ご家族が亡くなったときに必要な手続き

記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田です。

ご家族が亡くなり、あなた自身が相続人になったとき、何をする必要があるのか、何から始めれば良いのか分からないという方もいるのではないでしょうか。

ご家族が亡くなり、財産を承継するなど、「相続」を一度でも経験したことがある方であれば、どのような手続きが必要であるのか、お分かりになるかと思います。

ただ、「相続」を経験したことが無い方にとっては、何をすれば良いのか分からない方も多くいらっしゃいます。

本記事では、ご家族が亡くなった後に必要になる手続きについて解説いたします。

相続を始めて経験する方は、是非参考にしてみてください。

必ず必要になる3つの手続き

亡くなったご家族から遺産を相続するときに、代表的な手続きがあります。

以下に、大まかに3つに分けてやるべきことを解説いたします。

戸籍の収集

亡くなったご家族から財産を相続するときに、必ず必要になるのが戸籍の収集です。

戸籍とは、日本国籍を有する人の出生から死亡(もしくは現在)までの身分関係を記録した証明書のことです。

戸籍には、出生した日や場所、父母等の家族関係、婚姻・離婚の記録、死亡した日や死亡したときの住所などが記載されています。

では、なぜ相続手続きの際に、戸籍を収集する必要があるのかというと、亡くなったご家族の相続人であることを確定する必要があるからです。

ご家族が亡くなったときに、血の繋がりがあれば誰でも相続人になれるわけではありません。

法律上は、故人の家族でも相続人になれる人の決まりや順番があります。この相続人のことを「法定相続人」といいます。

法定相続人と順位(順番)は、以下のとおりです。

  • 第1順位(第1番)・・・亡くなった人の子や孫等(直系卑属)
  • 第2順位(第2番)・・・亡くなった人の両親・祖父母(直系尊属)
  • 第3順位(第3番)・・・亡くなった人の兄弟姉妹

上記の相続人と共に、亡くなった人の配偶者(夫又は妻)は、一緒に相続人になります。

亡くなった人に子がいるのであれば、第1順位の子が相続人になります。そして、亡くなった人の子が亡くなっている等、子(孫等)がいない場合は、亡くなった人の両親(祖父母)が相続人になります。次に、両親や祖父母も既に亡くなっている場合は、亡くなった人の兄弟姉妹が相続人になります。もっとも亡くなった人に配偶者(内縁は含まない)がいるのであれば、各相続人と共に相続人となります。

つまり、上記の相続人になる人を調査・確定するために亡くなった人の戸籍を収集する必要があるということです。

法定相続人や必要になる戸籍については、以下のページもご覧ください。

相続人の調査」とは

これまでは、戸籍を収集することに大変時間が掛かっていましたが、本年(令和6年)3月1日から「戸籍の広域交付制度」が開始されて、従来よりも手間なく戸籍を集められるようになりました。

以下は、参考記事になります。

令和6年3月1日から始まる「戸籍の広域交付制度」について

亡くなった人の財産の確認

戸籍を収集して相続人が誰になるかを確定した後は、亡くなった人の財産、つまりは相続人が承継する財産を確認する必要があります。

相続により、承継する財産には不動産、預貯金、株式などの有価証券が主な財産になります。その他にも亡くなった人が被保険者として加入していた生命保険なども含まれます。

そして、相続により承継する財産の総額が一定額を超えると相続税が課税されます。

相続税は、必ず課税されるわけではありません。ただし、承継する財産の総額が「相続税の基礎控除額」を超える場合には、相続税が課税されます。

相続税の基礎控除額とは、「相続により承継する遺産の総額から一定額を控除できる金額」のことをいいます。つまり、承継する財産の総額が基礎控除額を超えなければ、相続税は課税されないということです。反対に、基礎控除を超える財産を承継する場合は、相続税が課税されることになります。

相続税の基礎控除額の算出方法は、以下のとおりです。

  • 基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

【具体例】

亡くなった人に妻と長男、二男がいる場合は、法定相続人が3名になります。

その場合の基礎控除額は、以下のとおりです。

  • 3,000万円+(600万円×3名)=4,800万円(基礎控除額)

つまり、亡くなった人から承継する財産の総額が4,800万円を超えなければ、相続税は課税されないことになります。

仮に、亡くなった人から承継する財産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税が課税されることになります。そして、相続税の申告には期限があります。

