財産目録

財産⽬録とは

財産目録とは、被相続人(亡くなった方)が死亡した時に所有していた財産を明確にするために、財産の内容や種類、評価額などを整理してまとめた表のことをいいます。

財産目録に記載する財産は、プラスの財産だけでなく、マイナス財産も含めて記載します。

相続財産の調査を行った後に、財産目録を作成することで被相続人がどのような財産を所有していたのか明確になり、相続財産の全容を把握できるので各相続人が相続するための方法や財産の分け方を検討する際の判断材料になり、遺産分割協議などの相続手続きを円滑に進めることができます。

財産⽬録を作成する⽬的とは

相続手続きにおいては、基本的に財産目録の作成は義務ではありません。ただし、相続財産の種類や数が多い場合には、財産目録は非常に役立ちますので作成することをお勧めします。

以下に、財産目録を作成する目的をご説明します。

①遺産分割協議を円滑に進めるため

相続財産の分け方について、相続人全員で話し合うための遺産分割協議を行うときに、相続財産にどのような財産があるのか、相続人全員で把握できなければ話し合いが進まずに相続手続きが停滞してしまうことがあります。

財産目録を作成して、相続財産の種類や評価額などを明確にすることで、誰がどの財産を相続するかなど、相続人同士の話合いを進めやすくなります。

②相続する方法の判断材料になる

相続⼈には、相続する⽅法について、3つの選択肢があります。

1つ⽬が相続の単純承認です。単純承認とは、被相続人(亡くなった人)が所有していたプラスの財産だけではなく、借金などのマイナス財産を含めたすべての相続財産を相続人が引き継ぐことです。通常は、各相続人が特段の意思表示をすることなく遺産分割協議などを行うことで、相続の単純承認をしたことになります。

2つ⽬が相続放棄です。相続放棄とは、相続⼈としての権利や地位を⼿放すための⼿続きになります。相続放棄をした相続人は、被相続人が所有していたプラスの財産を相続しない代わりに、マイナスの財産も相続することがなくなるので、被相続人が負っていた借⾦などを返済する必要もなくなります。

3つ⽬が相続の限定承認です。限定承認は、相続財産を相続するという意味では、1つ⽬の単純承認と似ています。ただし、限定承認の場合は、被相続人が負っていた借金などのマイナスの相続財産については、プラスの相続財産の範囲に限定して相続人が返済する責任を負うという相続⽅法です。

上記、3つの相続方法について、どれを選択するかは、相続財産の全体を把握しなければ適切な判断ができません。また、限定承認を選択する場合は、財産⽬録を作成する必要があります。

各相続⼈が相続方法を適切に判断するための材料として財産目録は非常に役立ちます。

※相続方法について、詳しくは「相続の⽅法と注意点」をご覧ください。

③相続税申告の参考になる

相続が発生したからといって、一律に相続税の申告が必要になるわけではなく、相続財産の合計額が基礎控除額(3,000万円+相続人の数×600万円)を上回った場合に相続税の申告が必要になります。

財産⽬録を作成することで、まず相続財産の総額がいくらになるのか把握することができるので、相続税の申告の有無を判断することができます。

また、相続税申告は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に、所轄の税務署に申告しなければならず、申告が必要な場合は期限などを把握したうえでスケジュールを⽴てることができ、相続税の申告を専門家である税理士に依頼するのであれば、財産目録を渡すことで直ぐに相続財産の状況を理解してもらうことができます。

財産⽬録に記載する内容とは

財産⽬録の作成には決まった書式はありません。手書きやパソコン等で財産目録を作成しても問題ありません。ただし、財産目録には被相続人のプラスの財産とマイナスの財産を含めた全ての財産の記載が必要になるため、相続財産の種類や数が多い場合には各財産が特定できるよう正確に記載する必要があります。

以下に、財産の種類ごとに財産目録に記載する内容をまとめましたのでご覧ください。

不動産(⼟地や建物)

  • 土地
    土地の場合は、所在、地番、地⽬、地積、評価額を記載します。
  • 建物
    建物であれば所在、家屋番号、種類、構造、床⾯積、評価額(固定資産評価額)を記載します。
    これらの情報は、不動産の登記簿謄本や固定資産税評価証明書、名寄帳などが参考になります。
    また、土地の評価額については、相続税の申告に備えて路線価を記載することもできます。路線価の調べ方については、国税庁が公表している財産評価基準書路線価図・評価倍率表から計算する方法や、ご自身で計算することが難しい方は専門家である税理士の方に相談してみてください。

預貯⾦

預貯金については、預金⼝座が特定ができるよう、銀⾏名と本支店名、⼝座の種類(普通・定期)、⼝座番号、被相続人が死亡した時の預金残⾼を記載します。また、定期預金であれば相続開始日の既経過利息を加算した金額を記載することになります。これらの情報は、銀行から取得する残高証明書や経過利息計算書が参考になります。

株式・投資信託

発⾏会社名(銘柄)、証券会社名と本支店名、種別、数量、評価額などを記載します。これらの情報は、証券会社から取得する残高報告書(残高証明書)が参考になります。

動産(自動車、宝石などの貴金属等)

