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遺言書と家族信託の違いと各制度を利用するケース
記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田です。
生前対策を検討されている方から、ご自身の場合、遺言書の作成と家族信託のどちらを利用した方がいいのかご質問を頂くことがあります。
遺言書は、ご自身が亡くなった後、財産の承継先をあらかじめ指定する証明書です。遺言書を作成しておくことで、相続人間で話し合いを行うことなく相続手続きを進めることができます。
一方の家族信託(民事信託)は、生前の財産管理から相続が発生した後の財産の承継先を指定できる仕組みのことです。
各制度の利用目的や活用方法は、ご本人の希望に応じて選択する必要があったり、ケースによっては併用することもあります。
今回の記事では、遺言書と家族信託の違いや各制度の活用方法について解説いたします。
遺言書とは
遺言書とは、ご自身が亡くなった後に、誰に財産を相続(承継)してもらうのか指定する証明文書のことです。
財産を所有している方が亡くなると、原則として法律に定められた相続人が財産を相続することになります。
法律に定められた相続人には、亡くなった人との続柄によって優先順位や相続分に決まりがあります。
【相続人の優先順位】
- 第1順位・・・子や孫など
- 第2順位・・・両親、祖父母など
- 第3順位・・・兄弟姉妹
※配偶者は、常に相続人になります。
【相続人の相続分】
- 配偶者2分の1、子2分の1
※子が複数いる場合は、2分の1を人数に応じて分配します。 - 配偶者3分の2、両親(祖父母)3分の1
※両親(祖父母)が複数いる場合は、3分の1を人数に応じて分配します。 - 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
※兄弟姉妹が複数いる場合は、4分の1を人数に応じて分配します。
そして、上記と異なる財産の承継先を指定ができるのが遺言書になります。
つまり、法律に規定されている相続割合と異なる指定が出来たり、相続人以外の第三者に対して財産を渡したり、寄付することができるのが遺言書になります。
詳しくは、「遺⾔書を作成しなくてはいけない理由」もご覧ください。
家族信託とは
家族信託とは、その名のとおり、ご自身の財産を「信頼できる家族」に「託す」ことをいいます。
具体的には、ご自身で財産を管理することが負担となったり、認知症などにより判断能力が低下したときに備えて、家族に財産の管理を任せておく仕組みのことをいいます。
また、財産を所有している本人が亡くなった後、家族に託している財産を誰に承継してもらうのか指定することもできます。この点は遺言書と同じです。
つまり、財産を所有している方の生前の財産管理から相続が発生したときの財産の承継先を指定できるのが家族信託になります。
詳しくは、「家族信託(家族のための信託)とは」もご覧ください。
遺言書と家族信託の違い
以下からは、より具体的に遺言書と家族信託の違いについて、解説いたします。
始める方法
遺言書は、財産を所有する方がご自身の意思に基づき、1人で作成することができます。特に、自筆証書遺言であれば、紙とペンがあれば作成することが可能です。
一方、家族信託は、財産を託す委託者と財産の管理等を託される受託者が「契約」を結ぶ必要があります。
言い換えると、遺言書はご自身1人でいつでも作成することができるのに対して、家族信託は、委託者と受託者が契約する必要があるため、お1人の意思だけでは成立しません。
家族信託は、遺言書により始める方法もあります。その場合、遺言書に受託者となる人や財産管理の目的や管理方法又は処分方法を書きます。そして、委託者が死亡したときに、家族信託が開始します。しかし、遺言書で家族信託を始める場合は、委託者の一方的な意思によるため、受託者として指定した人が遺言書にどおりに受託者に就任するとは限りません。つまり、指定された人が受託者に就任しないこともありえます。その場合、予備的な受託者を定めて置いたり、裁判所に対して受託者選任の申立てをすることができます。
ちなみに、よく誤解されがちなのが、金融機関等が商品としている「遺言信託」とは異なります。金融機関等の「遺言信託」は、遺言書を金融機関に預けて、ご本人が亡くなった後の相続手続きを金融機関が行うサービスのことです。
効力が発生する時期
遺言書と家族信託では、法的な効力が発生するタイミングが異なります。
遺言書は、遺言書を書いた本人が死亡したときに効力が生じます。つまり、財産を所有している方が亡くなった後に、遺言書で指定されている相続人等に財産が承継されます。
一方の家族信託は、原則として委託者と受託者が契約を締結した時に効力が発生します。そして、家族信託の契約を締結した後は、託された財産の名義が受託者に移転することになり、受託者が託された財産の管理や処分を行うことになります。
上述したとおり、遺言書によって家族信託を始める方法もあります。その場合、家族信託の効力が発生するタイミングも遺言書を書いた本人が亡くなった時です。
ご本人の生前に財産管理を家族に任せたい場合は、遺言書ではなく契約により家族信託を始める方法をお勧めします。
生前の財産管理を任せるのか
遺言書と家族信託の大きな違いは、財産を所有している本人の生前から家族等に財産管理を任せられるかの点です。
遺言書では、本人の生前に財産管理や処分を任せることは出来ません。なぜなら、遺言書の効力が生じるのは、本人が亡くなった時だからです。また、遺言書では財産を承継する人を指定できますが、承継した財産の管理方法や処分方法については、基本的に遺言書では指定することは出来ません。
一方の家族信託は、本人の生前に所有している財産の管理や処分を家族に任せることができます。そして、具体的な財産の管理方法や処分する時期についても指定することができます。
つまり、遺言書では本人の生前に財産管理を任せることは出来ませんが、家族信託では可能ということです。
この違いは、本人の判断能力が低下・喪失した時に生じます。
財産を所有している人が認知症等により判断能力を失った後は、本人自身で財産を管理することが事実上及び法律上できなくなります。また、本人のご家族が代わって財産を管理・処分することも認められません。
これを資産凍結状態といいます。
認知症による判断能力の低下により資産凍結状態となった場合は、成年後見制度を利用して本人に代わって財産管理を行う後見人を選任するしかありません。
成年後見制度は、本人の財産を保護するための制度であり、後見人を選任したからといって、財産を自由に管理・処分することはできず、ある程度の制限があります。
こういった認知症などの資産凍結を回避もしくは、対策する方法として家族信託は有効な方法といえます。
本人が判断能力がある内に、財産を託す人と信託契約を締結することで、本人が認知症になったとしても本人の意向に沿って家族による財産管理を続けることができます。
遺言書では、本人の生前に効果が生じない以上、認知症対策としては有効とは言えません。
ご家族の認知症に備えた対策をしたい場合は、遺言書よりも家族信託の方が有効と言えます。
2次相続以降の資産承継先を指定できるのか
家族信託と遺言書は、どちらも本人が亡くなった後の財産の承継先を指定することができます。
ただし、2次相続以降の財産の承継先の指定については、各制度に違いがあります。
2次相続以降の承継先の指定とは、例えば、父親が亡くなった後は、息子に財産を承継させて、その息子が亡くなった後は孫に相続させるよう父親本人が指定できるかです。
