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お子様がいないご夫婦の相続の備え
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。
お子様がいないご夫婦の場合、夫(又は妻)が亡くなったときに、残された配偶者は全ての遺産を取得できるわけではありません。
実は、亡くなった夫(又は妻)に両親や兄弟姉妹が存在する場合は、それらの親族にも遺産を相続する権利があります。
本記事では、お子様がいないご夫婦に向けて、相続が発生したときに起きやすいトラブルや相続に備えた対策方法をご紹介します。
亡くなった人の配偶者だけが相続人ではない
法律上、相続人になれる人には順位が定められています。以下は、相続人の順位になります。
【相続人の順位】民法第900条
①配偶者・・・亡くなった人の夫又は妻
②第1順位・・・亡くなった人の子(孫)
③第2順位・・・亡くなった人の父・母など
④第3順位・・・亡くなった人の兄弟姉妹
上記のとおり、亡くなった人の配偶者は、常に相続人となります。そして、亡くなった人に「子」や「父・母」、「兄弟姉妹」がいると、配偶者は、それらの人と共に相続人となります。
つまり、お子様のいないご夫婦の場合は、配偶者だけが相続人になるわけではなく、亡くなった人に「父・母」や「兄弟姉妹」がいると、配偶者はそれらの親族と共に相続人となります。
したがって、亡くなった人の配偶者が全ての遺産を取得できるとは限りません。
配偶者と親・兄弟姉妹の相続分
各相続人が遺産を相続できる割合についても民法で定められています。
以下は、配偶者と各相続人の相続分になります。
①配偶者と亡くなった夫(又は妻)の両親が相続人となる場合の相続分
- 配偶者:3分の2
- 両 親:3分の1(複数いる場合は、3分の1を⼈数に応じて分配します。)
②配偶者と亡くなった夫(又は妻)の兄弟姉妹が相続人となる場合の相続分
- 配偶者:4分の3
- 兄弟姉妹:4分の1(複数いる場合は、4分の1を⼈数に応じて分配します。)
お子様がいないご夫婦の相続は複雑になりやすい
相続人の数が多数になり、手続きが煩雑になりやすい
亡くなられた人が高齢の場合、その方の両親も既に亡くなっており、配偶者と兄弟姉妹が相続人となるケースがよくあります。ただし、その兄弟姉妹も亡くなっているとその子である甥・姪に相続権が発生するため、ケースによっては最終的な相続人の数が数十名になることも珍しくありません。
相続人の数が多ければ、その分利害関係や権利関係が複雑になり、遺産分割協議がまとまらず裁判所を介した手続きに移行せざるを得なかったり、相続手続き自体が停滞することがあります。
配偶者と親族の関係が悪く遺産分割協議がまとまらない
亡くなった方の両親や兄弟姉妹と配偶者は、お互いに協力し合いながら相続手続きを進めていく必要があります。
代表的な手続きとしては遺産の分け方について話し合う遺産分割協議です。しかし、生前から配偶者と義理の両親や兄弟姉妹との関係が悪い場合、話がまとまらなかったり、お互いに話し合うこと自体を拒絶することもあり、相続が複雑になりやすい原因といえます。
今住んでいるご自宅も不安定な状況に置かれる
相続人間で分ける遺産が預金などの現金であれば、各相続人の相続分に応じた分配が可能になるのでトラブルになりにくいですが、遺産の大部分が不動産の場合は注意が必要になります。
土地や建物のような不動産の場合、不動産自体を物理的に分けるわけにもいかず、特定の相続人が不動産を取得する代わりに他の相続人に代償金として、相続分に応じた金銭を支払うことがあります。
しかし、不動産自体の価値が高額な場合、支払う代償金も数百万円以上になることもあり、代償金を支払うことができない場合は、最終的に不動産を売却して換金したうえで各相続人に分配することにもなりかねません。
そのため、自宅をそのまま配偶者に住んでもらいたいと願っていても相続が発生した場合は、不安定な状況に置かれる事態にもなりかねません。
お子様がいないご夫婦の相続の備え
以下からは、お子様のいないご夫婦に向けて相続に備えた対策方法について、ご紹介していきます。
遺言書を作成して相続手続きを円滑にする
相続に備えた対策として効果を発揮するのが「遺言書」です。
遺言書とは、自身が亡くなった後に、「財産を誰に引き継いでもらうのか」を指定する証明書です。
遺言書に書かれた内容は、先程述べた法律に定めれられた相続人の順位や相続分に優先します。つまり、遺言書で財産の承継先を指定することで、相続人同士の話し合いである遺産分割協議を省略できるため相続トラブルを予防する効果があります。
自身が亡くなった後、残された配偶者に全ての財産を相続してもらいたい方は、遺言書を作成することをお勧めします。
配偶者に財産を贈与する
もう一つの方法が財産を贈与しておくという方法です。いわゆる「生前贈与」と言われるものです。
生前贈与をした財産は、相続が発生したときの遺産分割協議などの話し合いの対象となる財産からも原則除外されます。
ただし、贈与をするときに注意が必要になるポイントが2点あります。
1つ目が贈与税という税金です。
贈与税は、贈与をした年(1月1日から12月31日まで)の1年間に、贈与をした財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた額に課税されます。
もっとも贈与する財産の合計額が110万円以内であれば、贈与税は課税されません。また、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合には、最高2,000万円までを控除(「おしどり贈与」ともいいます。)できるという特例もあります。
婚姻関係にあるご夫婦間であれば、条件に該当することで贈与税の課税なく財産を贈与できることになります。
2つ目は特別受益の持ち戻しです。
「特別受益」とは、一部の相続人が亡くなった人から生前贈与や遺贈により譲り受けた財産のことをいいます。
相続が発生した際に、一部の相続人に「特別受益」があると、その特別受益の価額を相続財産の価額に加えて、各相続人の相続分を再計算します。そして、特別受益を受けた相続人の相続分は、その特別受益を受けた分だけ差し引かれることになります。これを「特別受益の持戻し」といいます。
したがって、配偶者に生前贈与した分だけ、相続が発生した際の配偶者の相続分が減ってしまうことになります。
ただし、民法改正により、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産を遺贈又は贈与したときは、「特別受益の持戻しを免除」する意思表示があったものと推定されることになりました(民法第903条4項)。
つまり、現在居住している自宅を配偶者に贈与したとしても相続が発生した際の相続分が減ることなく本来の相続分で配偶者が遺産を取得することができます。
生命保険の受取人を配偶者にする
生命保険に加入している方は多いかと思います。そして、生命保険の受取人を配偶者にしておくことも相続に備える方法の一つになります。
生命保険金は、被保険者が亡くなったときに保険会社から受取人に支払われます。
この保険金の特徴としては、相続が発生したときの取扱いです。保険会社から支払われる保険金は、亡くなった人の財産(遺産)とはみなされず、受取人として指定された人の固有財産となります。
つまり、他の相続人と遺産分割協議せずに、保険会社から保険金を受け取ることができます。
また、配偶者の方が他の相続人から遺留分を主張されたときに、その支払いに備えるための金銭として受け取った保険金を利用することができます。
加えて生命保険金は相続税の課税対象になりますが、相続税の非課税枠が設けられているので、相続税の節税や納税対策としても利用することができます。
既に、生命保険に加入している方でも受取人が配偶者となっているか確認しておくことが大切です。
- 「⽣命保険(死亡保険⾦)の⼿続き」
- 「遺留分とは」
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
お子様がいないご夫婦でも、配偶者が亡くなったときに、残された配偶者が全ての遺産を相続できるわけではありません。義理の両親、兄弟姉妹が相続人として加わり、配偶者と協力しながら相続手続きを進めていくことになります。
ただし、お互いに友好な関係とまでは言えないが、もともとの関係が疎遠の場合、相続をきっかけに配偶者と義理の両親・兄弟姉妹間で相続トラブルになることがあります。
こういった相続が発生した時のトラブルに備えて、遺言書を作成するなど事前に備えておくことが大切になります。
遺言書の作成を含めて対策方法が分からない方や将来の相続に不安をお持ちの方は、司法書士等の専門家に、一度はご相談してみてはいかがでしょうか。
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家族信託の開始から終了するまでの税金と課税関係
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士の山田でございます。
家族信託をしたときに、税金が課税される場面としては、「家族信託を開始したとき」、「家族信託をしている間」、「家族信託が終了したとき」になります。
本記事では、家族信託を利用したときに、「どの時点で」、「誰に」、「どのような税金」が課税されるのか、家族信託を開始したときから終了するまでの税金の基本的な課税関係についてご説明いたします。
なお、具体的に課税される税額など詳細については、専門家である税理士の方にご相談ください。
家族信託と税金の課税関係
家族信託では、原則として受益者に税金が課税される
始めにご説明するのが、信託に関わらず税金の課税される仕組みの考え方です。税務上は財産から発生する利益を受け取る人に対して、税金が課税されます(実質所得者課税の原則)。
例えば、現金や不動産を贈与(譲渡)したときは、財産を譲り受けた人(受贈者)に贈与税という税金が課税されます。これは、贈与により財産を譲り受けた人が無償で財産を譲り受けることに利益があるからです。
