開始直前!!知っておくべき相続登記の義務化についてのポイント

記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田武史です。

令和6年4月1日から相続登記の義務化がされます。

一般の方には、そこまで浸透はしていないようです。

ただ、今後は不動産をお持ちの方にとっては、将来必ずと迎える相続の場面で、直面する事柄になります。

当ブログでも相続登記の義務化について何度か記事を書きましたが、直前となった現在、再度相続登記の義務化の概要や知っていただきたいポイントを解説いたします。

あなた自身やあなたのご家族が不動産を所有されているのであれば、知っておくことは損ではないので是非ご一読頂ければ幸いです。

相続登記とは

相続登記とは、不動産の名義人である所有者が亡くなった後に、その不動産の所有権を相続(引き継いだ)した人に不動産の名義を変更するための法務局への手続きのことです。

皆様にとっては、これから何度も行う手続きではないかと思います。もっとも親や祖父母がご自宅を所有しているのであれば、今後は必ず必要になる手続きになります。

また、これまでは相続登記自体は、申請するかどうかは、不動産を相続した方の任意でした。したがって、不動産を相続したとしても相続登記を放置することできました。

相続登記を放置される理由としても、必要書類である亡くなった人の出生から死亡までの戸籍や相続人全員の戸籍、遺産分割協議書の作成、登記申請書の作成などを整え、不動産を管轄する法務局ごとに申請する必要があるなど、一般の方にとっては非常に煩雑な手続きとなります。

相続登記が義務化された背景

相続登記が義務化された背景としては、相続登記自体が任意であったため不動産の所有者が亡くなった後、何十年にも亘って相続登記が放置されて現在、誰が不動産を相続して所有しているか不明な不動産が増加したことにあります。

現在、どのくらい所有者不明の不動産が存在しているのかというと、よく言われているのが九州地方よりも広い土地になります。つまり、九州地方に匹敵する土地の所有者が現在不明となっており、将来は北海道地方の広さまで所有者不明土地が増加するとも言われています。

そして、所有者不明土地の問題が顕在化されたのが東北震災の復興のための高台の移設など、インフラを整備の際に、その土地の所有者が既に亡くなっており、何十年にも亘って相続登記がされておらず、現在の所有者が不明若しくは、相続人が数十名となり、土地利用の承諾を得ることや協力を得られずに、復興が大きく遅れたことにあります。

また今後、利用・活用できない不動産が国土の大半を占めてしまい、経済損失額が2040年までには6兆円規模になるとされています。

そこで、法改正がされて、令和6年4月1日から相続登記の義務化がされることになりました。

相続登記の義務化とは

相続登記の義務化とは、文字どおり不動産の所有者が亡くなった後に、不動産を相続した方は相続登記をする義務が課されるということです。

以下からは、相続登記の義務化について、ポイントを解説いたします。

相続登記を3年以内に申請しなければならない

相続登記が義務化された後は、「亡くなった人から不動産の所有権を相続したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

では、相続登記の申請期限が始まる「不動産を相続したことを知った日」とは、いつの時点のことを指すのでしょうか。

具体的には、以下の日からとされています。

  • 自身が相続人になることを自覚し、「かつ」、不動産の所有権を相続することを知った日

つまり、相続登記の申請期限である3年以内とは、ご家族が亡くなった日からではなく、その亡くなったご家族が不動産を所有しており、あなた自身が相続人として、その不動産の所有権を相続することを知った日になります。

例えば、親が亡くなったときに、実家の土地と建物を相続することを知っていた場合は、その日から3年の期限がスタートします。その後、数年経った後に、亡くなった人が実家以外の土地を所有していたことが判明したときは、その時に土地を相続することを知ることになるので、その時から3年以内に相続登記を申請すれば良いことになります。

つまり、あなた自身が相続人になることを自覚していても、相続する不動産の存在を認識していなければ、3年の期限は開始しないことになります。

期限内に相続登記できないと10万円以下の過料の対象

上述した、不動産の所有権を相続したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しないで放置していると10万円以下の過料の対象となります。

ただし、直ちに過料が科されることはなく、事前に法務局から相続登記を促す通知(催告書)が相続人宛に送られてきます。その通知には、期限が記載されており、期限内に相続登記を申請することで過料を免れることができます。

また、通知を受け取った後でも相続登記ができないことに「正当な理由」があれば、過料が科されることはありません。

「正当な理由」の具体例としては、以下の事由が該当します。

【正当な理由の具体例】

  • 相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する
  • 遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人間で争いがあり、誰が不動産を相続するか明らかにならない
  • 不動産を相続した相続人が重病その他これに準ずる事情がある
  • 相続登記等の申請義務を負う相続人が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている
  • 不動産を相続した相続人が経済的に困窮しているために、相続登記の申請を行うために要する費用を負担できない