遺言書で指定できるのは、1次相続の承継先のみです。つまり、父親が自身が亡くなった後に、子に財産を承継させるための指定はできますが、子が亡くなった後、孫に財産を承継させることは、父親の遺言書ではできません。
この場合に、子が亡くなった後に、孫に財産を承継させたい場合には、子にも孫に財産を承継させるための遺言書を書いてもらう必要があります。もっとも遺言書は、後から撤回することができるため、子が遺言書を書いたとしても後からその遺言書を撤回して孫以外の人に財産を承継するよう遺言書を書き直すことができます。
一方の家族信託では、2次相続以降の承継先を指定することができます。
例えば、財産を所有している父親が、息子に財産の管理を託して、財産から発生する利益を当初は父親が受取り、父親が亡くなった後は妻が利益を受取り、そして母親(妻)が亡くなった後は、長男が受取るなど、資産の承継先を何世代も先も指定することができます。
この信託のことを「受益者連続型信託」といいます。
もっとも、「受益者連続型信託」によって、承継されるのは財産そのものではなく、信託財産から利益を受け取ることができる権利である受益権です。信託では、受益権を有する人が信託財産の実質的な所有者となります。
財産の利用目的を指定できるのか
遺言書は、本人が亡くなった後の財産を誰に承継してもらうのか指定することはできますが、承継した財産をどのように利用してほしいのか、若しくは承継した財産を別の誰かのために管理するよう指定することはできません。
一方の家族信託は、信託を始めるときに財産を託す人に対して、「どのような方法で」、「誰のために」、「財産を管理・処分するのか」、契約の中で指定することができます。
例えば、父親が長男に財産を信託して、当初は父親のために財産を管理・処分するよう定めておき、自身(父親)が亡くなった後は、妻のためや障害のある二男のためなど、父親自身が亡くなった後の財産の利用目的を信託契約の中で定めておくことができます。
つまり、家族信託では財産を所有している人が自身が亡くなった後の財産を、どのような利用目的で財産を管理・処分するのか指定できるということです。
各制度を利用するケース
家族信託と遺言書は、共通する点や違いもあるため、財産を所有している本人が希望する目的に応じて使い分けることが重要です。
以下は、各制度の利用するケースになります。
遺言書を利用するケース
- 自身が亡くなった後の財産の承継先だけを指定したい
- 家族に知られずに、相続対策をしたい
家族信託を利用するケース
- 認知症対策など、今の内に財産管理を家族に任せたい
- 何世代にも亘った資産の承継先を指定したい
- 自身のためだけではなく、他の家族(親族)のためにも財産を活用したい
どちらも元気な内から始めることが大切です。
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
本記事では、遺言書と家族信託の違いや各制度を利用するケースについてご紹介しました。
最近では、相続手続きのご依頼を頂いた相続人の方から、自身の相続に備えた対策についてのご相談を併せていただくことがあります。これは、相続人自身が苦労した経験や生前対策についての関心が増しているからではないでしょうか。
もっとも遺言書の作成や家族信託を利用するにも、財産を所有している本人が判断能力がある元気な内から始めることが必要になります。
あなた自身の老後や将来の相続について万全の対策をしたい方は、専門家に相談するなど、今の内から準備や手続きをすることをお勧めします。
当事務所では、遺言書の作成や家族信託の組成・導入などのサポートを承っております。
ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。
山田武史司法書士事務所
〒107-0062 東京都港区南青山二丁目2番15-1319号
TEL 03-6434-0717 FAX 03-6434-0727
遺言書の書き方と専門家に作成を依頼することのメリット
記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田武史です。
この記事をご覧になっている方は、ご自身で遺言書を書いてみようと思われている方や遺言書の書き方についての専門家に依頼することを検討されている方ではないでしょうか。
遺言書の書き方や作成方法は、厳格な要件を満たしていないと法的に無効になったり、相続が発生した後の手続きで使用できないケースも少なくはありません。
本記事では、遺言書を作成する際の注意点と遺言書の作成を専門家に依頼することのメリットについて解説致します。
相続対策で作成する遺言書は、主に2種類に分けられる
遺言書といっても、いくつかの種類に分けられます。ただ、広く一般的の方に利用・作成されている遺言書は、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類です。
まずは、各遺言書の概要についてご説明いたします。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言書を書く本人の自筆により作成する遺言書のことです。
自筆証書遺言の概要は以下のとおりです。
- 遺言書の全文を自筆で書く
※遺言書に記載する財産目録などはワードなどで作成しても大丈夫です。
ただ、ページごとに署名押印が必要になります。 - 遺言書を作成した日付を明確に記載すること
- 遺言書を書いた本人の氏名を署名する
- 印鑑で捺印をする。
※押印は認印でも大丈夫ですが、実印の方が証明書としての信頼性が高まります。 - 遺言書を作成した人が亡くなった後に遺言書の検認が必要。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、自筆証書遺言とは作成方法が異なり、公証役場にて証人2名以上の立会いのもとで、公証人の面前で作成する遺言書になります。
公正証書遺言の概要は以下のとおりです。
- 公証役場にて公証人の面前で作成する遺言書
- 公証人が遺言内容を遺言者本人に口述して作成する
※聴覚や言語に障害のある方でも手話や通訳、筆談により作成することもできます。 - 遺言書を作成する際に証人2名の立会いが必要
- 遺言者本人と証人が遺言内容を承認したうえで、各自が署名捺印し公証人が認証する。
- 自筆証書遺言とは違い、遺言書を作成した本人が亡くなった後の検認が不要。
その他、詳しくは「知っておくべき遺言書の種類」をご覧ください。
遺言書を作成する際の注意点
自筆証書遺言を作成する際の注意点
自筆証書遺言を作成する際の注意点は、以下のとおりです。
遺言書の全文を本人が自筆で書くこと
遺言書に記載する内容の一部でも親族や第三者に代筆すると自筆証書遺言自体が証明書として無効となります。もっとも前述したとおり、遺言書に記載する財産についての財産目録はパソコンのワードで作成したり、銀行通帳のコピーや不動産の登記簿謄本を添付してもかまいません。ただし、添付する各書面には、遺言書を作成する本人の署名押印が必要になります。
遺言書の作成日は明確にすること
遺言書を作成した日付は明確に書く必要があり「○月吉日」など、日付が特定できないと遺言書としては無効となります。
遺言書を作成した本人が署名・押印をすること
遺言書には、作成した本人の署名と押印が必ず必要になります。署名と押印がない遺言書は無効となります。
本人の意思に基づいて遺言書を作成すること
本人の自筆で書かれた遺言書であっても、第三者に強要されて書かされたり、本人の意思能力に疑いがあるときに作成された遺言書は無効になる可能性があります。
例えば、遺言書を作成した時期に、既に本人が認知症を発症していたり、判断能力に疑いがあったりする場合は、本人の意思に基づかず第三者が書かせたと疑われてしまい結果として遺言書自体が無効になる可能性が高くなります。
