Archive for the ‘相続・遺言’ Category

相続手続きは、どの専門家に依頼すべきか

2023-09-15

記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。

相続手続きを依頼できる専門家には、弁護士、司法書士、行政書士、税理士などがいます。

もっとも相続手続きにおいて、各専門家には、「できること」や「できないこと」があるので、ご依頼人が求める手続きに応じて、相談先も異なることになります。

本記事では、各専門家に依頼できる業務や依頼するケースについて、ご説明いたします。

弁護士

弁護士ができる相続手続き

  • 相続人調査
  • 相続財産の調査
  • 遺産分割協議の作成
  • 遺産分割調停、審判手続きの代理
  • 相続放棄、限定承認手続きの代理
  • 遺留分侵害額請求の代理
  • その他相続手続きに附随する手続きの代理

弁護士ができない相続手続き

  • 相続税の申告

弁護士に相続手続きを依頼すべきケース

弁護士は、法律手続き全般を代理することができるので、相続手続きにおいてもほぼ全ての手続きについて対応することができます。

特に、他の士業と異なるのは、弁護士は書類作成だけではなく、相続人同士で争いが生じた場合に、相手方との交渉をすることや各手続きにおいて相続人の代理人として業務を行える点です。

相続人同士の話し合いがまとまらなかったり、遺留分を請求するなど相続人間でトラブルが発生している場合は、弁護士に相続手続きを依頼すべきケースといえます。

司法書士

司法書士ができる相続手続き

  • 相続人調査
  • 相続財産の調査
  • 遺産分割協議の作成
  • 不動産の名義変更の代理(相続登記)
  • 相続放棄、限定承認手続きの書類作成
  • 遺産分割調停、審判手続きの書類作成
  • 預貯金の解約、払戻し手続き
  • 株式、有価証券の相続手続き

司法書士ができない相続手続き

  • 相続人同士の紛争解決
  • 相続税の申告
  • 遺産分割調停、審判手続きの代理
  • 相続放棄、限定承認手続きの代理
  • 自動車の名義変更

司法書士に相続手続きを依頼すべきケース

司法書士は、不動産の名義変更、預貯金の解約・払戻し、株式・有価証券の相続手続きなど、相続手続き全般に対応することができます。

特に、故人から相続する財産に不動産が含まれる場合には、司法書士に相続手続きを依頼することをお勧めします。また、相続人同士で争いが無い事案であれば、相続登記以外の相続手続きを取り扱うこともできます。

行政書士

行政書士ができる相続手続き

  • 相続人調査
  • 相続財産の調査
  • 遺産分割協議の作成
  • 預貯金の解約、払戻し手続き
  • 株式、有価証券の相続手続き
  • 自動車の名義変更

行政書士ができない相続手続き

  • 相続人同士の紛争解決
  • 相続税の申告
  • 不動産の名義変更の代理(相続登記)
  • 相続放棄、限定承認手続きの書類作成及び代理
  • 遺産分割調停、審判手続きの書類作成及び代理

行政書士に相続手続きを依頼すべきケース

行政書士が取扱うことができる相続手続きは、遺産分割協議書の作成や自動車の名義変更等です。

司法書士と異なるのは、行政書士は不動産の名義変更手続(相続登記)や相続放棄など、法務局や裁判所に提出する書類作成はできません。また、司法書士と同様に相続人同士で争いが生じてる事案については、手続きを取り扱うことはできません。

相続人同士で争いがなく、ご自身で相続手続きを進める際に、遺産分割協議書などの書面作成のサポートを受けたい場合は、行政書士に依頼すべきケースとなります。

税理士

税理士ができる相続手続き

  • 相続人の調査
  • 相続財産の調査
  • 相続税の申告、準確定申告
  • 遺産分割協議の作成(相続税が発生する場合)
  • 税務調査の対応
  • 相続税の還付請求

税理士ができない相続手続き

  • 相続人同士の紛争解決
  • 不動産の名義変更の代理(相続登記)
  • 相続放棄、限定承認手続きの書類作成及び代理
  • 遺産分割調停、審判手続きの書類作成及び代理

税理士に相続手続きを依頼すべきケース

税理士は、税に関する専門家です。したがって、相続手続きにおいて、税理士に依頼するケースとしては、相続税が発生する方で相続税の申告が必要な場合です。

もっとも、財産を相続をしたからと言って、必ず相続税が課税されるとも限りません。

相続税が課税される目安としては、基礎控除額「3000万円+(相続人×600万円)」を超える財産を相続する場合です。また、相続税の申告は、故人が亡くなった日の翌日から10か月以内に、所轄の税務署に行う必要があります。

相続税が課税される可能性が有る方は、早めに税理士に相談するようにしてください。

まとめ

記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

本記事では、相続が発生した際に、どの専門家に手続きを依頼すべきか、各専門家が対応できる業務や依頼するケースについて解説いたしました。

ただ、実際の相続手続きには、複数の専門家が関わることも少なくありません。

ご自身が相続人となり、手続きが必要となった場合には、他の専門家と連携して手続きを提案してくれる事務所を選ぶようにしましょう。

当事務所でも事案に応じて、他の専門家と連携して業務に対応しております。

お気軽にご連絡ください。

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山田武史司法書士事務所 
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遺贈寄付の方法と注意点

2023-09-08

記事をご覧いただきありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。

遺贈寄付とは、遺言書によって、財産の全部または一部を相続人以外の人または、地方自治体や特定の法人などに無償で譲渡(寄付)することをいいます。

自身が亡くなった後、特定の団体の活動のために財産を寄付したいとお考えの方は、遺言書を書いて「遺贈寄付」することをお勧めします。

本記事では、「遺贈寄付」をする方法と注意点をご紹介します。

「遺贈寄付」とは?