これを家族信託に当てはめると、信託した財産の所有権は、受託者に移転することになり、財産の名義も受託者に変更されます。
受託者が財産を取得するので、受託者に贈与税が課税されるようにも見えますが、税務上は、受託者ではなく、「受益者(じゅえきしゃ)」に、贈与税が課税されます。
なぜ、受益者に贈与税が課税されるのかというと、家族信託に登場する人物とその役割から理解することができます。信託では、財産の名義が受託者に移るといっても、財産から発生する利益や価値は、受益者が受け取ることになるからです。
家族信託の登場人物と役割
- 委託者・・・財産を託す人
- 受託者・・・財産を信託の目的に従って管理する人
- 受益者・・・財産から発生する利益を受け取る人
したがって、家族信託では、実際に財産から発生する利益を受け取る受益者に課税関係が生じるのが原則となります。
自益信託と他益信託について
信託には、「財産を託す=委託者(財産の所有者)」、「財産を管理する=受託者」、「財産から発生する利益を受け取る=受益者」の3者が関わることになります。
そして、信託契約の内容により、委託者が受益者を兼ねることもできます。委託者と受益者が同一人物の信託を「自益信託(じえきしんたく)」といい、委託者と受益者が別人物の信託を「他益信託(たえきしんたく)」といいます。
先にも述べたとおり、家族信託では、受益者に贈与税などの税金が課税されるのが原則となります。
ただし、信託を開始したときから受益者に贈与税が課税されるのは、委託者と受益者が別の人物(他益信託)だった場合です。反対に、信託する当初から委託者と受益者が同一人物(自益信託)であれば、信託する前後で財産から発生する利益を受け取る人(委託者=受益者)に変更はないため、受益者(兼委託者)に贈与税は課税されません。
自益信託と他益信託
- 自益信託・・・「委託者」と「受益者」が同一人物⇒贈与税が課税されない
例)委託者父、受託者子、受益者父⇒父には贈与税は課税されません。 - 他益信託・・・「委託者」と「受益者」が別の人物⇒贈与税が受益者に課税される
例)委託者父、受託者子、受益者母⇒母に贈与税が課税されます。
家族信託の多くは、受益者に贈与税が課税されないよう当初は自益信託(委託者=受益者)として信託を設計しますので、信託を開始したときから贈与税が課税されることはありません。
家族信託を開始するときの税金
贈与税
先にも述べたとおり、家族信託を開始すると委託者から受益者に、経済的利益が移転した(贈与)とみなされて、受益者に贈与税が課税されます。ただし、贈与税が課税されるのは、委託者と受益者が別の人物である他益信託の場合です。
反対に、委託者と受益者が同じ人物である自益信託であれば、家族信託をする前と実質的な権利や財産から発生する利益を受ける人に変更はないので、受益者に贈与税は課税されません。
- 自益信託・・・贈与税は非課税
- 他益信託・・・受益者に贈与税が課税
登録免許税(不動産を信託した場合)
不動産を信託したときは、委託者から受託者へと不動産の名義を変更するために所有権移転及び信託の登記を法務局に申請します。その登記を申請する際に、納付する税金を登録免許税といいます。
以下は、その登録免許税の税率になります。
- 土地を信託するとき・・・固定資産評価額×0.3%(令和8年8月31日まで)
- 建物を信託するとき・・・固定資産評価額×0.4%
※固定資産評価額とは、固定資産評価証明書に記載されている評価額のことです。
不動産取得税
原則として、不動産の所有権が移転すると、その所有権を取得した者に対して不動産取得税が課税されます。
ただ、信託の場合は、不動産の所有権を取得する受託者(受益者も含め)に不動産取得税は、課税されません(非課税)。
これは、不動産の所有権を受託者に移転するのは、信託財産として管理するための形式的な移転に留まるため不動産取得税は非課税ということになります(地方税法第73条の7第3号)。
家族信託をしている間の税金
所得税・住民税
家族信託の期間中に、信託財産から発生した利益に対して、所得税・住民税が課税されます。
そして、信託期間中に、所得税・住民税が課税される人は財産から発生する利益を受け取る受益者になります。
例えば、賃貸アパートなど収益不動産を信託財産とした場合に、毎月の賃料収入を受け取るのは受益者です。したがって、所得税・住民税が課税されるのは、受益者です。
※受託者に、所得税・住民税(信託報酬を得た場合を除き)は課税されません。
固定資産税
固定資産税(固定資産税・都市計画税)とは、不動産の所有者(名義人)に、毎年課税される税金のことです。
固定資産税は、毎年1月1日現在の固定資産課税台帳(市町村長が作成した不動産の所有者名簿のようなもの)に、登録された人が納税義務者になります。
そのため、不動産を信託した場合は不動産の名義人は受託者になるため、固定資産税が課税されるのも受託者になります。
ただし、固定資産税の支払いなど、不動産を管理するために必要となる費用については、信託された現金から受託者が支払いに充てることができます。
贈与税(受益権を贈与したとき)
先にも述べたとおり、受益者は、信託期間中に信託財産から生じる利益を受け取ることができます。この利益を受け取る権利の総称を「受益権」と呼びます。信託期間中に、この「受益権を贈与する」と受益権を譲り受けた人(新受益者)に贈与税が課税されます。
譲渡所得税(受益権を売却したとき)
信託期間中に、受益者が対価を得て、前述した「受益権」を第三者に売却した場合には、売却した側の受益者(旧受益者)に対して譲渡所得税が課税されます。
上記以外にも譲渡所得税が課税されるケースがあります。
それは、「受託者」が「信託財産そのものを売却」して、利益(譲渡益)が発生したときです。その場合にも受益者に譲渡所得税が課税されることになります。
例えば、親が所有する自宅不動産を親自身を受益者として、子に信託した後に、親の介護費や施設への入居費用の支払いのために、受託者である子が信託財産である自宅を売却することで、売却代金に利益が発生するのであれば受益者である親に対して譲渡所得税が課税されることになります。
相続税(受益権を相続した)
家族信託をしている期間中に、受益者が死亡した場合には、信託契約の定めに従い、信託を終了するか新たに受益者となる人のために、信託を継続することになります。
信託契約書に、当初の受益者が死亡した後、新たに受益者となる人の指定があり、信託を終了せずに継続する信託の仕組みのことを「受益者連続型信託」と呼びます。
受益者連続型信託では、当初受益者(第1受益者)が死亡したとしても信託が終了することなく、新たに指定された受益者(第2受益者)が受益権を取得することになります。
このときに、税務上は、当初受益者から新受益者に、受益権の遺贈(相続)があったものとして新受益者に相続税が課税されます。以降も次の受益者について指定があるときは、受益権を取得した人に相続税が課税されることになります。
【受益者連続型信託と相続税の課税関係】
登録免許税(不動産を信託している間に受益者を変更したとき)
不動産を信託している期間中に、受益権の贈与・売買・相続(受益者が死亡しても信託を継続するとき)があったときは、不動産の登記簿に記載されている信託目録の受益者を変更するために法務局に登記を申請します。
以下は、その登記を申請する際に納付する登録免許税になります。
- 受益者を変更したとき・・・信託している不動産の個数×1,000円
家族信託が終了したときの税金
家族信託が終了すると、信託を終了したときの受託者(清算受託者)が清算事務(債権の回収や債務の返済など)を行い、残余財産(残った信託財産)を信託契約等で指定された「帰属権利者(残余財産を取得する人)」に引き渡す手続きを行います。
そして、信託が終了したときに課税される税金については、残余財産を誰が取得するかによって、課税の有無や課税される税金の種類が異なります。
つまりは、どのような原因で帰属権利者が残余財産を取得するのかがポイントになります。
以下からは、信託が終了したときのケースに分けてご説明いたします。
ケース①受益者の生存中に信託が終了して、受益者以外の人が残余財産を取得する
贈与税
例えば、受益者である父が生存中に、信託契約や信託法に定める終了事由の発生により、家族信託を終了したとします。このときに信託契約書に、受益者である父ではなく、母を残余財産の帰属権利者に指定していた場合は母に贈与税が課税されます。
つまりは、母が帰属権利者として残余財産を受け取ることで財産の経済的な価値や権利も父から母に移ることになります。税務上は、これを父から母への生前贈与とみなして贈与税が課税されるということです。
登録免許税(不動産を信託している場合)
不動産を信託している場合には、信託終了に伴い、不動産の名義を受託者から帰属権利者に変更するために、所有権移転と信託登記の抹消登記を法務局に申請します。
その登記申請の際に納付する登録免許税は、以下のとおりです。
- 所有権移転分・・・固定資産評価額×2%
- 信託登記抹消分・・・信託している不動産の個数×1,000円
不動産取得税(不動産を信託していた場合)
家族信託を終了した後に、残余財産である不動産を委託者兼受益者以外の人が帰属権利者として取得する場合には、その帰属権利者に不動産取得税が課税されます。
これは信託終了に伴い、帰属権利者が不動産の実質的な権利(所有権)を取得することになります。したがって、不動産を取得した帰属権利者に不動産取得税が課税されることになります。
ケース①では、帰属権利者である母に不動産取得税が課税されます。
ケース②受益者の生存中に信託が終了して、受益者が残余財産を受け取る
ケース①と同様に、受益者である父が生存中に家族信託を終了したとします。
ただし、信託が終了した後の残余財産を受け取るのが受益者である父の場合には、贈与税や不動産を取得したときの不動産取得税は課税されません。
これは、信託を開始したときの委託者兼受益者と信託が終了した後に残余財産を受け取る人が同一人物であるため、財産の経済的な価値や権利の移転(父⇒父)が伴わず、贈与税や不動産取得税が非課税になります。