公正証書遺言を作成する際の注意点
公証人の手数料など費用が掛かる
公証人に支払う手数料は法令で決まっており、どの公証役場に依頼しても金額は同じです。ただし、遺言書に記載する財産の価額等や遺言書の枚数によって支払う費用の額が変動します。また、遺言書を作成する際の証人をご自身で手配出来ない場合は、公証役場に依頼して手配してもらうこともできますが、その際に証人に支払う日当などの費用が発生します。
公証人に遺言内容の相談はできない
公証人ができることは遺言書の作成です。つまり、遺言書に書く内容が相続が発生したときに相続人間でトラブルが起きないか等の相談をすることはできません。
例えば、遺言書に書いた内容が相続人の遺留分を侵害していないか、相続が発生した後に相続人間でトラブルが起きないかなど、必ずしも遺産相続の際にトラブルが発生しないことを保証されるとは限りません。
遺言書の作成を専門家に依頼するメリット
遺言書は、専門家に依頼せずに作成することはできます。ただ、遺言書は作成するだけではなく、相続が発生した際に、相続手続きに使用できる文面であることはもちろんですが、相続人同士で争いが起きないよう遺言書に記載する内容や文言は、慎重に検討する必要があります。
そして、司法書士などの専門家に遺言書の作成を依頼するメリットとしては、相続に備えた対策のために、どのような内容の遺言にしたらよいのか総合的な相談ができることです。また、遺言書に記載する財産の中に不動産が含まれている場合は、相続が開始した後に相続登記を行う必要があり、遺言書に記載する文言によっては、相続登記に使用できないケースもあります。
司法書士に遺言書の作成を依頼することで、相続が発生した後の相続登記を含めた相続手続きを想定した内容の遺言書の作成を依頼することができます。
遺言書は作成するだけではなく、相続が発生した後に効果を発揮する書面となりますので、司法書士などの専門家に依頼して作成することをお勧めします。
まとめ
記事を最後までご覧いただき、ありがとうございます。
本記事でお伝えしたかったことは、遺言書の作成は形式的な面が整っているだけではなく、遺言書の内容が相続が発生したときに効果的がどうか大切ということです。
遺言書の文面やフォーマットは、ネット上に掲載されているものもありますが、全ての人にとって最適な内容であるとは限りません。
遺言書の内容によっては、相続人同士の争いの原因になるケースもあります。相続が発生した時にトラブルなく、円滑に手続きを進めたいと希望される方は専門家に相談して作成することをお勧めします。
当事務所でも遺言書の内容を含めた作成のサポートを承っております。
お気軽にお問い合わせ頂ければと思います。
お問い合わせはこちらから(お問い合わせフォーム)
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絶縁状態や縁を切った家族がいるときの相続
記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田でございます。
たとえ親や子、兄弟姉妹であっても家族関係に問題があり、家族と絶縁した方や長い間連絡を絶っている方もおられるのではないでしょうか。
ただ、事実上の絶縁状態にあっても法律上の血縁関係や親族関係にある方は、その家族が亡くなったときに相続人として何らかの手続きが必要になることがあります。
そこで、本記事では縁を切った家族がいる方の相続手続きや相続に備えるための対策方法をご紹介いたします。
「家族と縁を切る」ための法律上の制度はない
家族間に何らかの問題を抱えており、縁を切りたいと思ったとしても家族、親族と縁を切るための法律上の制度は存在しません。
親族間の縺れにより親子間や兄弟姉妹間でお互い連絡を絶ち、音信普通になっているケースはたくさんあります。
ただ、縁を切ったとしてもお互いに血縁関係や親族関係にある方は、親子や兄弟姉妹といった家族関係を消滅させることはできません。
もっとも自分の子だと思っていたら実は、血の繋がっていなかった子や養子縁組をした親子間であれば、裁判所を介した手続きにより、家族関係を消滅させることはできます。ですが、血の繋がった家族間である場合は、法律上の手続きでは家族の縁を切ることはできません。
縁を切っても相続権は無くならない
お互いに縁を切り、長い間連絡を取っていない場合でも親や兄弟姉妹など、ご家族が亡くなったときに、法定相続人に該当するのであれば、相続人として何らかの手続きを行う必要があります。
法定相続人とは
亡くなった人の家族・親族であれば誰でも相続人になれるわけではありません。相続人になれる人は、順位(順番)があり法律に規定されています(民法第887条~第890条)。
以下は、法定相続人の順位になります。
- 第1順位・・・子など(直系卑属)
- 第2順位・・・親など(直系尊属)
- 第3順位・・・兄弟姉妹
※亡くなった人の配偶者は、常に相続人となります。
縁を切った家族が亡くなり、自身が相続人になった
家族や親族が亡くなったときに、自身が法定相続人に該当するのであれば、亡くなった人の財産を相続することになります。
もっとも必ずしも亡くなった家族の財産を相続することを強制されるわけではありません。
亡くなった方が生前に借金をしていた可能性もあります。
お互いに連絡を絶っている場合、生前の生活状況なども分からず、亡くなった人にどのような財産が残っているか判明しないこともあります。
そして、相続人として財産を相続したくない場合は、「相続放棄」することができます。ただ、相続放棄はその意思を示すだけではなく、家庭裁判所に申立てをする必要があります。
また、相続放棄には期限があることにも注意しなければなりません。
相続放棄は、自身が相続人であることを自覚(知った)時から3か月以内に家庭裁判所へ申立てしなければなりません。
ただし、一度相続放棄をしてしまうと亡くなった人の不動産や現金なども相続できなくなります。
縁を切った家族の財産を相続したくない、もしくは関わりたくないと初めからお考えの方は、速やかに相続放棄の手続きを行うことをお勧めします。
詳しくは「相続放棄とは」もご覧ください。
相続人の中に、縁を切った家族や親族がいる
家族が亡くなったときに、縁を切った家族や親族と共に相続人になることがあります。
代表的な例としては、親が亡くなり、子が複数いる場合でその子同士(兄弟姉妹間)が絶縁状態であったり、不仲であるときです。
絶縁して長年連絡を絶っている兄弟姉妹であっても、親が亡くなったときは、お互いに相続人として共同して手続きを進める必要があります。
ここで注意が必要なのが遺産の分け方について話し合う「遺産分割協議」です。
詳しくは「遺産分割協議書の作成について」もご覧ください。
遺産分割協議は、相続人全員が参加する必要があり、長年顔を合せていない兄弟姉妹であってもお互いに話し合って遺産の分け方を決める必要があります。
もっとも直接顔を合わせて話し合う必要はありません。電話やメール、手紙などで連絡をして遺産の分け方を決めることもできます。
なお、必ずしも遺産の分け方を決める必要はなく、法律に定められた相続分どおりに、各相続人が財産を相続することもできます。ただ、実際の相続手続きでは、各種書類へ相続人全員の署名・押印が必要になり、相続人間で協力し合いながら手続きを進めることになります。
お互いに関係を断ってから長く経過しており、争うことなく穏便に手続きを進めたい方やメールや電話を含めて直接連絡を取ることも避けたい方は 司法書士に相続手続きを一括して依頼することもできます。
また、当初から財産を相続する意思がない方や相続手続きに関わりたくない方は、前述した「相続放棄」を選択することもできます。