被相続人が所有していた自動車や宝石、貴金属などの動産についても財産目録に記載します。自動車については、車種・型式・自動車登録番号・車台番号などを記載します。また、宝石などの貴金属、骨董品、美術品なども各財産が特定できるよう名称、数量、保管場所を記載します。そして、動産の評価額については、市場での取引価格や買取業者などの専門業者が査定した額を記載します。

生命保険

生命保険金(死亡保険金)は、原則として遺産分割などの相続手続きの対象にはなりません。

なぜなら、死亡保険金は被相続人(被保険者)が亡くなった後に、保険会社から支払われる金銭であり、性質上は被相続人が所有していた財産とはみなされず、受取人として指定された人の固有財産として取り扱われます。

ただし、死亡保険金も「みなし相続財産」として相続税の課税対象になるため相続税の申告の要否を確認するためにも財産目録に記載しておく方が望ましいです。記載する内容としては、保険会社の名称、保険の種類、証書番号、保険金額、受取人などです。

負債(借⾦などのマイナス財産)

財産目録に記載する負債については、被相続人が生前に負担していた住宅ローンや借金だけではなく、未払いの家賃、税金、医療費なども含まれます。

負債を財産目録に記載する際は、債権者名(企業名)、負債の内容(種類)、相続が開始したときの残りの返済額などです。更に毎月の返済額も記載しておくと、相続人が相続放棄を選択すべきかの判断に役立ちます。

マイナスの財産である借金やローンなどの負債を確認する方法は、債権者からの督促状、金銭消費貸借契約書、クレジットカードの利用明細書や銀行口座の引き落とし履歴を確認します。

また、書面などから被相続人が借金を負っていたか判断できない場合は、下記の信用情報機関に問い合わせることで借金の有無を確認することができます。

  • ⼀般社団法⼈全国銀⾏協会(KSC)への開示請求(銀行からの借入調査)
  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)への情報開示請求(クレジット会社からの借入調査)
  • 株式会社⽇本信⽤情報機関(JICC)への開示請求(消費者金融からの借入調査)

財産目録を作成するときの注意点

財産目録を作成する際の注意点を以下に記載いたします。

財産が特定できるよう正確に記載する

相続財産を財産目録に記載する際は、簡略化せずに財産の種類ごとに内容や評価額を正確に記載します。

例えば、不動産、預貯金、上場株式などの有価証券であれば上述した参考資料がありますので、それらの資料を基に財産目録を作成します。また、被相続人が共有者として不動産の権利を持っていた場合には、登記簿に記載されている持分についても備考として記載します。

記載する財産に漏れがないようにする

財産目録を基に遺産分割協議を行った後、財産目録に記載した財産に一部漏れが発覚した場合には、再度協議をやり直す必要があります。遺産分割協議のやり直しは、相続人全員にとって手間がかかりますので、財産目録を作成するときは、しっかりと相続財産の調査を行い、漏れなく全財産を記載することが大切になります。

自筆証書遺言を作成するときの財産目録

遺言書を作成する際に、財産目録も一緒に作成することがあります。

遺言書を作成するときは、財産目録を作成することは必須ではありませんが、遺言書に記載する財産の数や種類が多い場合には、誰がどの財産を相続するのかを把握しやすくするためにも財産目録も一緒に作成することをおすすめします。

そして、遺言書には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つの遺言方式があります。

特に、自筆証書遺言を作成する場合は、遺言書の本文を含めた全ての文書を本人の自筆で書く必要があるため一緒に添付する財産目録についても本人の自筆で作成することが必要でした。

ただし、2019年の法改正に伴い、自筆証書遺言を作成する場合でも財産目録に限ってはパソコン等で作成することが認められるようになりました。

ただし、パソコン等で作成した財産目録については、各ページごとに遺言書を書いた本人の署名押印が必要となり方式を充足していないと、遺言書自体が相続手続きに使用できなくなりますので、ご注意ください。


財産⽬録は、いつまでに作成すればいいか

法律上、財産⽬録の作成期限はありません。

ただし、相続放棄や限定承認など、一部の相続⼿続きには「相続の開始を知ったときから3か⽉以内」に、家庭裁判所に申し⽴てをしなければならないという期限があります。

相続人が相続をするか相続放棄をするか選択するには、相続財産の全容を把握しなければ判断できないケースもあります。

したがって、相続放棄を検討されている方にとっては、少なくとも3か⽉以内には、相続財産の調査及び財産⽬録の作成を終わらせる必要があります。

まとめ

財産⽬録には、遺産分割協議や相続放棄などの判断を⾏うためにも正確な情報の記載が必要になります。

財産目録の作成は、相続する財産が多かったり、相続財産の評価額が高い場合には相続税の計算も関わってくるので、その後の相続手続きを踏まえて、専門家のサポートを受けることも検討してみてください。

当事務所では、財産目録作成を始めとして、各種相続手続きの業務を承っております。

また、相続税申告や納税などについてもご要望に応じて専門家である税理士をご紹介いたします。

相続⼿続きにご不安がある⽅は、お気軽にご相談ください。

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