相続放棄と相続登記の添付書類

記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田武史です。

以前の記事で、相続登記の義務化に伴い相続放棄のご依頼が増加していることについて掲載しました。

※以前の記事「相続登記の義務化により相続放棄が増加していることについて

今回の記事では、相続放棄した後の相続登記手続きについて、どのような手続きや書類が必要になるのか解説いたします。

相続人の中に相続放棄した相続人がいる方で、これから相続登記を申請される予定の方は、是非参考にしてみてください。

相続放棄とは

相続放棄に関する記事を掲載するときには、まず、「相続放棄」について理解して頂く必要があります。

「相続放棄」は、相続人としての地位や権利を自ら手放すための法律上の手続きのことをいいます。

よく誤解されるのが、「遺産放棄した」や「財産放棄した」などを他の相続人に伝えることで、相続放棄したと思われている方がいらっしゃることです。

相続放棄は、他の相続人に財産を相続しないことを伝えることだけでは足りません。

具体的には、家庭裁判所に相続放棄申述受理申立てという手続きを行い、受理される必要があります。

つまり、他の相続人に遺産放棄や財産放棄する旨を伝えるだけでは、相続放棄をしたことにはならず、その後も相続人として相続手続きに関与していくことになります。

参考記事:「遺産放棄(財産放棄)」と「相続放棄」は違う

相続手続きに全く関与したくない方や亡くなった人の相続財産の一切を引き継ぎたくないと望まれる方は、速やかに家庭裁判所に申立てを行い、相続放棄することが必要になります。

相続登記を申請する際は、相続放棄したことを証明する必要がある。

相続放棄すると、相続人としての地位や権利が無くなるため、その後の相続登記の手続きに関与する必要がなくなります。

もっとも、手続きに関与することは無くなっても他の相続人が相続登記を申請する際は、法務局に対して、一部の相続人が相続放棄したことの証明書を提出する必要があります。

具体的には、以下のいずれかの証明書を提出します。

【具体例】相続放棄したことの証明書

  • 相続放棄申述受理「通知書」
  • 相続放棄等の申述有無についての照会に対する家庭裁判所からの回答書
  • 相続放棄申述受理「証明書」

相続放棄申述受理「通知書」とは

相続放棄申述受理「通知書」とは、相続放棄が受理された後に、家庭裁判所から相続放棄した相続人本人に送られてくる相続放棄を受理したことの通知書のことをいいます。

言い換えると家庭裁判所から相続放棄が認められたことの証明書です。

相続登記の申請の際に、相続放棄申述受理通知書を他の添付書類と一緒に提出することで、不動産の名義を相続放棄した相続人を除いた相続人名義に変更することができます。

ただし、相続放棄申述受理通知書を相続登記の申請に使用するには、後述する「相続放棄申述受理証明書」と同様の内容が記載されている必要があります(登記研究808号147頁)

具体的には、相続放棄申述受理通知書に、以下の内容が記載されている必要があります。

  • 事件番号
  • 申述人(相続放棄した相続人)
  • 被相続人の氏名
  • 被相続人の本籍
  • 被相続人の死亡年月日
  • 相続放棄申述の受理年月日

相続放棄申述受理通知書は、各家庭裁判所により書式が異なることがあるため、事前に法務局などに確認して、相続放棄したことの証明書として使用できるか確認する必要があります。

相続放棄の申述有無の照会に対する家庭裁判所からの回答書とは

複数の相続人がいる場合に、特定の相続人が相続放棄しているかどうか不明な場合に、他の相続人等は家庭裁判所に対して、その相続人が本当に相続放棄しているか照会(確認)することができます。

つまり、相続放棄した相続人以外の相続人でも家庭裁判所に対して、特定の相続人が相続放棄しているか確認ができるということです。

そして、相続放棄の申述がされていれば、その事件番号、受理年月日等が記載された「回答書」が送られてきます。反対に、相続放棄がされていない場合は、その旨の回答が書面で届きます。

相続登記を申請する際に、「相続放棄している相続人がいる回答書」を他の添付書類と一緒に提出することで、不動産の名義を相続放棄した相続人以外の相続人名義に変更することができます(登記研究808号147頁)

他の相続人が相続放棄している確認する方法については、以下の記事をご覧ください。

参考記事:「他の相続人が相続放棄しているか調べる方法

相続放棄した相続人と連絡が取れない場合は、上記の制度を利用して、証明書を取得することで他の相続人は相続登記を申請することができます。

相続放棄申述受理「証明書」とは

相続放棄申述受理「証明書」は、相続放棄が受理されたことを証明する書類になります。

前述した相続放棄申述受理「通知書」は、家庭裁判所から相続放棄した相続人に対して、相続放棄が認められたことを知らせるための「通知書」になります。

いすれの書面も相続放棄したことを証明する書面になりますが、対外的に相続放棄が認められていることを主張する場合は、「相続放棄申述受理証明書」を使用することになります。

もっとも、実務上は「相続放棄申述受理通知書の写し(コピー)」でも相続放棄したことを証明することができますが、事案によっては、相続放棄申述受理「証明書」の提出を求められるケースもあります。

一部の相続人が相続放棄している場合の相続登記でも相続放棄受理「証明書」を添付することもあります。

相続放棄申述受理証明書の取得方法

  • 申請先・・・亡くなった人(被相続人)が死亡した時の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 申請できる人・・・他の相続人や利害関係人
  • 申請方法・・・窓口に提出又は郵送
  • 必要書類・・・以下のとおりです。
    ①申請書
    ②収入印紙(1通/150円)
    ③請求者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードのコピーなど)
    ④相続放棄受理通知書(又は申述有無の照会結果のコピー)
    ⑤被相続人と相続人の関係が分かる戸籍謄本(他の相続人が申請する場合)
    ⑥利害関係があること証明する書面(利害関係人が申請する場合)
    ⑦申請者の住民票(本籍地入り)
    ⑧返信用封筒と切手94円(郵送で受け取る場合)

相続手続きでお困りの方は当事務所にお気軽にご相談ください。

記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

本記事では、相続放棄と相続登記の添付書面について解説いたしました。

相続放棄した後は、相続手続きに関与する必要もなくなり、その後の手続きでは、一切関与することがないと思わがちですが、他の相続人が相続手続きを行う際は、相続放棄したことを証明する書類を提出する必要があります。

相続放棄された方は、いつでも相続放棄したことを証明できるよう相続放棄申述受理通知書や相続放棄申述受理証明書を取得・保管しておくようにしましょう。

当事務所では、相続登記を含めた相続に関するご相談を承っております。相続手続きで、お困り事やご不安な事がありましたら、当事務所までご相談ください。

山田武史司法書士事務所 
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