相続放棄することで、初めから相続人ではないと取り扱われますので、遺産分割協議を含めた相続手続きに関わる必要もなくなります。
家族間で問題を抱えている方の生前対策
家族間で絶縁状態にある方や相続が発生したときに争いが起きそうな方など、何らかの問題を抱えているご家庭では、相続が発生したときに備えてあらかじめ対策しておくことが重要です。
将来の遺産分割で揉めないよう遺言書を作成しておく
親族や家族間が不仲であったり絶縁状態のときに、将来トラブルになる可能性が高いのが前述した遺産分割の場面です。
相続人同士が不仲・絶縁状態だと、お互いの連絡先も分からず話し合いが出来なかったり、連絡先が判明したとしてもお互いに遺産の分配について話し合いがまとまらないことがよくあります。
また、親子間で不仲の場合は、特定の相続人(子)になるべく多くの財産を残したいとお考えの方もいるのではないでしょうか。
そういった将来発生する相続に備える対策としてお勧めなのが、「遺言書」です。
遺言書とは、自身が亡くなった後の財産の承継先をあらかじめ指定しておく証明書のことです。遺言書を作成することで、相続が発生した後の遺産分割が不要になります。
遺言書と聞くと、何かと身構えがちですが現時点で家族間に問題を抱えている方は、相続トラブルを予防するための保険として遺言書を作成することをお勧めします。
遺言書を作成する際に注意したいのが、特定の相続人に偏って財産を相続させる内容の場合、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があるということです。
遺留分とは、一定の相続人に保証された最低限の相続分のことです。この遺留分は遺言書の内容に優先します。例えば、自身には子である長男と次男の2名いるとします。そして、遺言書により自身が亡くなった後、全ての遺産を次男に相続させるとしても長男は次男に対して自身の遺留分に相当する金銭の支払いを請求できます。
つまり、遺言書を作成したとしても、それが原因で相続トラブルになることがあるということです。特定の相続人に財産を相続させたいと望んでいるとしても他の相続人が有する遺留分を侵害していないか遺言書を作成する際には慎重に検討する必要があります。
※遺留分について詳しくは、「遺留分とは」をご覧ください。
遺産を分けやすくするために、現金を残すようにする
遺産分割で揉めやすいのが、相続人の中で、「誰が」「どの遺産(財産)」を「どのぐらい相続」するかです。残された遺産が現金であれば、各相続人の相続分に応じて公平な遺産の分配が可能になるかもしれません。ただ、遺産の中に不動産が含まれている場合は、注意が必要になります。
不動産の相続は、不動産自体を物理的に分割して各相続人に分配することはできません。したがって、不動産の所有権という権利を相続人間で分け合うことになります。もっとも不動産の所有権を各相続人の相続分に応じて、相続することはもちろん可能です。つまり、不動産を共同で所有するということです。
ただし、不動産の共有は慎重になる必要があります。例えば、不動産を複数の相続人で共同で相続した後に、不動産を売却する場合は相続人全員の合意が必要になります。ただ、相続人間で仲が良くなかったり、絶縁状態にある場合は、売却するための意見がまとまらない可能性が高く、そのまま放置されてしまうケースも多くあります。
また、遺言書により特定の相続人が不動産を相続するとしても他の相続人から「遺留分」を請求されてしまうと現金で支払う必要があるため、不動産を取得した相続人は遺留分に相当する費用を用意しなければなりません。不動産を売却することで現金は用意できますが、その相続人が居住している不動産であれば、売却することも難しいかもしれません。
相続に備えて、相続人間で遺産の分け方で揉めないよう不動産以外にも現金を遺産として残すなどの準備や生命保険などを活用した対策をすることも必要になります。
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
現在、家族間で絶縁状態にある方や家族同士の仲が良くないご家庭の場合、相続が発生した際にトラブルになる可能性があります。
また、家族間が良好であっても相続をきっかけに揉めてしまうご家庭も存在します。
揉める原因の多くは、遺産を相続する割合ではなく、お互いの感情的な部分で対立していることが多い印象にあります。
家族間で対立している原因が感情的な部分であれば解決することは難しいかもしれません。もっとも相続が発生したときに揉めないよう遺言書を作成する等して法律上の紛争を予防するための対策はできます。
家族間の仲が良くなかったり、相続が発生したときにトラブルになる可能性のある方は、どういった対策が必要なのか、今の内から司法書士などの専門家に相談してみてください。
当事務所では、遺言書の作成や相続発生後の相続登記、相続放棄などを含めた手続きを一括して代行しております。
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養子は相続人になるのか/養子縁組と相続権の範囲について
記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田武史です。
被相続人(亡くなった方)と養子縁組した養子は、実の子と同じく相続人になります。
被相続人の戸籍を収集してみると、実子の配偶者を養子縁組(婿養子)しているケースもよくあります。
もっとも養子縁組と相続人の範囲については注意が必要な点があります。
本記事では、養子縁組と相続人の範囲について解説いたします。
養子縁組には、2つの制度がある
養子縁組とは、お互いに血縁関係のない他人同士を法律上の親子関係にするための制度になります。
そして、被相続人と養子縁組した養子は、法律上の親子関係にありますので、実の子と同じく相続人としての相続権を持ちます。
もっとも養子縁組の制度には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2つあり、相続が発生したときの取扱いについてもそれぞれ異なる点があります。
まずは、2つの制度について、以下に解説いたします。
普通養子縁組とは
普通養子縁組は、養子と養親がお互いに同意することによって成立する養子縁組のことです。
後述する「特別養子縁組」とは異なり、普通養子縁組は、養子になる子についての年齢制限がなく、成人でも養子となれますし、また養親となる方は独身でもかまいません。また、普通養子縁組をした後も養子となった子とその実親との親子関係は消滅せず、そのまま親子関係が存続することに特徴があります。
したがって、普通養子縁組をした子は、養親や実の親が亡くなったときに、それぞれの親についての子として相続人になれます。
特別養子縁組とは
特別養子縁組は、育児放棄や虐待を受けた子、親がいない子を保護するための制度です。したがって、普通養子縁組と違い、特別養子縁組には厳格な要件が定められており、家庭裁判所へ申立てを行い許可を得る必要があります。
以下は、特別養子縁組の要件になります。
【養親になれる方の要件】
- 養親となれるのは結婚しているご夫婦
※夫婦が共同して養子縁組をする必要があるため - 養親となる親の年齢が25歳以上であること
※ご夫婦のうちお一人が25歳以上であれば、もう一方は20歳以上であれば大丈夫です。
【養子になれる子の要件】
- 原則として養子となる子の年齢が15歳未満であること
※ただし、例外として養子の年齢が15歳以上であっても15歳に達する前から養親となる方に監護されている場合や15歳に達するまでにやむを得ない事由により家庭裁判所に申立てができなかった場合は、例外として特別養子縁組が認められることがあります。