例えば、信託を開始したときは、父が委託者兼受益者となる自益信託であっても信託している間に、一度父から母に受益権が移転されて、その後に母から父に受益権を移転(戻した)した場合に、父が信託終了後に不動産(残余財産)を取得したとしても不動産取得税が課税されることになります。
これは、「信託の効力(開始)が生じたときから引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である信託」の要件を満たさなくなるため、不動産取得税が課税されるということです。(地方税法73条の7第4号)
登録免許税(不動産を信託していた場合)
ケース①と同じく信託終了に伴い、不動産の名義を受託者から帰属権利者に変更するための登記を法務局に申請します。
ただし、信託開始から継続して委託者兼受益者である人が不動産(残余財産)を受け取るのであれば、信託する前の所有者に不動産の名義を戻すだけなので所有権移転分は非課税になります。
ケース②では、信託開始から終了するまで、父が委託者兼受益者です。したがって、父が残余財産である不動産を取得するので、所有権移転分の登録免許税は非課税となります(登録免許税法第7条1項2号)。
- 所有権移転分・・・非課税(登録免許税法第7条1項2号)
- 信託登記抹消分・・・信託している不動産の個数×1,000円
ケース③受益者の死亡により、信託が終了したとき
相続税
ケース①と②とは異なり、受益者である父が死亡したことにより家族信託が終了したとします。
この場合に、信託契約書に帰属権利者として母を指定していた場合は、母に相続税が課税されます。これは、父の死亡により母が残余財産を取得することを父から母への相続(又は遺贈)があったとみなして、税務上は相続税が課税されることになります。
登録免許税(不動産を信託していた場合)
信託終了に伴い、不動産の名義を受託者(長男)から帰属権利者(母)に変更するために、所有権移転と信託登記の抹消登記を法務局に申請します。
ただし、ケース①とは異なり、ケース③では所有権移転分の登録免許税について、2%⇒0.4%に税率が軽減されます。
ケース③では、委託者兼受益者である父が死亡したことで信託が終了し、父の相続人である母(配偶者)が帰属権利者として不動産(残余財産)を取得することを父から母への相続と同視できるため登録免許税が0.4%に軽減されます。※通常の相続登記と同じ税率になります。
- 所有権移転分・・・固定資産評価額×0.4%(登録免許税法第7条2項)
- 信託登記抹消分・・・信託している不動産の個数×1,000円
不動産取得税(不動産を信託していた場合)
委託者兼受益者が死亡したことにより、その相続人が帰属権利者として残余財産である不動産を取得する場合には、不動産取得税は非課税になります。
これは、通常の相続により不動産を相続した場合には、不動産取得税が非課税になることと同様に、信託においても委託者兼受益者が死亡した後に、その相続人等が帰属権利者として不動産(残余財産)を取得する場合には、不動産取得税は課税されません(地方税法第73条の7第4号)。
ケース③では、委託者兼受益者である父が死亡することで信託が終了し、父の相続人である母(被相続人の配偶者)が帰属権利者として不動産(残余財産)を取得するのであれば、実質的には、父から母への相続と同視できるため母に不動産取得税は課税されません。
- 信託開始から終了まで「自益信託(委託者兼受益者)」を継続していること
信託を開始してから受益者が死亡して信託が終了するまでの間、継続して委託者と受益者が同一人物であることが必要になります。 - 「委託者の相続人」が不動産(残余財産)を取得すること
委託者の相続人が帰属権利者として不動産(残余財産)を取得することが必要になります。この相続人とは、民法に規定する法定相続人のことを指します。
ケース③では、帰属権利者となる母は、委託者である父の配偶者(法定相続人)に該当することになりますので、この要件を満たすことになります。
一方、父が亡くなった時に法定相続人に該当しない人が帰属権利者として不動産を取得する場合は、この要件を満たさないことになり、不動産取得税が課税されることになります。
家族信託をしても課税される税金は変わらない
家族信託をすることで、課税される税金(登録免許税を除く)が増えたり、減ったりすることはありません。
収益不動産から収益を得れば所得税がかかりますし、財産を贈与すれば贈与税、相続が発生すると相続税がかかることは、家族信託をしたとしても変わりません。
家族信託では信託された財産の所有権は受託者に移りますが、信託財産から発生する利益を受け取るのは受益者です。したがって、各種の税金が課税される人は受益者であり、課税対象になる財産は「受益権」となります。
もっとも、実際に家族信託を開始する際は、元の所有者である委託者と受益者が同一人物であることが多いため、課税される人の呼称は変わりますが、実際に税金が課税される人は家族信託をする前後で変更はありません。(※固定資産税等は除き)
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
家族信託にかかる税金の多くは、家族信託をせずとも課税される税金になります。ただし、家族信託をしない場合と比べると複雑に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
家族信託における課税関係については、信託をすることにより誰が利益を得るのかを考えてみると理解しやすくなります。
ただし、家族信託を利用する目的を誤ってしまうと予期しない税金が課税されることもあるので、家族信託を検討されている方は、専門家の支援を受けながら手続きを進めてみてください。
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面識のない相続人に連絡する方法と注意点
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。
前回の記事では、「面識のない相続人から相続に関する手紙が届いたときの対応方法」について、ご紹介しました。
今回は、反対に面識のない相続人や長年疎遠になっている相続人へ相続手続きに関する連絡をするときの方法と注意点をご紹介します。
面識のない相続人に連絡する方法
面識がない相続人や長年疎遠になっている相続人は、お互いに連絡先をしらないことが通常です。
そういった場合は、以下の方法で相手先の連絡先を調べることになります。
戸籍の附票を取得する
ご家族が亡くなると、普段連絡を取り合っている親族同士でしたら電話やメールなどで訃報を知らせることができます。しかし、面識がない場合や長年疎遠になっている親族(相続人)同士の場合は、お互いに連絡先を把握していないため、訃報を知らせることができません。
また、ご自身の親族の中に、相手方の相続人に近い親族に連絡を取り、相手の連絡先が分かれば良いのですが、多くのケースでは、近い親族の連絡先も知らないことがあります。
こういった場合は、まず相手の「住所」を調べることから始めます。
相続手続きでは、相続人調査の過程で相続人全員の戸籍を収集しますが、その際に「戸籍の附票(こせきのふひょう)」を取得することで、各相続人の住所を確認することができます。
戸籍の附票とは、その相続人が本籍を置いている市区町村で管理されている住所の移転履歴が記載された証明書のことです。
まずは、被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集して、相続人全員の現在の本籍地を把握し、戸籍の附票を取得することで、相手先の現在の居所を特定することから始めます。
相手先の住所が判明したら手紙を送ってみる
相手先である相続人の住所が判明したら、相続手続きに協力してもらうために手紙を書いて送るようにしましょう。住所が判明したからといって、いきなり自宅を訪ねることはお勧めできません。
特にお互い面識のない相続人同士では、いきなり自宅に訪ねてしまうと相手も不安になったり、警戒してしまうこともあり、その後の手続きにも悪い影響が及ぶ可能性があります。
突然、訪ねることは避けて、手紙を送ることから始めてみます。
手紙の内容には注意が必要
相手方に送る手紙の内容は、慎重に検討する必要があります。
特に、気を付けないといけないのは、手続きを急ぐあまり、初めから「遺産分割協議書」を送って、実印の押印や印鑑証明書を求めたりすると、相手方に不信感や警戒心を抱かせることがあり、その後の手続きが滞ってしまったり、争いの原因になるなどトラブルに発展することがあります。
手紙に記載する内容については、受け取る相手方の心情に配慮して、相続手続きに協力してもらえるよう慎重に検討する必要があります。
手紙に記載する内容
相手方の相続人に送る手紙の内容は、以下の事項を基本に記載するようにします。
※ただし、事案に応じて記載する内容が異なることもあります。
相続人であることを伝える
手紙の差出人であるご自身の身分を明らかにするために、ご自身の氏名と被相続人との続柄を記載して、差出人が相続人であることを知らせます。
また、相手方も相続人であることを知ってもらうために、その旨記載することや、参考として「相続関係説明図」などを手紙と一緒に同封することでより明確になります。
手紙を出した経緯を記載する
故人(被相続人)が亡くなった日や、相続人の調査を進めていく中で、相手方の住所が判明したことなどを記載します。また、今後の相続手続きを進めるには、相手方の協力が必要になることなど、手紙を出した経緯について記載します。
自身の連絡先を記載する
相手先から連絡をもらえるよう、差出人であるご自身の電話番号やメールアドレスを記載して、連絡をもらえるようにしましょう。
困ったときは専門家を頼ってみる
本記事では、面識のない相続人や疎遠になっている相続人と連絡を取る方法をご紹介しました。
どのような内容の手紙を書いたら良いか迷っている方は、手紙の書き方や内容を含めて司法書士や弁護士などの専門家のサポートを受けることをお勧めします。
特に面識のない相続人に送付する手紙の文面は、相手方に不安や不快感を与える内容になっていないか、相続手続きに協力してもらえるよう慎重に検討する必要があります。