相続税の申告は、被相続人(亡くなった人)が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。通常は、ご家族が亡くなった日から10か月の期限を計算することになります。

相続税の課税の有無によって、相続手続きのスケジュールが代わりますので、亡くなった人の財産がどのくらいあるのか確認することも重要になります。

亡くなった人の財産を調べる方法については、以下のページをご覧ください。

相続財産調査」とは

財産の名義変更

戸籍の収集及び財産の確認ができた後は、亡くなった人の財産を相続人の名義に変更する手続きを行います。例えば、不動産であれば法務局への相続登記、預貯金であれば口座の解約及び払戻し手続きになります。

各手続きには、収集した戸籍の提出が必要になります。もっとも財産の種類が複数になる場合は、その分戸籍を集める必要があります。そこで、戸籍を収集した後は、「法定相続情報一覧図」という証明書を法務局で取得することをお勧めします。

法定相続情報一覧図とは、家系図のような書類に法務局が認証した証明書です。相続関係を法務局が証明する書面になりますので、財産の名義を変更する際に、法定相続情報一覧図を提出することで戸籍を提出する必要がなくなります。

法定相続情報一覧図については、下記のページをご覧ください。

相続関係説明図と法定相続情報証明制度」とは

相続人が複数名いる場合は、遺産分割を行う

相続人が1人であれば、その方のみが亡くなった人の財産を相続することになります。もっとも相続人が複数名いる場合は、遺産分割を行うこともあります。

遺産分割とは、亡くなった人の財産をどのように分けるか相続人全員で話し合うことをいいます。例えば、亡くなった人が所有していた財産に、不動産や預貯金がある場合は、一部の相続人が不動産を取得して、他の相続人は預貯金を相続するなど、財産の分け方を話し合って決めることです。

代表的な遺産分割の方法は、4つあります。

  • 現物分割(げんぶつぶんかつ)
    ⇒不動産は長男、預貯金は母というように、どの財産を誰が相続するかを特定して分け合う方法です。
  • 換価分割(かんかぶんかつ)
    ⇒亡くなった人の財産を処分(売却)して、売却代金を相続人間で分け合う方法です。
  • 代償分割(だいしょうぶんかつ)
    ⇒亡くなった人の財産を特定の相続人が取得する代わりに、他の相続人に対しては現金を支払って分け合う方法です。代償金の額は、「法定相続分」に応じて計算します。
    例えば、長男と二男の二人が相続人となる場合は、各相続人の法定相続分は、2分の1ずつです。そして、亡くなった人が所有していた1,000万円の価値がある不動産を長男が取得する代わりに、長男から次男に500万円を支払うのが代償分割になります。
  • 共有分割(きょうゆうぶんかつ)
    ⇒亡くなった人の財産の一部(又は全部)を相続人全員が共同(共有)で所有することで分け合う方法です。

相続人が複数名いる場合でも遺産分割を行うことなく、各相続人の相続分どおりに分け合うこともできます。ただし、不動産を複数の相続人で共同で取得すると、将来、その相続人が亡くなると次世代もしくは次々世代へと権利が引き継がれ、不動産の権利が分散していくことになります。不動産を相続する人が複数名になれば、なるほど将来不動産を処分することが困難になることがあります。

というのも不動産を管理・処分するには、その不動産の権利を持つ人全員の同意が必要になるため、権利を持つ人が増えるにつれて、同意を得ることが難しくなるためです。

また、相続税が課税される場合は、財産を相続する人によって相続税が減額される特例などもあります。

遺産をどういう方法で分けた方が良いのか分からない場合は、司法書士や税理士などの専門家にご相談してみてください。

そして遺産分割により、話し合いがまとまった後は、「遺産分割協議書」という書類を作成して相続人全員の署名及び実印による押印をします。

遺産分割をした場合は、財産の名義を変更する際に、戸籍(又は法定相続情報一覧図)と一緒に遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書を提出することになります。