そして、特別養子縁組の特徴としては、特別養子縁組により養子となった子は、実の親との親子関係が消滅する点です。つまり、実の親が亡くなったとき特別養子縁組をした子は、実の親についての相続人にはなれません。
相続においては、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」をした子について、実の親との間で相続権が存続するか消滅するのかが大きな違いとなります。
実の親と養子の相続関係
【普通養子縁組と特別養子縁組の比較表】
普通養子縁組 | 特別養子縁組 | |
実の親と養子の親子関係 | 存続する | 消滅する |
実の親についての相続権 | 養子に相続権あり | 養子に相続権なし |
養子と実子の相続の順位や相続分は同じ
養親が亡くなったときに、実子と養子で相続の順位や相続分に違いはありません。
養子縁組をすることで、養親と養子との間に「法律上の親子関係」が成立するため、養子も実子と扱われて、相続人としての順位は第1順位であり、相続分も同じ割合になります。
実子と比較して養子の順位が下がったり、相続分が減らされることはありません。
例えば、本人(養親)には子(実子)がおり、その子(実子)が結婚をした相手を養子として養子縁組した場合、本人が亡くなったときの実子と養子の相続分は、同じ順位で相続分は各1/2になります。
また、相続人としての遺留分も養子には認められており、遺留分の割合についても実子と異なることはありません。
相続人の相続分について、詳しくは「相続人の調査について」をご覧ください。
相続人の遺留分について、詳しくは「遺留分とは」をご覧ください。
「養子の子」は、代襲相続人になれるのか
養親よりも養子が先に亡くなった場合に、養子の子が養親の代襲相続人になれる場合となれない場合があります。
代襲相続とは
代襲相続とは、亡くなった人(被相続人)の相続人となるべき人が死亡等により、相続できなかった場合に、代わりに「亡相続人の子(代襲相続人)」が相続人になる制度のことです。
例えば、被相続人Aには長男Bと次男Cがおり、長男Bには子X(Aの孫)がいたとします。そして、被相続人Aよりも先に長男Bが亡くなっている場合は、子(孫)Xが長男Bに代わって次男Bと共に相続人になります。
詳しくは、「代襲相続・数次相続(再転相続)の違い」をご覧ください。
そして、養子縁組した「養子の子」は、必ずしも養親の代襲相続人になれるわけではありません。
養親の相続について、養子の子が代襲相続人になれるのかは、養子縁組した時期と養子の子が出生時期によって結論が異なります。
養子縁組「後」に出生した養子の子は代襲相続人になれる
養親と養子が養子縁組した後に、生まれた養子の子は、養親の代襲相続人になれます。
例えば、(養親)Aと(養子)Bが養子縁組をした後に、養子Bが結婚してC(Bの子)が生まれた場合です。このときに、養子Bが亡くなり、次に養親Aが亡くなった場合は、養子の子であるCが養親Aの代襲相続人になれます。
これは養子縁組をすることで養親と養子との間で法律上の親族関係が生まれて、その後に生まれた養子の子についても養親との関係では実の孫と取り扱われるからです。
養子縁組「前」に出生した養子の子は代襲相続人になれない
養親と養子が養子縁組する前に、養子の子が生まれていた場合は、養子の子は養親の代襲相続人になれません。
例えば、(養親)Aと(養子)Bが養子縁組する前に、既に養子Bに子C(養子Bの子)がいる場合です。このときに、養子Bが亡くなり、次に養親Aが亡くなった場合は、養子の子であるCは、養親Aの代襲相続人になれません。
これは、養親と養子の親族関係が生じるのは、養子縁組した日からであり、その養子縁組が成立する前に生まれた子は、養親と親族関係が生じることはなく、養子の子は養親の代襲相続人になれません。
養子は実子の兄弟姉妹の相続人になれるのか
ご自身の両親が家族以外の第三者と養子縁組しており、自身が亡くなったときに、その養子が兄弟姉妹として相続人になるのでしょうか。
例えば、本人Dの兄弟姉妹は、当初は兄Eのみだったのですが、Dの両親がX(養子)と養子縁組したとします。そして、本人Dには、子がおらず、既に両親(祖父母)も亡くなっていた場合に、Dが亡くなったときは、Dの兄弟姉妹が相続人となります。このときに、Dの兄弟姉妹として兄Eと共に養子XがDの相続人に含まれるのでしょうか。
答えは、養子Xも兄Eと共に、Dの兄弟姉妹として相続人になれます。
なぜなら養子縁組は、養子と養親との間で法律上の親子関係が生じるだけではなく、その養親の親族との間においても養子縁組をした日から親族関係が生じるためです。つまり、本人Dの両親がXと養親縁組した日から、DとXの間でも兄弟姉妹という親族関係が生じることになります。
そして、相続分も実子と養子の兄弟姉妹で異なることはありません。上記の例でいうと、相続分はDの兄E1/2、養子の兄弟X1/2となります。(※Dに配偶者もいない場合)
自身の両親のうち片方のみが養子と養子縁組していた場合は、自身が亡くなったときに、両親を同じくする兄弟姉妹と養子とでは相続分が異なることになります。
例えば、本人Dには両親を同じくする兄E以外に、父のみが養子縁組した養子Xがいた場合、養子XはDの半血兄弟とみなされると考えられています。
そして、半血兄弟の相続分は、全血兄弟の1/2になります(民法900条4号)。したがって、上記の例でいうと、Dが亡くなったときに、両親(祖父母)も他界しており、Dの兄弟姉妹が相続人となる場合、兄Eの相続分は2/3、養子Xの相続分は1/3となります。
まとめ
記事を最後までお読み頂き、ありがとうございます。
戸籍を収集していく中で、被相続人やその両親・祖父母が養子縁組していることは少なくありません。
本記事でご説明したとおり、養子縁組した日や子が出生した日などにより、相続権の有無や相続分が異なることになります。
養子が関係する相続手続きは、相続関係が複雑になりやすいこともあります。
相続人の中に養子がいる場合は、司法書士などの専門家に相続手続きを依頼することも検討してみてください。
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相続登記等の相談先を探せる「しほサーチ」が開設
記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田武史です。
令和6年4月1日から施行される「相続登記義務化」に備えて、日本司法書士連合会では相続登記等の手続きが必要な方に向けて身近に相談できる司法書士を検索できるよう「しほサーチ」というサイトを開設いたしました。
以下、サイトを掲載いたしますので、皆様も是非ご活用ください。
「しほサーチ」引用元:日本司法書士連合会「しほサーチ」
今後は、相続に関する記事も掲載するようなので、ご興味がある方は是非ご覧になってみてください。
お子様がいないご夫婦の相続の備え
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。
お子様がいないご夫婦の場合、夫(又は妻)が亡くなったときに、残された配偶者は全ての遺産を取得できるわけではありません。
実は、亡くなった夫(又は妻)に両親や兄弟姉妹が存在する場合は、それらの親族にも遺産を相続する権利があります。
本記事では、お子様がいないご夫婦に向けて、相続が発生したときに起きやすいトラブルや相続に備えた対策方法をご紹介します。
亡くなった人の配偶者だけが相続人ではない
法律上、相続人になれる人には順位が定められています。以下は、相続人の順位になります。
【相続人の順位】民法第900条
①配偶者・・・亡くなった人の夫又は妻
②第1順位・・・亡くなった人の子(孫)
③第2順位・・・亡くなった人の父・母など
④第3順位・・・亡くなった人の兄弟姉妹