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面識のない相続人から相続に関する手紙が届いたときの対応方法
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。
ある日、面識のない遠縁の相続人や司法書士事務所から相続に関する手紙が届くことがあります。
突然、送られてきた手紙に驚かれて、どのように対応してよいのか、困惑している方もいるかと思います。
本記事では、相続に関する手紙が届いたときの対応について解説いたします。
手紙を受け取った方は相続人であるということ
相続に関する手紙が送られてくるということは、受け取った方は相続人であり、かつ、相続手続きの当事者になります。
多くのケースでは、手紙を送る前に司法書士事務所などの専門家に相続人の調査を依頼して、戸籍上から相続人であることを確認してから手紙をお送るので、誤って手紙を送ることはなく、受け取った方は相続人であることは間違いありません。
したがって、送られてきた手紙の中には、差出人である相続人の連絡先と併せて、司法書士事務所などの専門家の連絡先が記載されていることがあります。
手紙が送られてくる理由
差出人である親族(相続人)が手紙を送る理由とは、相続手続きに協力してもらうためです。
相続手続きの多くは、遺産分割協議など相続人全員の協力のもと手続きを進める必要があるため、たとえ面識がなかったり、疎遠になっている相続人であっても協力を得る必要があります。
手紙を受け取った後の対応について
手紙を受け取った後の対応については、以下の3つが挙げられます。
①相続手続きに協力する旨の連絡をする
手紙の内容から協力しても問題がないと思われるのでしたら、相続手続きに協力する旨の連絡をします。
その後は、差出人である相続人や手続きを担当している司法書士等の専門家から今後の手続きについての案内がきます。
②内容を把握するために連絡する
手紙の内容がよく分からず、不安に感じる方や相続手続きを経験したことがない方は、まずは、手紙の差出人である相続人や手紙に記載されている司法書士等に連絡して、相続財産や手続きの詳細について、電話などで問合せをしてみることをお勧めします。
③関わりたくないときは、「相続放棄」する旨を連絡する
相続手続きに関わりたくない方は、初めから「相続放棄」をする旨を連絡して伝えるようにしましょう。
相続放棄とは、相続人として財産を承継する権利や地位を自ら手放す法律上の手続きのことです。相続放棄をすることで、相続人ではなくなるため、手続きに関わる必要もなくなります。
ただし、相続放棄は、相続の開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。つまり、今回のケースでは手紙を受け取った時から3か月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。
ご自身で相続放棄の手続きを行うことが難しいと感じる方は、手紙に記載されている司法書士に依頼することもできますし、ご自身の判断で、別の司法書士や弁護士などの専門家に依頼することもできます。
相続放棄について、詳しくは「相続放棄とは」をご覧ください
手紙を受け取った後に無視することのリスク
手紙を受け取った後に、返信を無視したり放置することはリスクになることがあります。
3か月以上放置すると「相続放棄」ができなくなる
先程もご説明しましたが、相続放棄をしたい方は、相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
「相続の開始を知った」とは具体的には、手紙を受け取った時から3か月以内に申立てる必要があり、何もせず3か月以上放置してしまうと、もはや相続放棄ができなくなります。
そして、もっともリスクになるのが被相続人(亡くなった方)が借金をしていた場合です。3か月以上何もせず放置すると法律上は、相続することを認めたことになり、被相続人が残した借金を手紙を受け取った相続人自身が返済する義務を負います。
相続放棄をしたい方は、放置せず、なるべく早めに対応することをお勧めします。
裁判所を介した手続きになることもある
相続手続きは、相続人全員が協力しあいながら手続きを進める必要があり、手紙を無視し続ける限り相続手続きを進めることができなくなります。
したがって、手紙の差出人である相続人からすると、連絡が取れない以上、遺産分割協議もできないため、強制的に遺産分割を行う手続きに移行する可能性があります。
その方法というのが「遺産分割調停・審判」になります。遺産分割調停は、家庭裁判所を介して遺産の分け方を決める手続きのことです。
遺産分割調停に移行すると、手紙を受け取った方にも裁判所から呼び出し状が届きます。そして、呼び出しにも応じなければ、遺産分割の審判に移行します。遺産分割審判とは、家庭裁判所が相続人である各当事者の主張を聞き、遺産の分け方を決める方法になります。
家庭裁判所を介せば、最終的には強制的に相続手続きを解決することができます。ただし、通常の相続手続きとは異なり、時間と費用が掛かります。
手紙を無視することは、ご自身を含めた相続人にとってデメリットになることも多く、必ず何らかのアクションを起こすことをお勧めします。
まとめ
記事を最後までご覧いただき、ありがとうございました。
相続人が多数となると、中には面識のない相続人が含まれることがあります。
手紙を受け取った方は内容を確認して、不明な点があれば差出人である相続人か司法書士等の専門家に相談してみて、ご自身はどうしたいのか希望や要望を伝えるようにしましょう。
当事務所では相続手続きに関するご相談を初回は無料で承っております。
今回の記事のような事案でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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相続放棄以外にも遺産を手放す方法がある
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田でございます。
相続放棄する以外にも遺産を手放す方法があります。
相続放棄の手続きは、家庭裁判所への申立てが必要になるなど、何かと手間が掛かる手続きになります。
そして、相続放棄以外の方法として、遺産を相続する権利を手放すことができる「相続分の譲渡」という方法があります。
本記事では、相続分の譲渡の方法と注意点をご紹介したいと思います。
相続分の譲渡とは
相続分の譲渡とは、相続人として故人の遺産を相続できる権利や地位を他の相続人や第三者に譲渡することをいいます。
例えば、父が亡くなり、長男・長女・次女の3名が相続人になるとします。この場合、長男・長女・次女の相続分は各1/3になります。そして、相続人の1人である長男が、次女に自身(長男)の相続分1/3を譲りたいとして、次女に相続分を譲り渡すことを相続分の譲渡といいます。
次女が長男から相続分を譲り受けると、各相続人の相続分は長女1/3が、次女が2/3となります。そして、相続分を譲り渡した長男は相続人として離脱することになります。
譲渡する相手方
相続分の譲渡は、他の相続人だけではなく、相続人以外の第三者に譲渡することもできます。
ただし、相続人以外の第三者に相続分が譲渡された場合、他の相続人は、取戻権という権利を行使して、第三者が取得した相続分を取り戻すことが可能です(民法第905条)。
これは、相続分を譲り受けた第三者は、相続人としての立場を有することになるので、遺産分割協議に参加することもできます。ただ、家族以外の第三者が遺産分割協議に参加するとなると、他の相続人との間で争いになる可能性があり、法律上は、第三者に譲渡された相続分を取り戻すための権利が認められています。
ただし、この相続分の取戻権を行使できるのは、相続分の譲渡があった時から1か月以内という期限がありますので、ご注意ください。
相続分を譲渡できる時期と方法
相続分を譲渡する方法ですが、相続分を譲り渡す相続人と譲受ける人が合意をすることで成立します。相続放棄とは異なり、裁判所に対する手続きも必要ありません。もっとも実務上は、「相続分譲渡証明書」を作成して書面として残します。
また、相続分を譲渡したい場合は、遺産分割協議が成立する前に譲渡する必要があります。
遺産分割協議が成立した後に、相続分の譲渡を行ってしまうと、新たに相続権を持った人を加えて、再度遺産分割協議をやり直す必要があるため、協議が成立した後は、相続分の譲渡を行うことはできません。
相続分を譲渡したときの税金
相続分を譲渡するときの対価は有償でも無償でも構いませんが、譲渡した相手によって税金の課税有無や課税される税金の種類が異なります。
相続人間で相続分を譲渡したときの税金
他の相続人に無償で相続分を譲り渡したとしても、譲渡人・譲受人である相続人に贈与税などは課税されることはありません。もっとも相続分を譲り受けた相続人には相続税が課税されます。
一方、有償で譲渡した場合には、譲渡人である相続人が受け取った対価が相続税の対象となります。そして、相続分の譲り受けた相続人は、その支払った対価を差し引いた相続財産に対して相続税が課税されます。
相続人以外の第三者に相続分を譲渡したときの税金
相続分を譲り受ける相手方が相続人以外の第三者である場合、相続分を無償で譲渡すると、譲り渡し人である相続人には相続税が課税されて、譲受人には贈与税が課税されます。
一方で、相続分を有償で譲渡した場合は、譲り渡した相続人には相続税と譲渡所得税が課税されます。
これは、第三者に相続分を譲渡する行為は、譲り渡し人である相続人がいったん財産を相続したものと税務上は取り扱われてしまい、第三者に相続分を譲渡したのが有償・無償を問わず、相続税が課税されることになります。また、有償で譲渡したときに、利益が発生した場合には、譲渡所得税もあわせて譲り渡した相続人が負担することになります。
相続放棄と異なる点
「相続放棄」と「相続分の譲渡」は、故人が残した財産を相続する権利を手放すという部分においては共通しています。
ただし、相続放棄と相続分の譲渡の異なる重要なポイントとしては、故人(被相続人)が残した借金などのマイナス財産の取扱いです。