遺産分割協議書の作成については、以下のページをご覧ください。

遺産分割協議書の作成について

その他、財産の名義変更の方法については、下記をご覧ください。

期限のある手続きとスケジュール

以下は、ご家族が亡くなったときに必要になる手続きとスケジュールになります。

死亡届・火葬許可申請の提出(亡くなった日から7日以内)
  • 提出先は、亡くなった人の住所地、本籍地又は届出人の住所地を管轄する市区町村役場です。

※死亡診断書(死体検案書)の提出が必要になります。

年金の受給停止手続き(亡くなった日から10日(国民年金は14日)以内)
  • 提出先は、年金事務所または街角の年金相談センターです。
介護保険の資格喪失届の提出(亡くなった日から14日以内)

亡くなったご家族が、要介護状態で認定を受けていた場合は、資格喪失の手続きと介護被保険者証の返却が必要になります。

  • 提出先は、亡くなった人の住所地を管轄する市区町村役場です。
世帯主変更届(亡くなった日から14日以内)

亡くなった人が世帯主だった場合は、同一世帯の方(または代理人)が、市区町村に世帯主変更届を提出しなければなりません。亡くなった人以外に世帯に残ったのが1人だけの場合は提出は不要です。

  • 提出先は、居住地を管轄する市区町村役場です。
健康保険の資格喪失届(亡くなった日から14日以内)

亡くなった人が国民健康保険又は後期高齢者医療保険に加入していた場合は、市区町村に死亡届を提出することで自動的に脱退することになりますが、保険証を一緒に返却する必要があります。

  • 提出先は、亡くなった人の住所地を管轄する市区町村役場です。

なお、社会保険に加入していた方が亡くなった場合は、事業主が保険の資格喪失手続きを行います。ただし、こちらの手続きは、亡くなった日から5日以内に進める必要がありますので、事業主に直ぐに連絡するようにしましょう。

相続放棄又は相続の限定承認(3か月以内)

相続放棄とは、相続人としての地位や権利を手放す手続きです。例えば、亡くなった人の借金などを相続したくない場合に相続放棄をすることで借金を相続することも無くなります。

また、相続の限定承認とは、亡くなった人が所有していたプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ相続の方法です。

どちらの手続きも相続が開始したことを知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申立てる必要があります。相続が開始したことを知った日とは、ご自身が相続人であることを自覚した日のことです。通常は、ご家族(被相続人)が亡くなった日から3年以内です。

相続放棄又は限定承認を適切に選択するには、相続財産の調査と把握が必要になります。また、亡くなった人との関係によっては、手続きに必要な戸籍の収集にも時間を要するケースがあります。
相続放棄又は限定承認を選択する場合は、早い段階から財産の調査や戸籍収集に着手してください。

  • 提出先(手続先)は、亡くなった人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

※詳しくは、「相続放棄とは」又は「相続の⽅法と注意点」をご覧ください。

所得税の準確定申告(4か月以内)

準確定申告とは、亡くなった人が得た所得を相続人が申告する手続きのことです。例えば、亡くなった人が収益不動産を所有して不動産所得があった場合に、相続人が亡くなった人の代わりに所得税の申告をする必要があります。

所得税の確定申告は、相続の発生を知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。

  • 提出先(手続先)は、亡くなった人の住所地を管轄する税務署です。
相続税の申告と納税(10か月以内)

相続税が課税される場合は、相続の発生を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告・納税を行う必要があります。相続税が課税される場合とは、先述したとおり基礎控除額を超える財産を亡くなった人から相続する場合です。

ここで注意したいのが、相続人同士で遺産分割を行う場合は、相続税の申告期限内に遺産分割協議を完了する必要があります。

相続税の申告期限内に遺産分割協議がまとまらないと、小規模宅地等の特例等の各種減額特例の適用を受けられなくなります。相続税の申告が必要な方は、期限内に遺産分割協議を完了させるようにしましょう。

  • 提出先(手続先)は、亡くなった人の住所地を管轄する税務署です。
遺留分侵害額請求(1年以内)

遺留分侵害額請求とは、遺留分に満たない財産を相続することになった場合、遺産を受け取った他の相続人等に対して遺留分に相当する金銭の支払いを請求することです。
遺留分とは、亡くなった人の配偶者や子、親が相続人となる場合に最低限保証されている相続分だと思ってください。

例えば、遺言書に「財産の全てを長男に相続させる」と記載されている場合、亡くなった人の相続人に配偶者や二男がいるのであれば、遺留分に相当する金銭の支払いを長男に請求することができます。