引用元:法務省通達(令和5年9月12日法務省民二第927号

令和6年4月1日以前に相続した不動産も対象になる

相続登記の義務化が開始されるのは、令和6(2024)年4月1日からです。

ただし、ご注意いただきたいのが相続登記の義務化の対象になる「相続した不動産」には、令和6年4月1日以前に相続した不動産も対象になるということです。

つまり、現在(令和6年3月29日時点)で、相続した不動産の中に相続登記がされていない不動産がある場合、その不動産についても相続登記の義務化の対象になるということです。

この場合、いつまでに相続登記をしなければならないのかというと、相続登記の義務化が開始される令和6(2024)年4月1日)又は、不動産を相続することを知った日のどちらか遅い日から数えて3年以内に相続登記を行う必要があります。

例えば、既に相続した不動産があることを知っており、相続登記を放置している場合は、令和6年4月1日から3年以内に相続登記をする必要があります。

一方、ご家族が亡くなった当時、故人が不動産を所有していたことを知らず、令和6年4月1日以降に、相続する不動産の存在を相続人が知った場合は、相続する不動産の存在を知った日から3年以内に相続登記する必要があります。

どうしても直ぐに相続登記ができない場合の対応策

上述した「正当な理由」以外にもご家族が亡くなった後、直ぐに相続登記を申請できない場合もあります。そこで、相続登記の義務化と併せて創設されたのが「相続人申告登記の申出」制度です。

相続人申告登記の申出は、本来の「相続登記」とは別の手続きとお考えください。

以下に相続人申告登記の申出制度の概要を記載いたします。

「相続人申告登記の申出」とは

相続人申告登記の申出とは、亡くなった人が所有していた不動産を管轄する法務局に対して、当該「不動産の所有者が亡くなった(相続が発生した)こと」及び、その亡くなった不動産の所有者の「相続人であること」を申し出る手続きのことです。

【相続人申告登記の申出】とは

下記の事実を法務局に知らせる手続きのことです。

  • 不動産の所有者が亡くなったこと(相続が発生したこと)
  • 自身が相続人であること

「本来の相続登記」は、不動産の所有者が亡くなった後、その不動産の所有権を相続(承継)する人が決まった後に、申請する登記手続きになります。

一方の「相続人申告登記の申出」は、不動産の所有者が亡くなったこと、そして、その所有者の相続人であることを法務局に知らせる手続きになります。

どうしても不動産の所有権を相続する人が決まらなかったり、相続人全員を把握できないなど、「本来の相続登記」を申請できない場合は、相続人申告登記の申出をすることで相続登記の義務を果たすことができます。

「相続人申告登記の申出」の注意点

  • 「本来の相続登記」を申請する必要はある
    相続人申告登記の申出をしたからといって、「本来の相続登記」を申請する必要がなくなるわけではありません。不動産を相続する人が決まったら相続登記を申請する必要があります。
  • 申出により相続登記の義務を果たしたことになるのは、申出をした相続人のみ
    相続人申告登記の申出は、相続人が複数いる場合でも各相続人が単独で手続きすることができます。そして、相続人申告登記の申出により、相続登記の義務を果たしたことになるのは、申出をした相続人のみです。相続人の1人が申出をしたからといって、申出をしていない相続人の分まで義務を果たしたことにはならないことにご注意ください。

今後は、将来の相続登記に備えた事前の対策が必要になる

これまで、相続登記の申請は任意でした。ただ、これからは相続登記が義務化されることになり、不動産を所有している人が亡くなった後は、必ず相続登記を申請する必要があります。

あなた自身もしくは、ご家族の中に不動産を所有している方がいる場合は、今の内から相続登記を含めた相続に備えて対策をしておくことをお勧めします。

以下に、参考記事を載せておきます。ご興味のある方はご覧ください。

相続登記の義務化に備える/相続登記していない不動産を調べる方法

相続登記を簡単にするための事前対策

当事務所では、相続登記や事前の対策についてのご相談を承っております。

当事務所は、相続が発生した後の相続登記を含めた相続手続きを一括してサポートしております。

現在、不動産を相続したけれども相続登記を放置してしまっている方は、当事務所にご相談ください。

また、当事務所では、将来の相続に備えた遺言書の作成、生前対策としての家族信託の組成や任意後見契約書の作成のご相談やご依頼を承っております。

お気軽にお問い合わせください。

山田武史司法書士事務所 
〒107-0062 東京都港区南青山二丁目2番15-1319号
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