「相続放棄」の場合は、家庭裁判所に申立てをして受理されると、法律上は最初から相続人ではなかったという取り扱いになります。したがって、債権者から借金の返済を求められたとしても相続放棄をしたことを理由に、借金の支払いを拒むことができます。
一方、相続分の譲渡をするとマイナスの財産も譲受人に移転することになります。ただし、債権者は、譲り渡し人である相続人に借金の支払いを請求することができ、相続分を譲渡したことを理由に借金の支払いを拒むことができません。
そのため、相続分を譲り渡した相続人は、債権者からの請求に応じて、一旦借金を返済したうえで、相続分の譲受人に対して支払った分を請求することになります。
ここが「相続放棄」と「相続分の譲渡」の異なる点になります。
相続放棄について詳しくは、「相続放棄とは」をご覧ください。
相続分の譲渡を利用するケース
ここまでのご説明を踏まえて、相続分の譲渡をするケースをご紹介します。
- 故人に借金はないが、相続財産を承継したくない
- 遺産分割など、相続手続きに関与したくない
- 相続人同士の争いに巻き込まれたくない
- 自分が相続するよりも他の相続人に相続してもらいたい
- 相続人の数が多く、相続する権利を集約したい
- 相続財産が不動産しかなく、代わりに現金を受け取りたい
- 相続すること自体に興味がない
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ここでは、相続放棄以外に遺産を手放す方法として相続分の譲渡という方法をご紹介しました。相続放棄と比べて、裁判所に対する手続きも不要なため、手間を掛けずに相続手続きに関与したくない方には、お勧めの方法です。
もっとも、故人が借金をしていた場合は、相続分の譲渡をしたとしても支払い義務を免れることはできないのでご注意ください。
当事務所では、相続分の譲渡に関わらず、相続手続き全般に関するご相談を承っております。
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故人が生命保険に加入していたか調べる方法
記事をご覧いただき、有難うございます。港区の司法書士山田武史です。
亡くなった方が家族の誰にも知らせずに生命保険に加入していることがあります。
ただ、家族がその事実を知らなければ、保険会社から生命保険金を受け取ることはできません。
そこで、「生命保険契約照会制度」を利用することで、故人が、どの保険会社と生命保険契約を結んでいたのか、契約の有無を調べることができます。
本記事では、生命保険契約照会制度の手続きについてご説明します。
「生命保険契約照会制度」とは
生命保険契約照会制度とは、全国の生命保険会社(42社)が加入している「一般社団法人生命保険協会」という団体に、亡くなったご家族が保険契約者または被保険者となっている生命保険契約の有無を調べてもらうことができる制度のことです。
ただし、照会の結果、「生命保険協会」から開示されるのは、生命保険契約の有無のみなので、具体的な保険契約の内容については、個別に保険会社に確認する必要があります。
- 財形保険契約
- 財形年金保険契約
- 既に支払いが開始した年金保険契約
- 保険金等が据え置きとなっている保険契約
照会制度を利用できる条件
生命保険契約照会制度は、ご家族が亡くなったとき以外にも下記の状態になったときに利用できます。
- ご家族が死亡したとき
- ご家族が認知症等により、判断能力が低下したとき
- ご家族が災害により死亡または行方不明になったとき
照会制度を利用できる人
生命保険契約照会制度を利用できる人は、次の方です。
ご家族が死亡したとき
- 相続人
- 相続人の法定代理人(相続人が未成年の場合の親権者など)
- 相続人の任意代理人(相続人から委任をされた弁護士、司法書士、行政書士)
- 遺言執行者
- 遺言執行者の任意代理人(遺言執行者から委任された弁護士、司法書士、行政書士)
【必要書類】
- 照会申請する人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 法定相続情報一覧図
※法定相続情報一覧図については、こちらをご覧ください。 - 照会対象者の死亡診断書
※照会対象者とは、亡くなられた方のことです。 - 委任状(照会申請を弁護士、司法書士、行政書士に委任するとき)
- 利用料3,000円
ご家族が認知症等により、判断能力が低下したとき
- 法定代理人(法定後見人・任意後見人など)
- 本人の健常時に委任を受けた任意代理人(弁護士、司法書士、行政書士)
⇒※既に法定代理人(後見人等)が選任されている場合は請求できません。 - 3親等内の親族
- 3親等内の親族の任意代理人(弁護士、司法書士、行政書士)
【必要書類】
- 法定代理権・任意代理権等の確認書類(後見登記事項証明書等)
- 照会する人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 照会対象者の診断書(生命保険協会所定の書式)
- 本人との続柄がわかる戸籍や住民票等(3親等内の親族が照会するとき)
- 委任状(任意代理人として弁護士、司法書士、行政書士が照会するとき)
- 利用料3,000円
ご家族が災害により死亡または行方不明になったとき
- 配偶者、親、子または兄弟姉妹
- 配偶者、親、子または兄弟姉妹の法定代理人または任意代理人
災害時の場合、あらかじめ用意する必要書類はありません。費用も無料となります。
照会申請の方法
照会申請の方法は、「生命保険協会のホームページ」から申し込みをします。
申請書などの書面を郵送してもらう方法
生命保険協会のホームページの専用フォームに照会をする人の氏名や生年月日、住所などを入力し、送信をします。
申請した後、申請書類が郵送されますので、必要事項を記入して必要書類と一緒に返送をすることにより、申請が完了します。
ホームページから申請する方法
書面を郵送してもらう方法以外にも生命保険協会のホームページから申請することもできます。
まず、ホームページからユーザー登録を行います。そして、マイページから申請書をダウンロードして、必要事項を入力した後に、必要書類をスキャンしたPDFファイルやスマートフォン等で撮影した画像をアップロードします。
この方法はパソコン操作に慣れている方であればお勧めですが、入力や操作が難しいと感じる方は書面を郵送してもらう方法をお勧めします。
手続き方法の詳細は、「生命保険契約照会制度ご利用の手引き(引用元:一般社団法人生命保険協会WEBサイト)」をご覧ください。
照会結果を受け取った後の対応
照会申請をした日から2週間程で、保険契約の有無が記載された照会結果の回答が届きます。
回答書のイメージ
引用元:一般社団法人生命保険協会WEBサイト
ただし、冒頭でもご説明しましたが、生命保険契約照会制度によって開示されるのは、「生命保険契約の有無」のみです。
照会結果を受け取った後は、生命保険会社へ問い合わせましょう。
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ここでは、亡くなったご家族が生命保険に加入しているかわからない場合の調査方法について、解説いたしました。
なお、生命保険金の請求は保険金支払事由が発生してから3年以内に請求しなければ、時効により消滅してしまいます。亡くなった方の生命保険の加入状況がわからない場合は、「生命保険契約照会制度」を利用して、なるべく早めに確認するようにしてください。
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相続手続きは、どの専門家に依頼すべきか
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。
相続手続きを依頼できる専門家には、弁護士、司法書士、行政書士、税理士などがいます。
もっとも相続手続きにおいて、各専門家には、「できること」や「できないこと」があるので、ご依頼人が求める手続きに応じて、相談先も異なることになります。
本記事では、各専門家に依頼できる業務や依頼するケースについて、ご説明いたします。
弁護士
弁護士ができる相続手続き
- 相続人調査
- 相続財産の調査
- 遺産分割協議の作成
- 遺産分割調停、審判手続きの代理
- 相続放棄、限定承認手続きの代理
- 遺留分侵害額請求の代理
- その他相続手続きに附随する手続きの代理
弁護士ができない相続手続き
- 相続税の申告
弁護士に相続手続きを依頼すべきケース
弁護士は、法律手続き全般を代理することができるので、相続手続きにおいてもほぼ全ての手続きについて対応することができます。
特に、他の士業と異なるのは、弁護士は書類作成だけではなく、相続人同士で争いが生じた場合に、相手方との交渉をすることや各手続きにおいて相続人の代理人として業務を行える点です。
相続人同士の話し合いがまとまらなかったり、遺留分を請求するなど相続人間でトラブルが発生している場合は、弁護士に相続手続きを依頼すべきケースといえます。
司法書士
司法書士ができる相続手続き
- 相続人調査
- 相続財産の調査
- 遺産分割協議の作成
- 不動産の名義変更の代理(相続登記)
- 相続放棄、限定承認手続きの書類作成
- 遺産分割調停、審判手続きの書類作成
- 預貯金の解約、払戻し手続き
- 株式、有価証券の相続手続き
司法書士ができない相続手続き
- 相続人同士の紛争解決
- 相続税の申告
- 遺産分割調停、審判手続きの代理
- 相続放棄、限定承認手続きの代理
- 自動車の名義変更
司法書士に相続手続きを依頼すべきケース
司法書士は、不動産の名義変更、預貯金の解約・払戻し、株式・有価証券の相続手続きなど、相続手続き全般に対応することができます。
特に、故人から相続する財産に不動産が含まれる場合には、司法書士に相続手続きを依頼することをお勧めします。また、相続人同士で争いが無い事案であれば、相続登記以外の相続手続きを取り扱うこともできます。
行政書士
行政書士ができる相続手続き
- 相続人調査
- 相続財産の調査
- 遺産分割協議の作成