上記のとおり、亡くなった人の配偶者は、常に相続人となります。そして、亡くなった人に「子」や「父・母」、「兄弟姉妹」がいると、配偶者は、それらの人と共に相続人となります。
つまり、お子様のいないご夫婦の場合は、配偶者だけが相続人になるわけではなく、亡くなった人に「父・母」や「兄弟姉妹」がいると、配偶者はそれらの親族と共に相続人となります。
したがって、亡くなった人の配偶者が全ての遺産を取得できるとは限りません。
配偶者と親・兄弟姉妹の相続分
各相続人が遺産を相続できる割合についても民法で定められています。
以下は、配偶者と各相続人の相続分になります。
①配偶者と亡くなった夫(又は妻)の両親が相続人となる場合の相続分
- 配偶者:3分の2
- 両 親:3分の1(複数いる場合は、3分の1を⼈数に応じて分配します。)
②配偶者と亡くなった夫(又は妻)の兄弟姉妹が相続人となる場合の相続分
- 配偶者:4分の3
- 兄弟姉妹:4分の1(複数いる場合は、4分の1を⼈数に応じて分配します。)
お子様がいないご夫婦の相続は複雑になりやすい
相続人の数が多数になり、手続きが煩雑になりやすい
亡くなられた人が高齢の場合、その方の両親も既に亡くなっており、配偶者と兄弟姉妹が相続人となるケースがよくあります。ただし、その兄弟姉妹も亡くなっているとその子である甥・姪に相続権が発生するため、ケースによっては最終的な相続人の数が数十名になることも珍しくありません。
相続人の数が多ければ、その分利害関係や権利関係が複雑になり、遺産分割協議がまとまらず裁判所を介した手続きに移行せざるを得なかったり、相続手続き自体が停滞することがあります。
配偶者と親族の関係が悪く遺産分割協議がまとまらない
亡くなった方の両親や兄弟姉妹と配偶者は、お互いに協力し合いながら相続手続きを進めていく必要があります。
代表的な手続きとしては遺産の分け方について話し合う遺産分割協議です。しかし、生前から配偶者と義理の両親や兄弟姉妹との関係が悪い場合、話がまとまらなかったり、お互いに話し合うこと自体を拒絶することもあり、相続が複雑になりやすい原因といえます。
今住んでいるご自宅も不安定な状況に置かれる
相続人間で分ける遺産が預金などの現金であれば、各相続人の相続分に応じた分配が可能になるのでトラブルになりにくいですが、遺産の大部分が不動産の場合は注意が必要になります。
土地や建物のような不動産の場合、不動産自体を物理的に分けるわけにもいかず、特定の相続人が不動産を取得する代わりに他の相続人に代償金として、相続分に応じた金銭を支払うことがあります。
しかし、不動産自体の価値が高額な場合、支払う代償金も数百万円以上になることもあり、代償金を支払うことができない場合は、最終的に不動産を売却して換金したうえで各相続人に分配することにもなりかねません。
そのため、自宅をそのまま配偶者に住んでもらいたいと願っていても相続が発生した場合は、不安定な状況に置かれる事態にもなりかねません。
お子様がいないご夫婦の相続の備え
以下からは、お子様のいないご夫婦に向けて相続に備えた対策方法について、ご紹介していきます。
遺言書を作成して相続手続きを円滑にする
相続に備えた対策として効果を発揮するのが「遺言書」です。
遺言書とは、自身が亡くなった後に、「財産を誰に引き継いでもらうのか」を指定する証明書です。
遺言書に書かれた内容は、先程述べた法律に定めれられた相続人の順位や相続分に優先します。つまり、遺言書で財産の承継先を指定することで、相続人同士の話し合いである遺産分割協議を省略できるため相続トラブルを予防する効果があります。
自身が亡くなった後、残された配偶者に全ての財産を相続してもらいたい方は、遺言書を作成することをお勧めします。
配偶者に財産を贈与する
もう一つの方法が財産を贈与しておくという方法です。いわゆる「生前贈与」と言われるものです。
生前贈与をした財産は、相続が発生したときの遺産分割協議などの話し合いの対象となる財産からも原則除外されます。
ただし、贈与をするときに注意が必要になるポイントが2点あります。
1つ目が贈与税という税金です。
贈与税は、贈与をした年(1月1日から12月31日まで)の1年間に、贈与をした財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた額に課税されます。
もっとも贈与する財産の合計額が110万円以内であれば、贈与税は課税されません。また、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合には、最高2,000万円までを控除(「おしどり贈与」ともいいます。)できるという特例もあります。
婚姻関係にあるご夫婦間であれば、条件に該当することで贈与税の課税なく財産を贈与できることになります。
2つ目は特別受益の持ち戻しです。
「特別受益」とは、一部の相続人が亡くなった人から生前贈与や遺贈により譲り受けた財産のことをいいます。
相続が発生した際に、一部の相続人に「特別受益」があると、その特別受益の価額を相続財産の価額に加えて、各相続人の相続分を再計算します。そして、特別受益を受けた相続人の相続分は、その特別受益を受けた分だけ差し引かれることになります。これを「特別受益の持戻し」といいます。
したがって、配偶者に生前贈与した分だけ、相続が発生した際の配偶者の相続分が減ってしまうことになります。
ただし、民法改正により、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産を遺贈又は贈与したときは、「特別受益の持戻しを免除」する意思表示があったものと推定されることになりました(民法第903条4項)。
つまり、現在居住している自宅を配偶者に贈与したとしても相続が発生した際の相続分が減ることなく本来の相続分で配偶者が遺産を取得することができます。
生命保険の受取人を配偶者にする
生命保険に加入している方は多いかと思います。そして、生命保険の受取人を配偶者にしておくことも相続に備える方法の一つになります。
生命保険金は、被保険者が亡くなったときに保険会社から受取人に支払われます。
この保険金の特徴としては、相続が発生したときの取扱いです。保険会社から支払われる保険金は、亡くなった人の財産(遺産)とはみなされず、受取人として指定された人の固有財産となります。
つまり、他の相続人と遺産分割協議せずに、保険会社から保険金を受け取ることができます。
また、配偶者の方が他の相続人から遺留分を主張されたときに、その支払いに備えるための金銭として受け取った保険金を利用することができます。
加えて生命保険金は相続税の課税対象になりますが、相続税の非課税枠が設けられているので、相続税の節税や納税対策としても利用することができます。
既に、生命保険に加入している方でも受取人が配偶者となっているか確認しておくことが大切です。
- 「⽣命保険(死亡保険⾦)の⼿続き」
- 「遺留分とは」
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
お子様がいないご夫婦でも、配偶者が亡くなったときに、残された配偶者が全ての遺産を相続できるわけではありません。義理の両親、兄弟姉妹が相続人として加わり、配偶者と協力しながら相続手続きを進めていくことになります。
ただし、お互いに友好な関係とまでは言えないが、もともとの関係が疎遠の場合、相続をきっかけに配偶者と義理の両親・兄弟姉妹間で相続トラブルになることがあります。
こういった相続が発生した時のトラブルに備えて、遺言書を作成するなど事前に備えておくことが大切になります。
遺言書の作成を含めて対策方法が分からない方や将来の相続に不安をお持ちの方は、司法書士等の専門家に、一度はご相談してみてはいかがでしょうか。