遺留分の請求は、相続の開始および遺留分を侵害する遺贈や贈与を知ったときから1年以内に行う必要があります。また、相続開始から10年を経過すると時効により消滅します。

遺留分は、内容証明郵便の送付や家庭裁判所への調停申立てなどにより、請求することになります。

※詳しくは、「遺留分とは」をご覧ください。

高額医療費の還付請求(2年以内)

亡くなったご家族が亡くなる前に入院などをしていて、高額な治療費の負担していた場合は高額医療費の還付金を請求できます。

高額医療費の還付請求とは、医療機関(病院・薬局)等で支払った金額が一定の自己負担分を超えた場合に、その超えた部分について、後から払い戻されて還付を受けることができる制度のことです。

高額医療費の還付金請求は、診療を受けた月の翌月の初日から2年間の間に請求する必要があります。

  • 申請先は、亡くなった人の住所地を管轄する市区町村役場又は健康保険組合です。
葬祭費・埋葬料の請求(亡くなった日から2年以内)

葬祭費とは、亡くなった人が国民健康保険の被保険者であった場合に、葬祭(葬儀)を行った人(喪主)が受け取れる給付金(3万円~7万円程)のことですまた、亡くなった人が75歳以上で後期高齢者医療制度に加入していた場合も葬祭費を受け取ることができます。

埋葬料とは、亡くなった人が国民健康保険以外の健康保険の被保険者であった場合に、業務外の事由により亡くなったときに、生計を共にしていた遺族が受取れる給付金(5万円程)になります。つまり、社会保険、健康保険(協会けんぽ)、各種組合健保、共済組合などに加入していた人が亡くなったときに、支給される給付金のことです。

葬祭費・埋葬料ともに、ご家族が亡くなった日から2年以内に請求する必要があります。

  • 葬祭費の申請先は、亡くなった人が加入していた国民健康保険を管轄する市区町村役場です。
  • 埋葬料の申請先は、勤務先の健康保険組合または社会保険事務所です。
生命保険金の請求(亡くなった日から3年以内)

生命保険金は、受取人が保険会社に請求しなければ給付されません。生命保険金の請求権は、ご家族が亡くなった日から3年が経過すると時効消滅します(保険法95条1項)。

生命保険金の受取人になっている方は、期限内に保険金請求を行ってください。

亡くなったご家族が生命保険に加入していたか、不明な場合は調査することもできます。

※詳しくは、「故人が生命保険に加入していたか調べる方法」をご覧ください。

相続登記(3年以内)

亡くなった人が不動産を所有していた場合は、その不動産の名義を相続人に変更する手続きが必要になります。この手続きのことを「相続登記」といいます。

相続登記の申請には、これまで期限はありませんでしたが、令和6年4月1日からは相続登記が義務化されて、期限が設けられました。

相続登記の期限は、不動産を相続することを知った日から3年以内です。

  • 申請先は、不動産の所在地を管轄する法務局です。

詳しくは、下記のページをご覧ください。

※「知っておくべき相続登記の義務化についてのポイント

※「不動産の名義変更(相続登記)

遺族年金・未支給年金の請求(亡くなった日から5年以内)

遺族年金とは、亡くなった人に配偶者や未成年者の子がいる場合に、支給される給付金のことです。

また、亡くなった人が受け取っていない年金がある場合は、その未支給分の年金を請求することができます。

遺族年金・未支給年金の請求期限は、共に亡くなった日から5年間となっているので、早めに申請して受け取るようにしましょう。

  • 提出先(手続先)は、住所地の市区町村役場又は年金事務所です。

ご自身で手続きができないときは当事務所に相談してください。

両親や家族が亡くなったときは、何から始めれば良いかの分からない方も多いかと思います。

また、相続を始めて経験する方は、どこに相談してよいのか迷われている方もいることでしょう。

相続手続きは、長期間に亘ることも多いですが、1つずつ確実に進めていきましょう。

あなた自身だけで手続きすることが難しい場合は、当事務所にご相談ください。当事務所は司法書士事務所として相続手続きの代行及びサポートを承っております。

また、司法書士の業務範囲外の手続きでも税理士などの他の専門家のご紹介をさせて頂くことができます。

お気軽にお問い合わせください。

山田武史司法書士事務所 
〒107-0062 東京都港区南青山二丁目2番15-1319号
TEL 03-6434-0717 FAX 03-6434-0727

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