- 預貯金の解約、払戻し手続き
- 株式、有価証券の相続手続き
- 自動車の名義変更
行政書士ができない相続手続き
- 相続人同士の紛争解決
- 相続税の申告
- 不動産の名義変更の代理(相続登記)
- 相続放棄、限定承認手続きの書類作成及び代理
- 遺産分割調停、審判手続きの書類作成及び代理
行政書士に相続手続きを依頼すべきケース
行政書士が取扱うことができる相続手続きは、遺産分割協議書の作成や自動車の名義変更等です。
司法書士と異なるのは、行政書士は不動産の名義変更手続(相続登記)や相続放棄など、法務局や裁判所に提出する書類作成はできません。また、司法書士と同様に相続人同士で争いが生じてる事案については、手続きを取り扱うことはできません。
相続人同士で争いがなく、ご自身で相続手続きを進める際に、遺産分割協議書などの書面作成のサポートを受けたい場合は、行政書士に依頼すべきケースとなります。
税理士
税理士ができる相続手続き
- 相続人の調査
- 相続財産の調査
- 相続税の申告、準確定申告
- 遺産分割協議の作成(相続税が発生する場合)
- 税務調査の対応
- 相続税の還付請求
税理士ができない相続手続き
- 相続人同士の紛争解決
- 不動産の名義変更の代理(相続登記)
- 相続放棄、限定承認手続きの書類作成及び代理
- 遺産分割調停、審判手続きの書類作成及び代理
税理士に相続手続きを依頼すべきケース
税理士は、税に関する専門家です。したがって、相続手続きにおいて、税理士に依頼するケースとしては、相続税が発生する方で相続税の申告が必要な場合です。
もっとも、財産を相続をしたからと言って、必ず相続税が課税されるとも限りません。
相続税が課税される目安としては、基礎控除額「3000万円+(相続人×600万円)」を超える財産を相続する場合です。また、相続税の申告は、故人が亡くなった日の翌日から10か月以内に、所轄の税務署に行う必要があります。
相続税が課税される可能性が有る方は、早めに税理士に相談するようにしてください。
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本記事では、相続が発生した際に、どの専門家に手続きを依頼すべきか、各専門家が対応できる業務や依頼するケースについて解説いたしました。
ただ、実際の相続手続きには、複数の専門家が関わることも少なくありません。
ご自身が相続人となり、手続きが必要となった場合には、他の専門家と連携して手続きを提案してくれる事務所を選ぶようにしましょう。
当事務所でも事案に応じて、他の専門家と連携して業務に対応しております。
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遺贈寄付の方法と注意点
記事をご覧いただきありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。
遺贈寄付とは、遺言書によって、財産の全部または一部を相続人以外の人または、地方自治体や特定の法人などに無償で譲渡(寄付)することをいいます。
自身が亡くなった後、特定の団体の活動のために財産を寄付したいとお考えの方は、遺言書を書いて「遺贈寄付」することをお勧めします。
本記事では、「遺贈寄付」をする方法と注意点をご紹介します。
「遺贈寄付」とは?
そもそもの「遺贈」とは、遺言書により、自身が亡くなった後、相続人以外の人に財産の一部または全部を譲り渡すことです。
財産を譲り渡す相手が相続人の場合は「相続」という文言を用いますが、相続人以外の特定の個人や団体、法人に財産を譲り渡す際に用いる文言が「遺贈」になります。
そして、自身が亡くなった後、お世話になった施設、団体や法人等に財産の全部または一部を譲り渡すことを「遺贈寄付」といいます。
遺贈寄付をするには、遺言書の作成が必要になる
「遺贈寄付」とは、上述しました遺贈という方法を用いて、財産を譲り渡すことです。そして、「遺贈(寄付)」をするには、必ず遺言書を作成する必要があります。
遺言書を作成していないと、ご自身が亡くなった後、相続人が財産を相続することになり、相続人以外の人には、財産を譲り渡すことができないためです。
遺言書の種類や書き方は、「知っておくべき遺言書の種類」をご覧ください
遺贈寄付の大まかな流れ
遺贈寄付には、法律上、注意しなければならない点がいくつか存在します。遺贈寄付をする際は、まずは、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。
ご自身の財産を寄付する団体や法人を決めます。寄付先が決まっていない方は、ご自身が支援したい分野などから選定します。
遺贈寄付をするための遺言書を作成します。
遺贈寄付は、遺言書を書いた本人が亡くなった後に手続きが開始します。それまでは遺言書をご自身で保管するか、後程、ご説明する遺言執行者に保管をお願いすることをお勧めします。
遺言書を書いた本人が亡くなった後に、遺贈寄付が実行されて相手方(寄付先)に財産が遺贈(寄付)されます。
遺贈寄付をする際の6つの注意点
①遺言執行者を必ず指定しておくこと
遺贈寄付のために遺言書を作成する際は、併せて遺言執行者を必ず指定しておきます。遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容のとおりに手続きを実行する人のことです。
遺言執行者の指定が無ければ、相続人が遺贈寄付を実現するための手続きを行います。
ただし、遺贈寄付は、相続人にとって必ずしも利益になる手続きとはいえないため、寄付をするための手続きに協力するとも限りません。
したがって、遺贈寄付を確実に実現したい方は、弁護士や司法書士などの中立的な立場の専門家を遺言執行者に指定しておきましょう。
遺言執行者について、詳しくは「遺⾔執⾏者について」をご覧ください。
②遺留分に配慮する
ご自身が亡くなった後に、相続人となる方がいる場合は、その相続人の遺留分に配慮する必要があります。
遺留分とは、一定の相続人に保証された最低限の相続分のことです。
遺留分を有する相続人は、亡くなった人の配偶者、子、父母です。(亡くなった人の兄弟姉妹には遺留分はありません。)
そして遺贈寄付をするときは、その相続人が有する遺留分まで寄付しないよう注意しましょう。
仮に相続人の遺留分まで寄付してしまった場合、相続人が寄付先に『遺留分侵害額請求』を行うなど、相続人と寄付先との間でトラブルになる可能性があります。
遺留分を有する相続人がいる方は、遺贈寄付する財産については配分を慎重に検討する必要があります。
遺留分について、詳しくは「遺留分とは」をご覧ください。
③遺贈の方法は「特定遺贈」で寄付をする
遺贈寄付の方法には『包括遺贈』と『特定遺贈』があります。
包括遺贈とは、「財産の2分の1を○○○○法人に遺贈する」といったように、譲り渡す財産を特定することなく、財産を包括的に譲り渡す方法のことです。
ここで注意が必要になるのが、包括遺贈により財産を譲り受ける寄付先は、法律上、相続人と同様の権利義務を負担することになります。
つまり、財産の寄付を受ける団体や法人は、相続人と同様に亡くなった人の借金などを引き継ぐことになります。また、寄付先と相続人との間で遺産の分け方についての話し合いが必要になります。
寄付先は、故人の相続人とトラブルになることは避けたいと考えており、実際に寄付する際にも「特定遺贈」により、寄付することが条件になっています。
したがって、遺贈寄付をする場合は、「金○○○○万円を○○○○法人に遺贈する」といった、寄付する財産を特定して遺贈する「特定遺贈」の方法で遺言書を作成するようにしましょう。
④寄付先によって課税される税金が異なる
寄付先が個人の場合は、相続税が課税される
財産の寄付先が個人の場合は、原則として、財産の寄付を受ける個人に対して相続税が課税されることになります。
ただし、寄付を受ける個人が公益的な事業を行っており、寄付された財産をその事業のために使用するのであれば、相続税が課税されることはありません。
寄付先が法人の場合は、法人税が課税される
財産の寄付先が法人の場合には、原則として財産の寄付を受ける法人に法人税が課税されます。ただし、寄付先が個人の場合と同様に、寄付を受ける法人が公益的な事業を行っている場合は、その法人に対して法人税は課税されません。
寄付を受ける相手先によっては、課税される税金や課税の有無が異なりますので、寄付先には事前に確認をするようにしましょう。
⑤不動産を寄付する場合の注意点
不動産そのものを寄付する場合の注意点
ご自身が亡くなった後、ご自宅などの不動産を相続する方や引き取り手がなく、不動産そのものを寄付しようと考えている方も少なくありません。
そして、不動産の寄付先が法人の場合、その不動産が購入したときよりも価格が値上がりしている場合には、遺贈寄付する本人(故人)に、譲渡所得税が課税されることになります。この譲渡所得税の申告は、遺言書を書いた本人が亡くなった日から4か月以内に税務署に申告(準確定申告)する必要があります。
つまり、亡くなった人に代わって、財産を取得しない相続人が譲渡所得税の納税義務を負担することになりますので、寄付先と相続人との間でトラブルになる可能性があります。
みなし譲渡所得税を誰が負担するのか、どのように手当をすればよいのか専門家に相談しながら遺言書の内容を検討する必要があります。
不動産を売却して現金を遺贈する場合の注意点
不動産を寄付したい場合でも現物のまま受け取ってくれる団体は多くありません。
こういった場合は、不動産を売却した後の現金を寄付することもできます。これを「清算型遺贈」といいます。そして、清算型遺贈の場合、前提として不動産を売却する必要があり、売却することで利益が発生すると「譲渡所得税」が課税されます。
この譲渡所得税は、最終的に売却代金をもらう受遺者が負担すべき税金になりますが、仮に受遺者が納めなければ、所轄の税務署から相続人に納税するよう連絡がいきます。
つまり、遺贈寄付により、実際には財産を受け取っていない相続人が税金を負担することになります。
この場合は、相続人に課税されることになる譲渡所得税などを控除した額を遺贈するなど、相続人と寄付先がトラブルにならないよう遺言書の内容を慎重に検討する必要があります。