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遺言書を書こうか悩まれている方へ
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士の山田武史です。
ご家族が亡くなり、相続が発生した場合、遺言書がないと、相続人同士が遺産の分け方について話し合う必要があります。これを「遺産分割協議」といいます。
相続手続きでトラブルになるケースの多くは、この話し合いである遺産分割協議の場面です。
相続人同士の意見が合わず、故人が亡くなる前は家族同士、仲が良かってとしても相続をきっかけにトラブルになることがよくあります。
生前に遺言書を作成しておくことで、遺産の分け方についての話し合いが必要なくなり、相続手続きを円滑に進められるため、相続トラブルを予防する効果があります。
ただ、遺言書を作成したいと思っても、いつ作成すれば良いのか悩まれている方もいらっしゃるかと思います。
もっとも遺言書の作成には、具体的な時期やタイミングはありません。
ただ、あえて言うと、遺言書は作成する本人やご家族が「元気な内から早めに」、作成してください。
なぜかというと、遺言書の作成には判断能力が必要になります。認知症を発症したり、事故に遭って寝たきりの状態になってしまうと遺言書を作成することが出来なくなる可能性があります。
遺言書を作成しようか悩まれている方は、今が作成するタイミングだと思ってください。
また、ご自身は遺言書を作成すべきケースなのか悩まれている方は、下記のページをご参考にしてみてください。
参考ページ:遺⾔書を作成しなくてはいけない理由
遺言書の作成方法やどのような内容が良いのか悩まれている方は、お近くの司法書士や弁護士事務所にご相談してみてください。
弊社でも遺言内容のご相談から作成が完了するまでをサポートさせて頂いております。
お気軽にご相談頂ければと思います。
司法書士 山田武史
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面識のない相続人に連絡する方法と注意点
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。
前回の記事では、「面識のない相続人から相続に関する手紙が届いたときの対応方法」について、ご紹介しました。
今回は、反対に面識のない相続人や長年疎遠になっている相続人へ相続手続きに関する連絡をするときの方法と注意点をご紹介します。
面識のない相続人に連絡する方法
面識がない相続人や長年疎遠になっている相続人は、お互いに連絡先をしらないことが通常です。
そういった場合は、以下の方法で相手先の連絡先を調べることになります。
戸籍の附票を取得する
ご家族が亡くなると、普段連絡を取り合っている親族同士でしたら電話やメールなどで訃報を知らせることができます。しかし、面識がない場合や長年疎遠になっている親族(相続人)同士の場合は、お互いに連絡先を把握していないため、訃報を知らせることができません。
また、ご自身の親族の中に、相手方の相続人に近い親族に連絡を取り、相手の連絡先が分かれば良いのですが、多くのケースでは、近い親族の連絡先も知らないことがあります。
こういった場合は、まず相手の「住所」を調べることから始めます。
相続手続きでは、相続人調査の過程で相続人全員の戸籍を収集しますが、その際に「戸籍の附票(こせきのふひょう)」を取得することで、各相続人の住所を確認することができます。
戸籍の附票とは、その相続人が本籍を置いている市区町村で管理されている住所の移転履歴が記載された証明書のことです。
まずは、被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集して、相続人全員の現在の本籍地を把握し、戸籍の附票を取得することで、相手先の現在の居所を特定することから始めます。
相手先の住所が判明したら手紙を送ってみる
相手先である相続人の住所が判明したら、相続手続きに協力してもらうために手紙を書いて送るようにしましょう。住所が判明したからといって、いきなり自宅を訪ねることはお勧めできません。
特にお互い面識のない相続人同士では、いきなり自宅に訪ねてしまうと相手も不安になったり、警戒してしまうこともあり、その後の手続きにも悪い影響が及ぶ可能性があります。
突然、訪ねることは避けて、手紙を送ることから始めてみます。
手紙の内容には注意が必要
相手方に送る手紙の内容は、慎重に検討する必要があります。
特に、気を付けないといけないのは、手続きを急ぐあまり、初めから「遺産分割協議書」を送って、実印の押印や印鑑証明書を求めたりすると、相手方に不信感や警戒心を抱かせることがあり、その後の手続きが滞ってしまったり、争いの原因になるなどトラブルに発展することがあります。
手紙に記載する内容については、受け取る相手方の心情に配慮して、相続手続きに協力してもらえるよう慎重に検討する必要があります。
手紙に記載する内容
相手方の相続人に送る手紙の内容は、以下の事項を基本に記載するようにします。
※ただし、事案に応じて記載する内容が異なることもあります。
相続人であることを伝える
手紙の差出人であるご自身の身分を明らかにするために、ご自身の氏名と被相続人との続柄を記載して、差出人が相続人であることを知らせます。
また、相手方も相続人であることを知ってもらうために、その旨記載することや、参考として「相続関係説明図」などを手紙と一緒に同封することでより明確になります。
手紙を出した経緯を記載する
故人(被相続人)が亡くなった日や、相続人の調査を進めていく中で、相手方の住所が判明したことなどを記載します。また、今後の相続手続きを進めるには、相手方の協力が必要になることなど、手紙を出した経緯について記載します。
自身の連絡先を記載する
相手先から連絡をもらえるよう、差出人であるご自身の電話番号やメールアドレスを記載して、連絡をもらえるようにしましょう。
困ったときは専門家を頼ってみる
本記事では、面識のない相続人や疎遠になっている相続人と連絡を取る方法をご紹介しました。
どのような内容の手紙を書いたら良いか迷っている方は、手紙の書き方や内容を含めて司法書士や弁護士などの専門家のサポートを受けることをお勧めします。
特に面識のない相続人に送付する手紙の文面は、相手方に不安や不快感を与える内容になっていないか、相続手続きに協力してもらえるよう慎重に検討する必要があります。
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面識のない相続人から相続に関する手紙が届いたときの対応方法
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。
ある日、面識のない遠縁の相続人や司法書士事務所から相続に関する手紙が届くことがあります。
突然、送られてきた手紙に驚かれて、どのように対応してよいのか、困惑している方もいるかと思います。
本記事では、相続に関する手紙が届いたときの対応について解説いたします。
手紙を受け取った方は相続人であるということ
相続に関する手紙が送られてくるということは、受け取った方は相続人であり、かつ、相続手続きの当事者になります。
多くのケースでは、手紙を送る前に司法書士事務所などの専門家に相続人の調査を依頼して、戸籍上から相続人であることを確認してから手紙をお送るので、誤って手紙を送ることはなく、受け取った方は相続人であることは間違いありません。
したがって、送られてきた手紙の中には、差出人である相続人の連絡先と併せて、司法書士事務所などの専門家の連絡先が記載されていることがあります。
手紙が送られてくる理由