そもそもの「遺贈」とは、遺言書により、自身が亡くなった後、相続人以外の人に財産の一部または全部を譲り渡すことです。

財産を譲り渡す相手が相続人の場合は「相続」という文言を用いますが、相続人以外の特定の個人や団体、法人に財産を譲り渡す際に用いる文言が「遺贈」になります。

そして、自身が亡くなった後、お世話になった施設、団体や法人等に財産の全部または一部を譲り渡すことを「遺贈寄付」といいます

遺贈寄付をするには、遺言書の作成が必要になる

「遺贈寄付」とは、上述しました遺贈という方法を用いて、財産を譲り渡すことです。そして、「遺贈(寄付)」をするには、必ず遺言書を作成する必要があります。

遺言書を作成していないと、ご自身が亡くなった後、相続人が財産を相続することになり、相続人以外の人には、財産を譲り渡すことができないためです。

遺言書の種類や書き方は、「知っておくべき遺言書の種類」をご覧ください

遺贈寄付の大まかな流れ

専門家に相談する

遺贈寄付には、法律上、注意しなければならない点がいくつか存在します。遺贈寄付をする際は、まずは、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。

寄付先を決める

ご自身の財産を寄付する団体や法人を決めます。寄付先が決まっていない方は、ご自身が支援したい分野などから選定します。

遺言書を作成する

遺贈寄付をするための遺言書を作成します。

遺言書を保管する

遺贈寄付は、遺言書を書いた本人が亡くなった後に手続きが開始します。それまでは遺言書をご自身で保管するか、後程、ご説明する遺言執行者に保管をお願いすることをお勧めします。

相続の開始(遺贈寄付が実行される)

遺言書を書いた本人が亡くなった後に、遺贈寄付が実行されて相手方(寄付先)に財産が遺贈(寄付)されます。

遺贈寄付をする際の6つの注意点

①遺言執行者を必ず指定しておくこと

遺贈寄付のために遺言書を作成する際は、併せて遺言執行者を必ず指定しておきます。遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容のとおりに手続きを実行する人のことです。

遺言執行者の指定が無ければ、相続人が遺贈寄付を実現するための手続きを行います。

ただし、遺贈寄付は、相続人にとって必ずしも利益になる手続きとはいえないため、寄付をするための手続きに協力するとも限りません。

したがって、遺贈寄付を確実に実現したい方は、弁護士や司法書士などの中立的な立場の専門家を遺言執行者に指定しておきましょう。

遺言執行者について、詳しくは「遺⾔執⾏者について」をご覧ください。

②遺留分に配慮する

ご自身が亡くなった後に、相続人となる方がいる場合は、その相続人の遺留分に配慮する必要があります。

遺留分とは、一定の相続人に保証された最低限の相続分のことです。

遺留分を有する相続人は、亡くなった人の配偶者、子、父母です。亡くなった人の兄弟姉妹には遺留分はありません。

そして遺贈寄付をするときは、その相続人が有する遺留分まで寄付しないよう注意しましょう。

仮に相続人の遺留分まで寄付してしまった場合、相続人が寄付先に『遺留分侵害額請求』を行うなど、相続人と寄付先との間でトラブルになる可能性があります。

遺留分を有する相続人がいる方は、遺贈寄付する財産については配分を慎重に検討する必要があります。

遺留分について、詳しくは「遺留分とは」をご覧ください。

③遺贈の方法は「特定遺贈」で寄付をする

遺贈寄付の方法には『包括遺贈』と『特定遺贈』があります。

包括遺贈とは、「財産の2分の1を○○○○法人に遺贈する」といったように、譲り渡す財産を特定することなく、財産を包括的に譲り渡す方法のことです。

ここで注意が必要になるのが、包括遺贈により財産を譲り受ける寄付先は、法律上、相続人と同様の権利義務を負担することになります。

つまり、財産の寄付を受ける団体や法人は、相続人と同様に亡くなった人の借金などを引き継ぐことになります。また、寄付先と相続人との間で遺産の分け方についての話し合いが必要になります。

寄付先は、故人の相続人とトラブルになることは避けたいと考えており、実際に寄付する際にも「特定遺贈」により、寄付することが条件になっています。

したがって、遺贈寄付をする場合は、「金○○○○万円を○○○○法人に遺贈する」といった、寄付する財産を特定して遺贈する「特定遺贈」の方法で遺言書を作成するようにしましょう。

④寄付先によって課税される税金が異なる

寄付先が個人の場合は、相続税が課税される

財産の寄付先が個人の場合は、原則として、財産の寄付を受ける個人に対して相続税が課税されることになります。

ただし、寄付を受ける個人が公益的な事業を行っており、寄付された財産をその事業のために使用するのであれば、相続税が課税されることはありません。

寄付先が法人の場合は、法人税が課税される

財産の寄付先が法人の場合には、原則として財産の寄付を受ける法人に法人税が課税されます。ただし、寄付先が個人の場合と同様に、寄付を受ける法人が公益的な事業を行っている場合は、その法人に対して法人税は課税されません。

寄付を受ける相手先によっては、課税される税金や課税の有無が異なりますので、寄付先には事前に確認をするようにしましょう。

不動産を寄付する場合の注意点

不動産そのものを寄付する場合の注意点

ご自身が亡くなった後、ご自宅などの不動産を相続する方や引き取り手がなく、不動産そのものを寄付しようと考えている方も少なくありません。

そして、不動産の寄付先が法人の場合、その不動産が購入したときよりも価格が値上がりしている場合には、遺贈寄付する本人(故人)に、譲渡所得税が課税されることになります。この譲渡所得税の申告は、遺言書を書いた本人が亡くなった日から4か月以内に税務署に申告(準確定申告)する必要があります。

つまり、亡くなった人に代わって、財産を取得しない相続人が譲渡所得税の納税義務を負担することになりますので、寄付先と相続人との間でトラブルになる可能性があります。

みなし譲渡所得税を誰が負担するのか、どのように手当をすればよいのか専門家に相談しながら遺言書の内容を検討する必要があります。

不動産を売却して現金を遺贈する場合の注意点

不動産を寄付したい場合でも現物のまま受け取ってくれる団体は多くありません。

こういった場合は、不動産を売却した後の現金を寄付することもできます。これを「清算型遺贈」といいます。そして、清算型遺贈の場合、前提として不動産を売却する必要があり、売却することで利益が発生すると「譲渡所得税」が課税されます。

この譲渡所得税は、最終的に売却代金をもらう受遺者が負担すべき税金になりますが、仮に受遺者が納めなければ、所轄の税務署から相続人に納税するよう連絡がいきます。

つまり、遺贈寄付により、実際には財産を受け取っていない相続人が税金を負担することになります。

この場合は、相続人に課税されることになる譲渡所得税などを控除した額を遺贈するなど、相続人と寄付先がトラブルにならないよう遺言書の内容を慎重に検討する必要があります。

寄付先に財産の受け取りが可能か確認する

寄付先に遺贈寄付をする財産の受取りが可能か遺言書を作成する前段階から確認しておきましょう。

寄付先は、財産であれば全てを受け取れるわけではありません。寄付先によっては、寄付を受け入れる財産や条件が異なるため、遺言書を作成する段階から寄付先に受け入れが可能か事前に確認することが必要になります。