⑥寄付先に財産の受け取りが可能か確認する
寄付先に遺贈寄付をする財産の受取りが可能か遺言書を作成する前段階から確認しておきましょう。
寄付先は、財産であれば全てを受け取れるわけではありません。寄付先によっては、寄付を受け入れる財産や条件が異なるため、遺言書を作成する段階から寄付先に受け入れが可能か事前に確認することが必要になります。
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本記事では、遺贈寄付をする方法と注意点について解説いたしました。
遺贈寄付には、遺言書作成だけではなく、税務面の検討も必要になるため、必ず専門家に相談しながら手続きを進めてください。
当事務所でも、遺贈寄付や遺言書に関するご相談を承っております。
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小規模宅地等の特例について
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。
亡くなった人から土地を相続したときに、一定の要件を満たすことで、土地の相続税評価額を減らせる制度があります。これを「小規模宅地等の特例」といいます。
ただし、相続した全ての土地に小規模宅地等の特例が適用されるわけではなく、相続する土地の利用状況によって適用されるための要件は異なります。
本記事では、小規模宅地等の特例について、解説いたします。
小規模宅地等の特例とは
あらためて小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たすことで、亡くなったご家族から相続した土地の相続税評価額を最大80%まで減らすことができる税法上の特例のことです。
一般的に、不動産は他の財産と比べて評価額が高いこともあり、それに比例して納付する相続税額も高額になることがあります。
例えば、故人と相続人が同居していた自宅の土地をそのまま相続すると相続税を納付するために自宅を売却しなければならない事態も想定されます。
そこで、相続する土地の利用状況に応じて、土地の相続税評価額を減らし、土地を相続した人が納付する税金の負担を減らすための措置として小規模宅地等の特例が設けられました。
特例の対象になる土地について
小規模宅地等の特例の対象になる土地は4種類あり、それぞれ要件が異なります。
特定居住用宅地等
特定居住用宅地等とは、故人(被相続人)が居住していた自宅の敷地又は故人と生計を一にする親族が住んでいた土地のことです。
故人が居住していた自宅の土地
故人が居住していた自宅の土地については、土地を相続する人に応じて小規模宅地等の特例を受けるための要件が定められています。
【適用要件】
①故人の配偶者が相続(又は遺贈)により土地を取得する場合
- 配偶者が土地を取得する場合は、無条件で特例を受けられます。
②故人と同居していた親族が相続(又は遺贈)により土地を取得する場合
- 相続税の申告期限まで自宅に居住し、かつ所有していることが必要です。
③別居している親族が相続(又は遺贈)により土地を取得する場合
以下の要件を満たす必要があります。
- 故人に配偶者がいない
- 故人と同居している相続人がいない
- 故人が亡くなる前の3年間、自己又は自己の配偶者、自己の3親等以内の親族や特別の関係にある法人(親族が経営している法人など)が所有する家屋に住んでいないこと
※自己とは、土地を相続する相続人のことです。 - 親族自身が住んでいる家屋を過去に一度も所有していないこと
※つまり、土地を相続する人は賃貸物件に住んでいることが要件になります。 - 相続税の申告期限まで、相続した土地を所有していること
介護保険法の要支援や要介護認定を受けていた故人が、以下の施設等に入居していた場合は小規模宅地等の特例を利用できます。
- 養護老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- 経費老人ホーム
- 有料老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- サービス付き高齢者向け住宅
障害者認定されている場合も、以下の施設等へ入居・入所していた場合は特例を利用できます。
- 障害者支援施設
- 共同生活援助を行う住居
故人と生計を一にする親族が住んでいた土地
故人が所有する土地に故人と生計を一にする親族が住んでいた場合も小規模宅地等の特例の対象になります。例えば、故人が所有している自宅に相続人が住み、故人は単身赴任などで別の場所に住んでいる場合です。
【適用要件】
①故人の配偶者が相続(又は遺贈)により土地を取得する場合
- 配偶者が土地を取得する場合は、無条件で特例を受けられます。
②故人と生計を一にしていた親族が相続(又は遺贈)により土地を取得する場合
- 相続税の申告期限まで自宅に居住して、かつ所有していることが必要になります。
特定事業用宅地等
特定事業用宅地等とは、故人が生前に事業をしていた建物などの敷地については、一定の要件を満たすことで、小規模宅地等の特例を受けることができます。ここにいう事業には、店舗を構えて事業を運営していることをいいます。なお、アパートや駐車場の経営は該当しません。
故人が生前に営んでいた事業に使用していた土地
【適用要件】
故人の親族が相続又は遺贈により土地を取得する
- 土地を相続した親族は、相続税の申告期限まで、故人の事業を継続させ、かつ土地を所有していなければなりません。なお、事業を始めてから3年以内に故人が亡くなっている場合は、一定の規模以上の事業を除き、特例の適用対象外になります。
故人と生計を一にする親族が事業に使用していた土地
故人が所有する土地を故人と生計を一にする親族が事業に使用していた場合も小規模宅地等の特例の対象になります。例えば、故人と同居している親族が故人の所有する土地の上で事業を営んでいた場合です。
【適用要件】
事業をしている生計を一にする親族が相続又は遺贈により土地を取得する
- 土地を相続した親族は、相続税の申告期限まで自己の事業を継続させ、かつ土地を所有していなければなりません。なお、事業を始めてから3年以内に故人が亡くなっている場合は、一定の規模以上の事業を除き、特例の適用対象外になります。
特定同族会社事業用宅地等
特定同族会社事業用宅地等とは、故人とその親族が50%を超える株式を所有する会社が故人の土地を用いて事業を行っていた場合は、一定の要件を満たすことで、小規模宅地等の特例を受けることが出来ます。なお、ここにいう事業にはアパートや駐車場の経営は該当しません。
故人と親族が経営する会社の事業に使用していた土地
【適用要件】
会社役員である親族が相続又は遺贈により土地を取得する
- 土地を相続した親族は、相続税の申告期限まで会社役員であることを継続し、かつ土地を所有していなければなりません。
貸付事業用宅地等
貸付事業用宅地等とは、故人が所有する土地を貸し付けて収益を得ている場合は、一定の要件を満たすことで、小規模宅地等の特例を受けることができます。例えば、アパートや駐車場の経営は、「特定事業用宅地等」に該当しませんが、「貸付事業用宅地等」には該当します。
故人が生前に貸付事業をしていた土地
【適用要件】
故人の親族が相続又は遺贈により土地を取得する
- 土地を相続した親族が貸付事業を引き継いで相続税の申告期限まで継続し、かつ土地を所有していなければなりません。なお、貸付事業を始めてから3年以内に故人が亡くなっている場合は、特例の適用対象外になります。
故人と生計を一にする親族が貸付事業に使用していた土地
故人が所有する土地を故人と生計を一にする親族が貸付事業に使用していた土地も小規模宅地等の特例の対象になります。例えば、故人と同居している親族が故人の所有する土地に、アパートを建築して収益を得ている場合です。
【適用要件】
貸付事業をしている生計を一にする親族が相続又は遺贈により土地を取得する
- 土地を相続した親族は、相続税の申告期限まで自己の貸付事業を継続させ、かつ土地を所有していなければなりません。なお、貸付事業を始めてから3年以内に故人が亡くなっている場合は、特例の適用対象外になります。
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
小規模宅地等の特例は、相続人にとっては納付する相続税額を減らすことができるので有用な制度です。ただし、実際に特例を受けるためには、故人と相続人の関係性や相続した後の状況など細かく要件が定められており、特例を受けて相続税を申告する際は、要件に該当するのか、専門家である税理士に事前に相談するなど、十分に注意してください。
当事務所では、お客様のご要望に応じて専門家である税理士をご紹介させて頂いております。
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相続税が課税される目安とは?相続税の基本的な仕組みと計算方法
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。
相続手続きのご依頼を頂いた際に、お客様から必ず質問されるのが相続税です。
故人から財産を引き継ぐ際に、相続税が課税されるのか、課税されるとしたら税金がいくらになるのか、ご心配になる方が多いかと思います。
司法書士は、相続税の専門家ではありませんが、相続手続きに携わる専門家として相続税が課税される目安や相続税の基本的な仕組みについて、ご紹介しようと思います。
相続税は、基礎控除額を超えると課税される
相続税の基礎控除額とは
相続税が課税される目安になるのが「相続税の基礎控除額」です。
相続税は、故人から相続する財産の総額から基礎控除額を差し引いた金額に課税されます。
つまり、故人が所有する財産の総額が基礎控除額を下回る場合は、相続税は課税されませんので相続税の申告も必要ありません。反対に、基礎控除額を上回る場合は、その超える額に対して相続税が課税されます。
基礎控除額の計算式は、以下のとおりです。
「3,000万円+法定相続人の数×600万円=基礎控除額」
法定相続人について詳しくは、「相続人の調査について」もご覧ください。