差出人である親族(相続人)が手紙を送る理由とは、相続手続きに協力してもらうためです。
相続手続きの多くは、遺産分割協議など相続人全員の協力のもと手続きを進める必要があるため、たとえ面識がなかったり、疎遠になっている相続人であっても協力を得る必要があります。
手紙を受け取った後の対応について
手紙を受け取った後の対応については、以下の3つが挙げられます。
①相続手続きに協力する旨の連絡をする
手紙の内容から協力しても問題がないと思われるのでしたら、相続手続きに協力する旨の連絡をします。
その後は、差出人である相続人や手続きを担当している司法書士等の専門家から今後の手続きについての案内がきます。
②内容を把握するために連絡する
手紙の内容がよく分からず、不安に感じる方や相続手続きを経験したことがない方は、まずは、手紙の差出人である相続人や手紙に記載されている司法書士等に連絡して、相続財産や手続きの詳細について、電話などで問合せをしてみることをお勧めします。
③関わりたくないときは、「相続放棄」する旨を連絡する
相続手続きに関わりたくない方は、初めから「相続放棄」をする旨を連絡して伝えるようにしましょう。
相続放棄とは、相続人として財産を承継する権利や地位を自ら手放す法律上の手続きのことです。相続放棄をすることで、相続人ではなくなるため、手続きに関わる必要もなくなります。
ただし、相続放棄は、相続の開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。つまり、今回のケースでは手紙を受け取った時から3か月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。
ご自身で相続放棄の手続きを行うことが難しいと感じる方は、手紙に記載されている司法書士に依頼することもできますし、ご自身の判断で、別の司法書士や弁護士などの専門家に依頼することもできます。
相続放棄について、詳しくは「相続放棄とは」をご覧ください
手紙を受け取った後に無視することのリスク
手紙を受け取った後に、返信を無視したり放置することはリスクになることがあります。
3か月以上放置すると「相続放棄」ができなくなる
先程もご説明しましたが、相続放棄をしたい方は、相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
「相続の開始を知った」とは具体的には、手紙を受け取った時から3か月以内に申立てる必要があり、何もせず3か月以上放置してしまうと、もはや相続放棄ができなくなります。
そして、もっともリスクになるのが被相続人(亡くなった方)が借金をしていた場合です。3か月以上何もせず放置すると法律上は、相続することを認めたことになり、被相続人が残した借金を手紙を受け取った相続人自身が返済する義務を負います。
相続放棄をしたい方は、放置せず、なるべく早めに対応することをお勧めします。
裁判所を介した手続きになることもある
相続手続きは、相続人全員が協力しあいながら手続きを進める必要があり、手紙を無視し続ける限り相続手続きを進めることができなくなります。
したがって、手紙の差出人である相続人からすると、連絡が取れない以上、遺産分割協議もできないため、強制的に遺産分割を行う手続きに移行する可能性があります。
その方法というのが「遺産分割調停・審判」になります。遺産分割調停は、家庭裁判所を介して遺産の分け方を決める手続きのことです。
遺産分割調停に移行すると、手紙を受け取った方にも裁判所から呼び出し状が届きます。そして、呼び出しにも応じなければ、遺産分割の審判に移行します。遺産分割審判とは、家庭裁判所が相続人である各当事者の主張を聞き、遺産の分け方を決める方法になります。
家庭裁判所を介せば、最終的には強制的に相続手続きを解決することができます。ただし、通常の相続手続きとは異なり、時間と費用が掛かります。
手紙を無視することは、ご自身を含めた相続人にとってデメリットになることも多く、必ず何らかのアクションを起こすことをお勧めします。
まとめ
記事を最後までご覧いただき、ありがとうございました。
相続人が多数となると、中には面識のない相続人が含まれることがあります。
手紙を受け取った方は内容を確認して、不明な点があれば差出人である相続人か司法書士等の専門家に相談してみて、ご自身はどうしたいのか希望や要望を伝えるようにしましょう。
当事務所では相続手続きに関するご相談を初回は無料で承っております。
今回の記事のような事案でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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遺言書に記載されていない財産の取扱いについて
記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。
故人が遺言書を書かれていたとしても、全ての財産(遺産)について書かれているとは限りません。
遺言書に記載のない財産が後から見つかることもよくあります。
本記事では、遺言書に記載されていない財産の取り扱いについて、解説いたします。
遺言書に記載がない財産は、遺産分割協議が必要
遺言書に書かれている財産は、その内容のとおりに財産を承継することになります。ただし、遺言書に記載がない財産については、相続人全員で遺産分割協議を行い、その財産の承継先を決める必要があります。
例えば、遺言書に、A不動産と預貯金については、相続人である長男にA不動産、次男に預貯金を相続させると記載があるのであれば、その内容のとおりに、各相続人に財産が承継されることになります。
ただし、遺言書に記載がされていないB不動産や預貯金、有価証券が見つかった場合は、遺言書がないものとして相続手続きを進めます。つまり、法定相続分どおりに分け合うか、相続人全員で遺産分割協議を行い、財産の承継先を決める必要があります。
遺言書を作成する際に、作成時に所有している財産だけではなく、将来、遺言者が取得する財産があることを想定して、「本遺言書に記載のない財産は、相続人〇〇〇〇が相続するものとする」など、予備的に記載することがあります。
遺言書に、その記載がある場合は、たとえ遺言書に直接記載がない財産であってもその規定に従って、財産が相続されることになり、遺産分割協議なども行う必要はありません。
反対に、予備的な記載がない場合は、相続人間で遺産分割協議を行うなど、話し合いをして財産を分け合うことになります。
記載漏れがあると相続トラブルの原因になることがある
遺言書を書く主な目的は、相続が発生したときのトラブルを予防するためです。
ただし、遺言書に財産の記載漏れがあると、予防しようとした相続トラブルを回避できなくなります。
そういった事態を避けるためにも、遺言書には、全ての財産を漏れなく記載することや、上述した「本遺言書に記載のない遺産は、相続人◯◯◯◯が相続するものとする」など、予備的に遺言書に記載のない財産の取扱いについても明確にすることで、相続トラブルを予防・回避することができます。
まとめ
遺言書に、財産の記載漏れがあると、その財産については、遺言書がないものとして遺産分割協議など、通常の相続手続きが必要になります。
相続人間で協力し合える関係であれば、問題なく手続きを進められますが、多くのケースではトラブルが発生する可能性が高くなります。
遺言書を作成する際は、財産の漏れなく書くことや予備的な文言を記載するなど、慎重に作成することが必要になります。
遺言書を作成する際は、司法書士、弁護士など専門家に相談・依頼して作成することをお勧めします。
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