まとめ

記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

本記事では、遺贈寄付をする方法と注意点について解説いたしました。

遺贈寄付には、遺言書作成だけではなく、税務面の検討も必要になるため、必ず専門家に相談しながら手続きを進めてください。

当事務所でも、遺贈寄付や遺言書に関するご相談を承っております。

お気軽にお問い合わせください。

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遺言書保管制度の特徴と利用する場合の注意点

2023-08-25

記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。

令和2年7月10日から利用が開始された「遺言書保管制度自筆証書遺言保管制度)」を皆さんは、ご存知でしょうか。

遺言書の作成を検討されている方には、特にお勧めしたい制度でもあります。

本記事では、遺言書保管制度の特徴と利用する場合の注意点をご紹介します。

遺言書保管制度とは、どんな制度なのか

遺言書保管制度は、自筆証書遺言(ご自身の手書きで書いた遺言書)を法務局に預けて、保管してもらうことができる制度です。

なぜ、この制度ができたのかというと、従来の自筆証書遺言には問題点があったからです。

自筆証書遺言は、遺言書を書いた本人が亡くなった後、遺言書そのものが相続人に発見されなかったり、遺言書自体の改ざん・隠匿・破棄がされやすく、亡くなった人の意向を相続人に伝える手段として確実性の問題が指摘されていました。

遺言書保管制度が創設された理由も本人が亡くなった後に自筆証書遺言が発見されなかったり、第三者による遺言書の改ざん、隠匿、破棄などを防ぐためです。

遺言書保管制度の特徴

遺言書が適正に管理される

自筆証書遺言が法務局に保管されるため、遺言書が第三者に改ざん・隠匿・破棄されることはありません。

遺言書の存在を相続人に知らせることができる

遺言書を書いた本人が死亡した事実を法務局が把握すると、相続人等に遺言書が法務局に保管されていることの通知がされます。したがって、遺言書が相続人に発見されないリスクは無くなります。

相続人に送られてくる通知書の種類

  • 指定者通知
    遺言書を書いた本人が死亡した事実を法務局が確認した時に、あらかじめ本人が指定した相続人等に、法務局から遺言書が保管されている旨の通知書が届きます。
    この通知書を「指定者通知」といいます。
  • 関係遺言書保管通知
    遺言書を書いた本人が死亡した後に、一部の相続人が法務局(遺言書保管所)において保管されている遺言書の閲覧をしたり、遺言書情報証明書の交付を受けると、その他の相続人全員に対して遺言書が保管されている旨の通知書が送られます。この通知書を「関係遺言書保管通知」といいます。

【通知書の見本】

引用元:法務省ウェブサイト「自筆証書遺言書保管制度

遺言書の検認手続きが不要になる

本来の「自筆証書遺言」は、遺言書を書いた本人が亡くなった後に、家庭裁判所において検認手続きが必要になります。

検認手続きとは、遺言書の偽造・変造・隠匿・毀滅防止のために、家庭裁判所で遺言書の内容や状態を確認してもらい記録を残すための手続きのことです。

法務局に保管している自筆証書遺言は、この検認手続きが不要になります。

検認について、詳しくは「遺⾔書の検認について」をご覧ください

遺言書保管制度の注意点

遺言書の内容が適切か法務局は保証してくれない

遺言書保管制度を利用するときの注意点として、法務局に遺言書を保管したからといって遺言書に書いた内容が適切であると法務局が保証するわけではありません。

遺言書の内容が適切であるとは、遺言書を書いた人が亡くなった後の相続手続きで使用できる文面であるか、もしくは相続トラブルが起きない内容であるかです。

保管申請の際に法務局では、遺言書の形式や様式についての確認はしますが、遺言書の内容が法的に問題ないかまでは確認しません。

つまり、本人が亡くなった後の相続手続きで使用できない内容の遺言書でも保管されることになります。

遺言書の内容について、ご不安な方や、法的なアドバイスを受けたい方は、弁護士や司法書士などの専門家に遺言書の作成を依頼することも検討してみてください。

保管申請は、本人が直接法務局に出向く必要がある

実際に遺言書を保管するときは、必ず遺言書を書いた本人が窓口まで出向いて手続きする必要があります。なお、ご自身の代わりに子や専門家を代理人として手続きをお願いすることもできません。

遺言書の様式には細かい決まりがある

法務局に保管できる遺言書には、用紙の大きさなどに決まりがあり、その様式に沿って遺言書を作成する必要があります。つまりは、自筆で書いた遺言書であれば全て保管してくれるわけではありません。

遺言書保管制度において求められる様式

  • 用紙はA4サイズのものを使用
  • 用紙に模様や彩色がないこと
  • 上部5㎜、下部10㎜、左20㎜、右5㎜の余白を確保すること
  • 文章は、用紙の片面に記載すること
  • 各ページにページ番号を記載すること
  • 複数ページでもホッチキスなどで綴じないこと

遺言書保管制度を利用する時の流れ

自筆証書遺言を作成する

遺言書保管制度で求められる要式に沿って、遺言書を書く必要があります。

その他の自筆証書遺言の書き方については、「こちら」をご覧ください

保管先の法務局(遺言書保管所)を決める

保管先の法務局は、以下のいずれかの中から選択することができます。

  • 遺言書を書いた人の住所地を管轄する法務局
  • 遺言書を書いた人の本籍地を管轄する法務局
  • 遺言書を書いた人が所有する不動産の所在地を管轄する法務局
    詳細は、「管轄/遺言書保管所一覧」をご覧ください(引用元:法務省ウェブサイト)
遺言書の保管申請書を作成する

遺言書の保管申請書(PDF)記載例(PDF)(引用元:法務省ウェブサイト)

保管申請の予約をする

予約方法については、こちら(法務省ウェブサイト)をご覧ください

保管の申請をする

必要書類及び費用

  • 自筆証書遺言書
  • 保管申請書
  • 遺言書を書いた人の住民票(筆頭者及び本籍地の記載入り)
  • 遺言書を書いた人の顔写真付きの身分証明書(運転免許証やマイナンバーカード)
  • 手数料3,900円(遺言書1通)
保管証を受け取る

まとめ

記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

遺言書保管制度は、自筆証書遺言のデメリットを補完する制度になります。

遺言内容を確実に実現されたい方は、自筆証書遺言の作成と一緒に遺言書保管制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

