を保有していれば、アパートなどを建てて、賃貸することにより家賃収⼊などから収益を得ることができますが、⼀度⼟地を売却してしまうと、その⼟地を活⽤して収益する機会を失うことになります。

将来、不動産を活⽤したいと思われている⽅は、収益を上げられる不動産であるか売却する前に検討することも必要になります。

②売却には諸費⽤がかかる

不動産を売却する際には、売却するための費⽤として印紙税や測量費、仲介⼿数料などの諸費用を負担しなければなりません。また、売却した代⾦に利益が発⽣すると譲渡所得税が課税されます。

売却するための費⽤が、どのくらいの⾦額になるのかをあらかじめ確認しておくことも必要になります。

※譲渡所得税について詳しくは、「相続した不動産を売却する流れ」をご覧ください。

③時期によっては売却額が変わることがある

不動産の価格は、常に変動しているのが⼀般的です。

⼟地のあるエリアや近隣の地域が将来⼈気が出そうな場合は、不動産価格が⾼騰することがありますので、しばらくは資産として保有して時期を⾒計らって売却することも考えられます。

売却する時期によっては、売却⾦額で⼤きく損をしてしまうリスクがあることは把握しておきましょう。

不動産の売却先について

ここまでは、不動産を売却するメリット・デメリットについてご説明しました。

次にご説明するのは、売却先として「不動産会社」と「個⼈」のどちらが良いのか、不動産売買の⽴会い業務に携わってきた司法書⼠の⽴場からそれぞれのメリット・デメリットについて記載いたします。参考までにご覧ください。

専⾨の不動産会社に買い取ってもらう

メリット

①取引する物件を現在の状態のまま引き渡せる(現状有姿渡し)

「取引する物件を現在の状態のまま(建物のリフォームや補修、解体をせずに)買主に引き渡すこと」を現状有姿渡しと⾔います。

⻑く放置されている建物だと、壁紙の破れ、配管の破損など⽬に⾒えるトラブルや劣化などがありますので、売却前にリフォームや修繕⼯事が必要になります。

専⾨の不動産会社によっては、建物を現在の状態のまま買い取ってもらえることがありますのでリフォームや修繕⼯事などの⼿間や費⽤をかける必要はありません。

②契約不適合責任を免責してもらえることもある

売主は、契約時に売却する物件(⼟地や建物)の状態に関することは全て買主に伝える必要があります。

仮に、契約時の内容と引き渡し後の物件の状態が異なる場合は、買主から⽋陥についての修補請求や損害賠償請求をされる可能性があります。これを契約不適合責任といいます。

不動産会社に買い取ってもらう場合は、契約不適合責任を免責(免除)してもらえることがありますので、個⼈に売却する場合と⽐較してトラブルになりにくいのがメリットです。

③売却が完了するまでが早い

不動産会社へ売却する場合は、物件を現在の状態のまま買取ってもらえることがありますので、修繕⼯事などのスケジュールを⽴てる必要はなく、売却手続きが完了するまでが⽐較的早く済みます。

デメリット

市場価格より売却額が下がってしまうことがある

不動産会社は物件を買取った後、建物をリフォームして付加価値を付けたり、古い建物であれば解体して新しく建物を建てて売却したりなど、再度売却して利益を出す必要があります。

売却したときに利益が出るよう購⼊時の価格は、なるべく抑えて購⼊したいと考えますので、⼀般の個⼈へ売却する場合の売買価格と⽐べると80%程まで価格が下がってしまうことがあります。

個⼈に買い取ってもらう場合

メリット

市場の適正価格で売却できる

個⼈の買主であれば、エリアや⽴地などを考慮して、その物件を購⼊したいと希望しているので適正価格での購⼊が期待できます。

⾔い換えれば、売主が希望する物件の価格での売却が期待できるということです。よって、少しでも⾼く物件を売却したいという⽅は、個⼈に売却することをおすすめします。

デメリット

①建物の解体費など費⽤がかかることがある

物件によっては、建物が⽼朽化して、そのままでは住めないような状況もあります。個⼈の買主は、⼟地だけを購⼊して建物を新築したいと考えている⽅もいます。

契約の内容によっては、売主が建物の解体費⽤を負担することもあります。

②契約不適合責任を負う

不動産会社に売却するときのメリットの部分でもご説明しましたが、基本的に売主は「契約不適合責任」を負います。

売却した不動産が契約内容と適合しない状態のときや契約内容のとおり利⽤できないときは契約に違反していると判断されて、売主は買主の⽅から修補請求や損害賠償請求をされる可能性があります。

売買契約の内容によっては、買主との間で契約不適合責任を免責することも可能です。

ただし、買主が個⼈のときは、免責することに納得してもらうことは難しいので、それを条件としてしまうと契約⾃体がまとまらないことがあります。

③売却が完了するまで時間がかかる

個⼈の買主は、自身の希望する条件に合う物件を探しますので、購⼊を決めるまでに時間が掛かります。

条件によっては他の物件の⽅が良い思うこともありますので、買い⼿が決まるまで⻑期化することも考えられます。

なるべく早めに不動産の売却⼿続きを完了させたいと思っていたとしても、買主が⾒つかるまで⼿続きを終わることができません。

まとめ

ここでは、相続した不動産を売却することのメリットとデメリットをご説明しました。

もっとも相続した不動産を売却した方が良い基準となるのが将来的に相続人自身が不動産を利⽤する予定がない場合です。ご家族にとって思い入れのある実家であっても相続人自身が利用する予定が無く、毎年の維持管理にかかるコストや管理責任を負担し続けるよりも早いタイミングで売却する⽅が適切なことがあります。

また、相続⼈が複数になる場合は、不動産を共同で所有するよりも相続したことをきっかけに現⾦化して分け合った⽅が相続⼈間のトラブル予防になります。

当事務所では、不動産を相続したときの相続登記だけではなく、お客様のご要望に応じて、不動産仲介会社や税理⼠の⽅をご紹介させていただき、不動産の売却が完了する最後までをサポートさせて頂きます。

相続した不動産の売却をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。

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