具体例
被相続人(故人):夫X
相続人:妻Y、長男A、長女B
基礎控除額の計算式
3,000万円+3名(Y,A,B)×600万円=4,800万円(基礎控除額)
上記の例では、亡夫Xから相続する財産の総額が4,800万円(基礎控除額)を超えなければ、相続税は課税されません。したがって、相続税の申告も不要です。
反対に、基礎控除額を超える場合は、相続税が課税されるため相続税の申告が必要になります。
「相続放棄」した相続人は、法律上は始めから相続人ではないと取り扱われます。ただし、相続税の基礎控除額を計算する際は、相続放棄した相続人も加えて、基礎控除額を計算することができます。
相続人の中に、被相続人(故人)と養子縁組していた相続人がいる場合は、その養子を相続人の数に含めて基礎控除額を計算することができます。ただし、被相続人に実の子(実子)がいる場合、基礎控除額の計算に加えることができる養子の人数には制限があります。
【被相続人に実子がいる】
基礎控除額の計算に加えることができる養子(相続人)は1名まで
【被相続人に実子がいない】
基礎控除額の計算に加えることができる養子(相続人)は2名まで
その他の主な控除について
相続税の配偶者控除
相続税の配偶者控除とは、配偶者が相続する財産額が1億6,000万円までは相続税が課税されないという制度です。また、相続する財産額が1億6,000万円を超える場合でも配偶者の法定相続分までであれば相続税は課税されません。
ただし、配偶者控除を利用する場合は、2次相続を踏まえて慎重に検討する必要があります。仮に、故人の配偶者が相続財産の大部分を相続して相続税がかからないとしても、その配偶者が亡くなった時に、再度課税される相続税が高額になる可能性があるためです。
債務控除
相続税は、故人(被相続人)から引き継ぐ財産に課税されます。ただし、相続人が故人から引き継ぐ財産には、預金や不動産などのプラスの財産だけではなく、故人が生前に借りていた借金などのマイナス財産も含まれます。
その際、不動産や預金などのプラスの相続財産から借金などのマイナスの相続財産を差し引いて、相続税を計算することができます。これを「債務控除」といいます。
プラスの相続財産-マイナスの相続財産-基礎控除額=相続税が課税される財産額
債務控除ができるマイナスの相続財産とは
- 故人の借金
- 故人が負担していた連帯債務
※保証債務は、原則として債務控除の対象外です。 - 故人が借りていた住宅ローン
※団体信用生命保険が付いた住宅ローンは債務控除の対象外です。 - 故人の未払いの生活費、公租公課(税金)、医療費
- 葬式費用
※香典返し、墓地・仏壇の購入費などは債務控除の対象外です。
引用元:国税庁HP「相続財産から控除できる葬式費用」
相続税が課税される財産
相続財産
相続税が課税される主な相続財産は、以下のとおりです。
【相続財産】
- 現金
- 預貯金
- 有価証券(株式など)
- 宝石
- 不動産(土地・建物・マンション)
- 貸付金
- 知的財産権(特許権、著作権など)
みなし相続財産
上記の相続財産以外にも相続税法では相続財産とみなして、相続税が課税される財産があります。
生命保険金(死亡保険金)
生命保険金(死亡保険金)は、故人の財産ではないため原則として相続財産に含まれません。ただし、税務上は、生命保険金(死亡保険金)を「相続財産とみなして」、相続税が課税されます。
なお、生命保険金(死亡保険金)には、相続税の非課税枠があるため、受け取った保険金の合計額が非課税枠の範囲内であれば、相続税は課税されません。
【相続税における生命保険の非課税枠】
「法定相続人の数×500万円」=非課税枠
ただし、生命保険の非課税枠を利用するには、保険金の受取人が相続人である必要があります。したがって、保険金を受け取った相続人が相続放棄している場合は、非課税枠の適用を受けることができず相続税が課税されることになります。
死亡退職金
故人が亡くなった後に、会社から支払われる退職死亡金も相続税の課税対象になります。もっとも、死亡退職金も生命保険金と同様の計算で非課税枠が設けられています。
生命保険契約に関する権利
故人(夫)が他のご家族を保険対象者として毎月の保険料を支払っていた場合や保険契約者に代わって保険料を負担していた場合は、故人(夫)が亡くなると解約返戻金に相当する額が相続税の課税対象になります。
信託受益権
信託とは、自身の財産を信託銀行や家族(家族信託)などに管理・運用を任せて利益を受け取ることをいいます。この利益などを受け取る権利の総称を「信託受益権」といいます。故人が生前に財産を信託して自ら利益を受け取っていた場合、故人が亡くなった後は、この「信託受益権」に相続税が課税されます。
暦年贈与で生前贈与した財産
「暦年贈与」とは、贈与する財産額が年間110万円以下であれば贈与税が課税されない基礎控除枠を活用した贈与の方法をいいます。
そして、相続財産を相続した人が相続財産とは別に故人から財産の生前贈与(暦年贈与)を受けていた場合、相続開始前3年以内に贈与された財産を加えて、その人の相続税を計算します。
例えば、父が亡くなる数年前から、父から子に毎年100万円単位のお金を贈与していた場合、父が亡くなる直前3年分の300万円を加算して、子に課税される相続税を計算します。
2024年1月1日以降は、相続税の計算に加える贈与された財産の期間が7年に延長されます。ただし、現時点から遡って、過去7年分の贈与された財産が対象になるわけではありません。
2024年1月1日以降に贈与された財産が対象になりますので、2026年に相続が発生した場合は、その時点から3年以内に贈与された財産を相続財産に加えて相続税を計算します。つまり、最大7年分の贈与財産が相続税の計算に含まれるのは、最短で2031年1月1日以降に発生する相続になります。
相続時精算課税制度を利用して贈与した財産
相続時精算課税制度とは、贈与した財産の総額が2,500万円までであれば贈与税が課税されない制度のこといいます。もっとも財産を譲渡した人が亡くなった時は、贈与された財産に相続税が課税されます。言い換えると財産を贈与したときは、贈与税が課税されない代わりに、財産を譲り渡した人が亡くなったときに、相続税が課税して精算するということです。
これまでの相続時精算課税制度では、贈与された財産の全てが相続税の課税対象になっていました。ただし、2024年1月1日から相続時精算課税制度にも年110万円以下の基礎控除が創設されました。
2024年1月1日以降は、相続時精算課税制度を利用して贈与した財産が年110万円以下であれば、相続財産に加える必要もなく相続税も課税されません。
相続税計算の流れ
相続税の課税対象になる相続財産を計算します。
相続財産は、故人が所有していた不動産や預貯金のほか、上述した「みなし相続財産」も含めます。
※生命保険金や死亡退職金は、非課税枠が適用される場合は除きます。
上記の課税対象財産の額が基礎控除額を上回る場合は、相続税の申告が必要になります。
反対に、基礎控除額を下回る場合は、相続税申告の必要はありません。
課税対象財産の合計-「3,000万円+法定相続人×600万円(基礎控除額)」=課税価格
課税価格から相続人全員に課税される相続税の総額を算出します。
相続税の総額を算出した後に、実際に財産を相続する割合に応じて各相続人が収める税額を計算します。
相続税の速算表
法定相続人が取得する額 | 税 率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ― |
1,000万円超3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
具体例
被相続人(故人):夫X
相続人:妻Y、長男A、長女B
課税対象財産(Xの遺産総額):8,000万円
基礎控除額:4,800万円(3,000万円+相続人3名(Y,A,B)×600万円)
相続税の課税価格は、8,000万円-4,800円=3,200万円になり、各相続人の法定相続分に応じた取得金額から相続税総額を算出します。
【各相続人の法定相続分取得金額】
妻Y:3,200万円 × 1/2(法定相続分)=1,600万円
長男A:3,200万円 × 1/4(法定相続分)=800万円
長女B:3,200万円 × 1/4(法定相続分)=800万円
【各相続人の相続税額を計算】
妻Y:1,600万円 × 15% - 50万円=190万円
長男A:800万円 × 10% = 80万円
長女B:800万円 × 10% = 80万円
相続税総額は、350万円になります。
【相続税総額から各相続人に課税される税額を計算】
遺産分割協議により取り決めた、各相続人が相続する割合から相続税の総額を基に各相続人が納める相続税額を算出します。
例 遺産分割協議により、各相続人が相続する割合を妻Y「5分の1」、長男A「5分の2」、長女B「5分の2」とした場合、各相続人が納める相続税額は、以下のとおりです。
妻Y:350万円×1/5=70万円
長男A:350万円×2/5=140万円
長女B:350万円×2/5=140万円
上記は、配偶者控除や債務控除などを計算に含めておりません。
詳細な税額をお知りになりたい方は、専門家である税理士に相談ください。
まとめ
相続税の申告は、故人(被相続人)が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に、所轄の税務署に申告書を提出する必要があります。
もっとも故人から相続する財産額が基礎控除額を下回る場合は、相続税の申告は必要ありません。
ただし、基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要になるだけではなく、各種控除や特例を使って相続税額を減らすには、期限を守って申告する必要があります。
相続税がかかる方は、なるべく早めに税理士などの専門家に相談して準備を進めることをお勧めします。
当事務所では、お客様のご要望に応じて税理士をご紹介いたします。
お気軽にお問い合わせください。
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