当事務所では、遺言書の文案や保管申請の手続きサポートを承っております。

お気軽にお問合せください。

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行方不明の相続人がいる相続手続きの進め方

2023-08-18

記事をご覧いただき、有難うございます。港区の司法書士の山田武史です。

一部の相続人と連絡が取れず、所在も分からない場合は、そのままでは相続手続きを進めることができません。

この記事では、行方不明の相続人がいる場合の相続手続きの進め方について解説いたします。

 行方不明の相続人を特定する方法

①行方不明者の住所を特定することから始める

住所や連絡先が分からない相続人がいる場合は、まず、その相続人の住所を調べることから始めます。住所を調べるには、その相続人の戸籍謄本を取得し、戸籍に書かれている本籍地で「戸籍の附票(こせきのふひょう)」を取得します。戸籍の附票には、その本籍地で戸籍が作られてから現在までの住所移転の履歴が記載されています。

そして、戸籍の附票に記載されている最新の住所地宛にお手紙を送ります。お手紙の内容としては、相続が発生したことや、相続人であることを理解してもらうために、相続関係を示した図などを同封し、相続手続きに協力してもらいたい旨を記載します。また、折り返しの連絡がもらえるよう、送り主であるご自身の連絡先を明記しておくことも必要になります。

ここで、ご注意頂きたいのが遺産分割協議書をいきなり送ってしまうと、相手の気分を害したり、不安にさせてしまうこともあり、手続きに協力してもらえないだけはなく、トラブルに発展する可能性もあります。お送りする書類や内容については慎重になる必要があります。

海外に転出している記録があるとき

戸籍の附票に海外へ転出している記録がある場合は、日本国内に居住していない可能性があります。その場合は、海外に住んでいる相続人の親族や共通の知人に連絡先を聞いてみるか、外務省に「所在調査」を依頼する方法があります。

所在調査とは、海外に居住しているが、その所在が確認されていない日本人の連絡先等を外務省が調査するサービスのことです。

ただし、調査依頼ができるのは、その本人の3親等内の親族に限られ、また、所在が判明しても所在地を開示することに、その海外に居住している本人から同意を得られなければ開示されません。

引用元:外務省ウェブサイト「所在調査

② 連絡しても返信がないとき

住所や電話番号が判明していてもお手紙を返信してもらず、連絡も来ない場合は、何らかの理由で無視している可能性があります。

こういった場合は、家庭裁判所を介して話し合いの機会を設ける方法があります。この方法を「遺産分割調停」といいます。

家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てると相手方に呼び出し状が送達され、裁判官と調停委員が相続人全員から事情を聴き取り、遺産の分け方について話し合いによる解決を図ります。仮に、話し合いがまとまらなかったり、相手方の相続人が調停手続に協力しなかった場合には、審判手続きに移行されて、裁判官が遺産の分け方について審判を下します。

もっとも遺産分割調停は裁判所を介した手続きであるため時間や費用もかかります。遺産分割調停は最後の手段として、調停を申し立てる前に粘り強く連絡を試みるようにしましょう。

③相続人の所在が全く分からず、連絡を取る手段がない

行方不明の相続人が住民票や戸籍の附票に記載されている住所には実際に住んでいなかったり、その住所地に居住していた形跡はあるが帰ってくる見込みがなく、連絡を取る手段もない場合の対応方法は、以下に記載する2つの方法です。

不在者財産管理人を選任してもらう

一部の相続人の所在や連絡先が分からず、行方不明である場合は、家庭裁判所に申立てをして「不在者財産管理人」を選任してもらいます。

家庭裁判所は、提出された申立書や資料を確認して、申立人や行方不明になっている相続人の親族から事情を聴取し、不在者財産管理人を選任することが相当であると判断した場合に、不在者財産管理人を選任します。

不在者財産管理人は、行方不明になっている相続人自身の財産を管理したり、家庭裁判所から許可を得たうえで、その行方不明の相続人に代わって遺産分割協議や相続手続きを行うことができます。

行方不明になった経緯や期間によっては、「失踪宣告」を申し立てる

失踪宣告とは、生死不明になってから一定の期間が経過している人については、家庭裁判所の審判によって法律上死亡したものとみなす制度です。

失踪宣告には、その人が行方不明となった経緯や期間に応じて、「普通失踪」「特別失踪」の2種類があります。

普通失踪

普通失踪とは、家出などにより、ある日突然連絡が途絶えてから生死不明の状態が7年経過している場合に、家庭裁判所に申立てることで、その7年が経過した日に死亡したものとみなされる制度のことです。

特別失踪

特別失踪とは、震災や災害、事故により生死不明となって1年経過している場合、家庭裁判所に申立てることで、その震災や災害、事故にあった時に死亡したものとみなす制度のことです。

相続手続きでは、行方不明の相続人について失踪宣告されると、その相続人(行方不明者)を死亡したものとして遺産分割協議を含めた相続手続きを行います。また、死亡したものとみなされた相続人(行方不明者)に配偶者や子などが存在する場合は、遺産分割協議などの相続手続きに加わってもらい手続きを進めることになります。

相続発生したときに困らないよう対策しましょう

ここまでご説明したとおり、相続人の中に行方不明者がいる場合は、「不在者財産管理人の選任」や「失踪宣告」など、家庭裁判所を介した手続きが必要になります。もっとも実際に全ての手続きが完了するまでには、相当の時間や費用がかかり、残された他の相続人にとっては大変な負担になることがあります。

自身の相続人になる人の中に行方不明や音信不通の方がいる場合は、将来、相続が発生したときに備えて、今の内から「遺言書」を作成して対策することを強くお勧めします。

遺言書とは

遺言書とは、財産を所有している本人が自身が亡くなった後の財産の承継先を指定する法的な文書のことです。

例えば、行方不明者以外の人に財産を相続させる旨の遺言書を作成しておくことで、相続が発生した後は、その遺言書のとおりに手続きを進められるため、不在者財産管理人選任や失踪宣告の申立てを行うことなく、不動産の名義変更や預貯金の相続手続を円滑に進めることができます。

今現在、ご家族(推定相続人)の中に行方不明者がいる方にとっては、相続トラブルの予防になります。

詳しくは、「遺⾔書を作成しなくてはいけない理由」をご覧ください。

まとめ

記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ここでは、行方不明の相続人がいる相続手続きについてご説明しました。

行方不明といっても住所や連絡先が分からないだけなのか、全く連絡が取れず行方不明なのか、経緯や背景など様々なケースがあります。

また、現在、ご家族の中に行方不明者の方がいる場合は、今の内から遺言書を作成するなど対策しておくことも重要になります。

対応方法や対策に困ったときは弁護士や司法書士などの専門家に、一度は相談してみてください。

当事務所では、初回の相談は無料で承っております。

お気軽にお問い合わせください。

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ある日、突然届く「法務局からのお知らせ」

2023-06-12

記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。

突然ですが、皆さんは、法務局から下記の通知(お知らせ)を受け取ったご経験はあるでしょうか。

【通知書のサンプル】※画像をクリックすると拡大表示されます。

引用元:東京法務局「長期間にわたり相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)について

通知書を受け取った方の中には、驚かれたり、詐欺を装った文書だと疑って無視している方もいるのではないでしょうか。

先に結論を申し上げると、この通知書を受け取った方は、土地を相続する相続人です。

本記事では、この通知書が何のために送られてきたのか、受け取った後にどのような対応が必要なのか解説いたします。

何のために送られてくるのか

この通知書は、詐欺を装った怪しい文書ではありません。

この通知書は、相続登記の申請を促すために、法務局から不動産の亡所有者の相続人に対して送られるお知らせ(通知書)になります。

つまり、この通知書を受け取った方は、土地の所有権を相続する相続人であるため相続登記の手続きを行うことになります。

なお、法務局がこの通知書を介して金銭の振込みを依頼したり、要求することは一切ありません。※金銭の振込みや支払いを要求する内容の場合は、詐欺の可能性がありますのでご注意ください。

【法務局は、どうやって相続人を把握したのか】

平成30年に施行された「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」により、現在は、所有者が亡くなった後、相続登記を一定期間放置している土地については、法務局が独自に戸籍を調査し、調査により判明した相続人に対して、相続登記を促すための通知書を発送する取り扱いになっています。

通知書を受け取った後に、確認すべきこと

他に相続人がいないか確認する

通知書を受け取った方は、まず、ご自身以外にも相続人がいないか確認します。

法務局が調査した結果、土地を相続する相続人が複数名いることが判明した場合は、任意で選択した相続人1名に通知書が送られます。したがって、通知書を受け取った方以外にも相続人がいないか確認します。

「法定相続人情報」を取得する

他に相続人がいないか確認するために、「法定相続人情報」を取得します。

法定相続人情報とは、法務局が相続人を調査した結果をまとめた家系図のようなものです。なお、法定相続人情報の取得には、通知書に記載されている「法定相続人情報の作成番号」が必要になります。通知書は、破棄せずに保管してください。

法定相続人情報の取得方法は、以下のとおりです。

【法定相続人情報の取得方法】

①請求先:全国の法務局(最寄りの法務局窓口で取得できます。

②必要書類 

  • 所定の依頼書【Word形式】/【PDF形式
    引用元:法務省ウェブサイト
  • 相続人の本人確認書類(例 運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 委任状(相続人に代わって代理人が請求する場合)
  • 代理人の本人確認書類

③請求方法:法務局の窓口又は郵送も可

④取得手数料は無料

土地の登記簿謄本を取得する

相続人の確認と併せて、相続登記の対象となる土地の登記簿謄本を取得します。

取得対象の土地は、通知書の「不動産番号及び不動産所在事項」欄に記載されています。

※土地の登記簿謄本は、土地の所在地に関わらず、最寄りの法務局で取得できます。

土地の登記簿謄本には、以下の記載がされています。

記載例①相続人全員の特定が完了している場合

記載例②相続人の一部が判明しない場合

引用元:所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法等の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(平成30年11月15日付け法務省民二第612号民事局長通達) (PDF形式 : 104KB)

確認した後に、相続人が行う手続き

相続登記を申請する

土地を相続する相続人と相続登記の対象になる土地を確認した後は、相続登記を申請することになります。

相続登記の大まかな流れは以下のとおりです。

法務局で「法定相続人情報」と「土地の登記簿謄本」を取得する

相続人全員と連絡を取り、不動産を相続する人を決める

必要書類を用意する

※相続人等の戸籍謄本を集める必要はありません。

相続登記を申請する

詳しくは、「不動産の名義変更(相続登記)」をご覧ください。

※ご自身で手続きすることが難しいと感じた方は、当事務所又はお近くの司法書士事務所にご相談ください。

相続登記以外の方法

相続登記を申請する以外の方法としては、「相続放棄」をすることも検討します。

相続放棄とは、相続人としての権利や地位を手放すための手続きのことです。

相続放棄をすることで、土地を相続することも無くなるので相続登記の申請に関わる必要がなくなります。ただし、相続放棄には3か月という期限や要件がありますので、司法書士などの専門家に一度相談することをお勧めします。

詳しくは、「相続放棄とは」をご覧ください。

既に「相続放棄をされている方」

既に相続放棄している方でも通知書が届いたり、法務局が作成した法定相続人情報に記載されることになります。

というのも既に相続放棄をしていたとしても法務局がその事実を把握することはできません。したがって、既に相続放棄している方は、法務局に連絡してその旨を伝えるようにしましょう。

通知書を受け取った方に、知って頂きたいこと

「通知書」を受け取ったとしても相続登記の申請が強制されるわけではありません。また、現時点(令和5年6月時点)では、何もせず放置していたとしても罰則はありません。

ただし、令和6年4月1日からは「相続登記が義務」になり、義務化された後も同様に通知書が届くことになります。ただし、義務化された後の通知の意味は、少し異なります。

つまり、義務になるということは、その義務を怠り放置してしまうと罰則があるということです。具体的には、通知を受け取った後に、一定期間放置してしまうと10万円以下の過料が科されることになります。

この通知書を受け取った方は、今の内から相続登記を終わらせることを強くお勧めします。

当事務所が相続登記の手続きを一括してサポートします。

当事務所では、相続登記に関するご相談・ご依頼を承っております。

当事務所は、相続登記のオンライン申請(電子申請)に対応しております。

相続した不動産が遠方にある場合や地方にお住いの方でも電話やZOOMなどを利用してお打ち合わせさせて頂き、相続登記の手続きを当事務所が代行して手続きいたします。

最近では、相続登記の義務化に備えて、相続登記を完了させたいとお客様からご相談やご依頼を頂く機会が増えてきております。

あなた自身が通知書を受け取られて、相続登記の手続きに不安を感じるときは、当事務所までお気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら(お問い合わせフォーム)

山田武史司法書士事務所 
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相続登記が放置される理由と対策

2023-05-31

記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田武史です。

前回から引続き、相続登記の義務化に関連する記事になります。

以前の記事では、相続登記が義務化される前に知っておきたいポイントや今の内から確認することをご紹介しました。

今回は、現在不動産を所有されている方に向けて、相続登記の義務化に備えた対策方法をご紹介します。

相続登記の放置には理由がある

そもそも相続人が相続登記を放置する理由は何でしょうか?

「相続」という手続きに関わったご経験のある方や不動産を相続した方であれば、何となく想像ができるかもしれません。

対策方法を検討する前に、相続登記が放置されてしまう理由を今一度確認してみましょう。

相続人が相続登記をしない、できない理由

不動産を相続しても相続人が利用する予定がない

相続人の中には、自宅を所有されている方も多く、また、離れて生活している家族にとっては、地方や遠方にある実家を相続しても利用する予定がないため、不動産を相続しても管理や処分することが負担になり、相続登記せずに放置してしまうことがあります。

利用や処分ができない不動産に費用や手間を掛けたくない

実際のところ相続した不動産が経済的な価値が高い場合や市場からみて需要のある不動産であれば、売却することができるため最終的には相続登記がされます。

ただし、相続する不動産の中には、利用する予定もなく売却を含めた処分ができない不動産も存在します。そういった不動産を相続するとしても費用や手間をかけてまで相続登記しようと思う方は多くありません。

相続する不動産を把握してなかった

相続人が相続する不動産を把握できないことがあります。先祖代々引き継いできた地方にある土地などは、ご家族が調査しても判明しないことがあります。

また、亡くなったご本人も把握していない不動産が存在することがあります。例えば、故人が遺言書を書いていたところ、意図せず一部の不動産について記載漏れがあることも珍しくありません。

故人や相続人が把握していない不動産は、その不動産の名義人が何世代も前の方であることが多く、相続登記しようにも戸籍の収集に手間や費用が掛かってしまい、そのまま放置してしまうことがあります。

相続人同士の話し合いがまとまらない

相続登記できない代表的な例として、相続人同士の話し合いがまとまらず不動産を相続する人を決められないまま、相続登記が放置されてしまうことです。話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所を介した遺産分割調停や審判により、不動産を相続する人を決めることもできます。ただし、解決するまでに時間や費用もかかるため、そこまでして相続登記しようと思わない方もいます。

一部の相続人と連絡が取れず、手続きができない

相続人の人数に関わらず、一部の相続人と連絡が取れないことがあります。不思議に思われる方もいますが、実際にそういった事例はあります。例えば、一部の相続人の連絡先が分からず、戸籍や住民票を取得しても実際には、その住所地に居住していないなど、現在のお住いや所在が判明しないケースです。

そういった場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任してもらい、所在が分からない相続人に代わって、遺産分割などの相続手続きや相続登記の申請人として関与してもらうことになります。

ただ、不在者財産管理人の選任には時間と費用が掛かるため、裁判所の手続きを含めて手続きをせずに放置されてしまうことがあります。

今後は、どういった対策が必要になるのか

ここからは、不動産を所有されている人や将来不動産を相続する人に向けて、相続登記を円滑に進める方法や相続登記が放置されないための対策方法をご紹介します。

対策方法①ご家族で話し合って対策する機会を設ける

相続登記が放置される理由の大部分は、相続人が不動産を相続しても利用する予定がなく、管理や処分に困るためです。

そういったことを理由に相続登記を放置されないために、将来不動産を相続する家族がどういった考えを持っているのか、今の内から家族間で話し合うことが大切です。

また、相続の話題を親である本人に話しづらい場合は、「相続登記の義務化」や「所有者不明土地問題」など、世間の話題をきっかけに対策することについて、親がどんな考えを持っているのか聞いてみるのも良いでしょう。また、当事務所を含めた専門士業のホームページやコラムなどを紹介してみることもお勧めです。

対策方法②相続登記を円滑に進めるために、「遺言書」を作成する

相続登記を含めた相続手続きを進めるうえで、もっとも問題になりやすいのが遺産分割協議です。遺産分割協議とは、遺産の分け方について相続人全員で話し合うことです。

遺産分割協議が複雑化して時間が掛かるケースは以下のとおりです。

遺産分割協議が複雑化して時間が掛かるケース
  • 遺産の分け方について相続人同士の意見がまとまらない
  • 相続人の中に認知症を発症もしくは、判断能力に疑いのある方がいる
  • 一部の相続人と連絡が取れず、所在も分からない

上記のいずれかに該当する場合は、家庭裁判所を介した手続きが必要になり、当事者である相続人が想定しているよりも手続きに手間や費用、時間がかかります。

遺言書を作成して、あらかじめ財産の承継先を指定することで、相続人同士で遺産分割協議を行う必要がなくなり、相続登記を含めた相続手続きを円滑に進めることができます。

現代の相続トラブルは、相続人同士の争いだけではなく、高齢化社会における特有の問題が存在します。遺言書を作成することは、相続登記を円滑に進められるだけではなく、相続トラブルを予防する方法として非常に効果的です。

相続登記の義務化に備えるためにも遺言書を作成することをお勧めします。

対策方法③あらかじめ不動産を売却して現金化する

相続登記の義務化に備える対策として、最もシンプルな対策方法は、将来相続人が取得(相続)する財産に不動産がないことです。相続する不動産が無ければ相続登記も必要ありません。

また、相続人が複数人になる場合は、不動産そのものを共同で相続するよりも現金で分け合った方が相続人同士のトラブル予防になります。不動産を共同で所有することは、リスクになることが多く、相続する不動産に相続人が居住もしくは利用する予定もなければ、現金を相続する方が相続人にとっても適切なことがあります。

現在、複数の不動産を所有されている方は、今の内からご家族で話し合っていただき、不動産を処分・整理することも方法の一つとして検討してみてください。

対策方法④売却が難しい不動産は専門業者に有料で引き取ってもらう

不動産を売却するにしても買い手を見つける必要があります。

もっとも、最近では不要な土地・建物を有料で引き取るサービスを行っている専門の不動産会社があります。これは、売却とは異なり、不動産の所有者が不動産会社に費用を支払って土地や建物を引き取ってもらう方法です。

一般の取引では売却できない不動産を処分する方法の一つとして検討してみてください。

ただし、有料の引き取りサービスを行っている不動産会社の中には、詐欺をはたらく会社もあります。不動産を引き取ってもらう際は、支払う費用の妥当性や支払うタイミング、不動産の名義変更の有無や引き取った後に不動産会社がどういった目的で不動産を利用するのか確認することが重要になります。

対策方法⑤相続した不要な土地を有料で国に引き取ってもらう

以前の記事でもご紹介しましたが、相続した不要な土地を有料で国に引き取ってもらうこともできます。これを「相続土地国庫帰属制度」といいます。現在、所有されている不動産の中に、先代から相続した土地があり、処分に困っている場合は対策方法の一つとして検討する余地はあります。

ただし、あくまでも私見ですが、引き取ってもらうための要件は厳しく、ある程度の費用もかかるため、利用する場合は、お近くの法務局(本局)や司法書士などの専門家に一度は相談することをお勧めします。

参考記事「相続土地国庫帰属制度とは

今後は、何もしないことが一番のリスクになる

これまでは、相続登記を放置しても義務や罰則はなかったため、そのまま放置しても直ぐに問題にならなかったかもしれません。ただし、今後は相続登記が義務化されて期限や罰則が設けられます。

「相続人申告登記制度」を利用することで、一時的に義務を果たして罰則を免れることはできますが、最終的には「本来の相続登記」を申請する必要があります。

また、「相続」という手続きは、どこかの段階(世代)で解決しなければ、更に複雑になる性質があります。複雑になるほど、相続人自身で解決できないだけでなく、専門家に依頼するとしても難易度が高くなるため費用も比例して高額になることがあります。

ご自身の後に続く世代のためにも今の内から手続きを終わらせるようにしましょう。

相談先を迷っている方は、司法書士に相談してください!

現在、相続登記を放置されている方で、ご自身で手続きすることが「難しいなぁ…」、「無理そうだなぁ…」と思われた方、相続登記の義務化に備えた対策方法をご検討中の方は、司法書士にご相談ください。

当事務所でも相続登記をはじめ事前の対策としての遺言書の作成や家族信託(民事信託)などのご相談やご依頼を承っております。

お気軽にご相談ください。

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相続登記の義務化に備えて確認すること

2023-05-25

記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田武史です。

前回の記事では、相続登記の義務化と知っておきたいポイントを解説しました。

前回の記事】のおさらい

  • 令和6年4月1日からは相続登記の申請が義務になる
  • 不動産を相続することを知った日から3年以内に相続登記する
  • 相続登記を放置すると10万以下の過料が科される可能性がある
  • 期限に間に合わない場合は、「相続人申告登記制度」を利用する

前回の記事は、こちらをご覧ください。

既に不動産を相続した方でも相続登記していなければ、令和6年4月1日以降は申請することが義務になります。

今回は、ご自身だけではなく、ご家族が不動産を相続された方に向けて、今の時点で相続登記されているか確認する方法をご紹介します。

相続登記されているか確認する方法

不動産の登記簿謄本を取得する

相続登記されているか確認するための確実な方法は、「相続した不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)」を取得することです。

登記簿謄本に相続人の住所・氏名が記載されていれば相続登記されています。反対に、登記簿謄本の所有者欄の最後に、亡くなった方の住所・氏名が記載されている、もしくは、亡くなった方しか記載されていない場合は、相続登記されていない可能性があります。

不動産の登記簿謄本は、調べたい土地の所在や地番、建物の家屋番号が判明していれば、全国のどこの法務局でも取得できます。

「登記識別情報通知」又は「登記済権利証」を確認することもお勧めです。

登記簿謄本を確認する以外にも不動産の「登記識別情報通知」又は「登記済権利証」の記載を確認してみてください。

相続登記している場合は、不動産を相続した相続人宛にどちらかの証明書が法務局から発行されています。なぜ、2種類あるのかですが、相続登記した年代によって法務局から発行される証明書が異なるからです。

どちらかの証明書に亡くなった人の住所・氏名が記載されていると、相続登記されていない可能性があります。その証明書に記載されている土地・建物の登記簿謄本を取得して、不動産の所有者が亡くなった人の名義になっていないか確認してみてください。

「登記識別情報通知の下部に貼られているシールは剥がさないでください!」

登記識別情報通知の下部に貼られているシールを剥がすとパスワードが記載されています。そのパスワードを第三者に見られてしまうと勝手に不動産の名義を移されてしまう恐れがあります。

不動産の登記簿謄本を取得するときに、そのパスワードを使用することはありません。

不動産を処分する時以外は、パスワードは使用しませんので剥がさず保管してください。

相続した不動産が分からないとき

相続した土地の所在や地番、建物の家屋番号が分からなければ、不動産の登記簿謄本を取得することもできません。

以下は、相続した不動産を特定する方法です。

相続した当時の資料を確認してみる

相続手続きに使用した遺産分割協議書や税務署に相続税の申告をしたときの資料などを確認してみてください。それらの資料に記載されている土地の所在や地番、家屋番号を確認して不動産の登記簿謄本を取得してみてください。

稀に、遺産分割協議に記載されている不動産であっても相続登記されていないことがあります。

固定資産税の「納税通知書」を確認する

相続した土地の所在や地番、建物の家屋番号を調べる方法として、「納税通知書」を確認することもお勧めです。

不動産を所有されている方には、毎年4月から6月頃に固定資産税の「納税通知書」が送られてきます。納税通知書に記載されている土地の所在、地番、建物の家屋番号を確認して不動産の登記簿謄本を取得してみてください。

注意点①相続登記していない場合でも納税通知書は届きます

固定資産税は、相続登記していない場合でも課税されます。したがって、納税通知書に記載があるからといって相続登記されているとは限りません。なお、相続登記されていない不動産の場合は、役所としても誰が不動産を相続したか把握できないため、複数の相続人がいる場合は任意で選択した相続人宛に納税通知書が送られます。

注意点②固定資産税が課税されない不動産もあります

亡くなった人が所有していた不動産でも課税標準額が一定額に満たない土地、建物やそもそも非課税の私道(道路)などは、固定資産税が課税されないため納税通知書に記載がなかったり、納税通知書自体が送られてきません。したがって、相続登記したと思っても申請が漏れていることがあります。

【固定資産税が課税されない不動産】

  • 土地の課税評価額が30万円未満
  • 建物の課税標準額が20万円未満
  • 「私道(道路)」として利用されている土地

課税されていない不動産は「名寄帳」を取得して確認する

名寄帳とは、各自治体ごとに個人が所有している不動産を一覧にまとめた帳簿のようなものです。

名寄帳には、固定資産税が課税されていない土地や建物、非課税の土地なども記載されます。(※自治体ごとに取扱いが異なることもあります。)

もっとも、名寄帳で判明するのは、その市区町村内で管理している不動産のみです。全国の市区町村に対して名寄帳を請求することはできますが、却って手間と費用がかかるため地域を絞って請求することをお勧めします。

相続登記されていない不動産が見つかったとき

相続登記されていない不動産が見つかったときは、以下のいずれかの方法により相続登記を行います。

相続登記されていない不動産が見つかった経緯

遺産分割協議書に記載された不動産

遺産分割協議書に記載されている不動産でも相続登記されていないことがあります。

その場合は、遺産分割協議書に記載されているとおりに相続登記を申請します。相続登記に必要な書類として、相続した当時に使用した「遺産分割協議書」、「相続人の印鑑証明書」、「戸籍謄本等」を使用できます

ただし、「評価証明書」は、相続登記を申請する年の評価証明書を取得する必要があります。例えば、平成30年に相続した時に作成した遺産分割協議書を使用して、令和5年に相続登記を申請するのであれば、令和5年度の評価証明書が必要になります。

なお、遺産分割協議書以外の書類が紛失している場合は、再度収集する必要があります。

遺言書に記載された不動産

遺言書により不動産を相続する人が指定されている場合でも相続登記されていないことがあります。その場合は、遺言書で指定された人の名義にするための相続登記を申請します。

相続登記を申請するときに添付する書類については、遺産分割協議書と同様に当時の遺言書や戸籍謄本などを使用できます。なお、評価証明書についても同様に相続登記を申請する年度の評価証明書を取得する必要があります。

遺産分割協議書や遺言書に記載されていない不動産

遺産分割協議書や遺言書に記載されていない不動産が見つかり、相続登記されていない場合は、相続人同士で話し合って不動産を相続する人を決めて頂くか、相続人全員の名義で登記する方法があります。

もっとも遺産分割協議書や遺言書に、下記のような記載がされている場合があります。

遺産分割協議書の記載例

  • 「本協議書に記載がされていない財産については、相続人Yが取得する。」

【遺言書の記載例】

  • 「本遺言書に記載した財産以外の遺言者の財産は、相続人Xに全てを相続させる。」

上記のような記載があれば、その指定どおりに遺産分割協議書や遺言書を使用して相続登記を申請することができます。

詳細は、「不動産の名義変更(相続登記)」をご覧ください。

相続登記を放置すると、どうなるのか

「相続登記されていない不動産が見つかった場合は、速やかに相続登記をしましょう!」とは、いってもどうしても面倒だからといって放置してしまう方はいます。

相続登記を放置することで得られる唯一のメリットは、登録免許税などの費用が掛からないことです。ただし、今後は相続登記を放置すると登録免許税以外にも10万円の過料が科されてしまいます。

その他にも相続登記を放置することのリスクは数多くあります。

主なリスクを以下にまとめましたのでご覧ください。

相続登記を放置するリスク

相続登記の有無に関係なく所有者としての管理責任は負う

相続人は、相続登記の有無に関係なく、不動産の所有者として管理責任を負います。

先程、述べたとおり相続登記の有無に関係なく固定資産税は課税されます。

その他にも相続人は相続した不動産の管理責任(民法第918条)や工作物責任(民法第717条)を負うことになります。

例えば、相続した建物が倒壊したり、放火されて隣家に被害が及んだ場合は、賠償責任を負うことになります。もっとも相続登記していなければ、対外的には誰が不動産を相続したか判明しないため相続人全員が責任を問われかねません。

つまり、第三者だけではなく不動産を相続しない、もしくは相続する意思のない相続人との間で責任の所在についてトラブルになることがあります。

相続登記を放置することで、より一層手間や費用がかかる

相続登記を放置している間に、当初の相続人が亡くなってしまうことがあります。

相続人が亡くなることで不動産の権利が次世代の相続人に移るため相続登記に関わる人や収集する書類の数も増えていき、当初は面倒に思っていた相続登記がより一層複雑になり、手間や費用もその分掛かってしまいます。

相続した不動産を売却したいと思ってもできない

相続した不動産をいざ売却したいと思っても相続登記しなければ売却することはできません。

不動産の名義が亡くなった人のままでは、不動産の所有者が明らかにならず、不動産を購入したい人にとっても「誰と売買契約を結べば良いのか」、「誰に代金を支払えば良いのか」が分かりません。

もっとも不動産を売却するには、不動産を相続した相続人全員の同意が必要になります。相続登記を放置している間に相続人が亡くなり相続人の数が増えることで、売却手続きに関与する人も増えます。

関わる人が多ければ、その分権利関係や利害関係が複雑になり、不動産を売却するまでに時間が掛かったり、売却すること自体ができないケースも少なくありません。

第三者に不動産の権利を取得される危険性がある

不動産を相続した多くの方は、相続登記せずとも自身が所有者であるから問題ないと思われている方がいます。ただ、不動産の権利は登記した人の早い者勝ちの性質があります。

というのも相続人同士が話し合って、特定の相続人が不動産を相続することはできます。ただし、その相続人が単独で不動産を相続したことを主張するには相続登記しなければなりません(民法第899条の2)。

相続登記しない間に、他の相続人が自身の名義で勝手に相続登記を行ったり、不動産の権利(持分)を第三者に売却することも手続き上は可能です。また、他の相続人に対する債権者等は、不動産の権利を差し押さえれることもできます。

一度不動産を売却されたり差し押さえられたりすると、もはや自身が不動産を単独で取得したことを主張できなくなります。

これらのリスクを次世代の家族が負担することになる

一番気を付けて頂きたいのが、こういったリスクが有るにも関わらず、ご自身の代で解決せずにいると、今度は次世代の相続人であるお子さんや他の親族に負担が引き継がれることです。

今は問題ないと思われたり、やっぱり面倒だからといって相続登記を放置してしまうと、次はご自身のお子さんやお孫さんが同じようなリスクを背負うだけではなく、更に複雑化して解決できない問題に発展することもあります。

不動産を相続された方や相続登記されていない不動産が見つかった場合には、速やかに相続登記をしましょう。

まとめ

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

相続登記を放置されている方は早めに相続登記を完了させることをお勧めします。

「相続登記を放置している」「相続登記されているか確認したい」、そのような方は、ぜひ一度当事務所にお問合せください。

お問い合わせは※こちら

次回の記事では、ご自身やご家族が不動産を所有されている方に向けて、相続登記が義務化されても慌てないために、今の内からできることや対策方法についてご紹介しようと思います。

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