ある日、突然届く「固定資産の現所有者に関する申告書」

記事をご覧いただき、ありがとうございます。

司法書士の山田武史です。

以前、「ある日、突然届く法務局からのお知らせ」という記事を掲載しました。シリーズ化しようとは思っていませんが、今回は、弊社にご相談に来られる方の中でも、最近増えている固定資産(土地家屋)の現所有者に関する申告書」について、ご説明しようと思います。

早速ですが、下記の書類を市役所から受け取ったご経験はあるでしょうか。

引用元:東京都主税局「現所有者申告のご案内

この通知は、土地や建物など、不動産の所有者が亡くなった後、相続登記が完了していない場合に、亡くなった所有者の相続人宛に送られる固定資産税の納税に関する届出書です。

固定資産税とは、土地や建物などの不動産(固定資産)を所有している方に、毎年課税される税金のことです。

そして、不動産の所有者が亡くなった後に、相続登記がされない間は、その亡くなった所有者の相続人全員が連帯して固定資産税を納税する義務を負います。

つまり、この通知書を受け取った方は、不動産を相続する相続人であり、固定資産税を納税する義務を負うということです。

なぜ、この通知書が送られてくるのか

令和2年の地方税法改正により、令和3年1月1日から地方税法第384条の3に規定する現所有者の申告書の提出が義務となり、制度化されました。

地方税法第384条の3】

市町村長は、その市町村内の土地又は家屋について、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録がされている個人が死亡している場合における当該土地又は家屋を所有している者(以下この条及び第三百八十六条において「現所有者」という。)に、当該市町村の条例で定めるところにより、現所有者であることを知つた日の翌日から三月を経過した日以後の日までに、当該現所有者の住所及び氏名又は名称その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができる。

つまり、不動産の登記簿上に記載されている所有者が亡くなった場合、相続登記が完了するまでの間は、その亡くなった所有者の相続人全員が現所有者として、固定資産税の納税することになるため、その相続人の氏名・住所等必要な事項を記載した申告書を市区町村に届出る必要があるということです。

この制度のことを「固定資産の現所有者(相続人等)の申告制度」といいます。

固定資産の現所有者(相続人等)の申告制度とは

前述したとおり、固定資産税は不動産を所有している方に課税される税金です。

そして、不動産の所有者が亡くなった後、相続登記がされるまでの間は、不動産を相続した相続人が現所有者として固定資産税を納税することになり、相続人が複数いる場合は、連帯して納税義務を負うことになります。つまり、不動産の固定資産税を納税義務者であることを相続人から申告してもらうための制度のことを「固定資産の現所有者(相続人等)の申告制度」といいます。

この制度ができた背景としては、近年、所有者不明土地や空き家等が毎年増加しており、公共事業の妨げになるなど社会問題になっていました。また、不動産の所有者が亡くなった後の固定資産税の円滑かつ公平な課税の確保のため、固定資産(土地家屋)の現所有者(相続人等)に関する申告制度が設けられることになりました。

申告が必要になる相続人とは

固定資産(土地家屋)の現所有者に関する申告制度における相続人とは、民法に定める「法定相続人」のことをいいます。

法定相続人は、亡くなった人との関係によって財産を相続する人の順番(順位)が決まっています。

法定相続人の順位は、以下のとおりです。

  • 第1順位 亡くなった人の子、孫などの直系卑属(ちょっけいひぞく)
  • 第2順位 亡くなった人の両親、祖父母などの直系尊属(ちょっけいそんぞく)
  • 第3順位 亡くなった人の兄弟姉妹

※上記の相続人と共に、亡くなった人の配偶者(夫又は妻)は、必ず相続人になります。

上記の相続人(現所有者)が複数いる場合は、相続人間で協議のうえ、特定の相続人を代表者として納税通知書等を受け取る人を申告することになります。

申告書の提出には、期限がある

固定資産(土地家屋)の現所有者(相続人等)に関する申告書の届出には、期限が設けられており、現所有者である相続人自身が相続人(現所有者)であることを知った日の翌日から3か月以内に届出る必要があります。

固定資産(土地家屋)の現所有者に関する申告書を受け取る方の多くは、申告書を受け取るまで不動産を相続することを知らず、申告書を受け取ったときに、初めて自身が不動産を相続することを知ることになるため、申告書を受け取った日から3か月以内に届出をすることになります。

期限内に提出できないと過料が科されるおそれがあるのでご注意ください

申告書を受け取った後、正当な理由なく、期限内に申告書を提出しないと10万円以下の過料が科されることがあります。

申告書の提出方法

「申告書」に必要事項を記入のうえ、必要書類と一緒に、不動産の所在地を管轄する市区町村の資産税課に提出します。

提出方法は直接窓口に提出するほか、郵送による方法でも受け付けてくれます。

申告書を受け取った後の対応について

申告書を受け取った方は、不動産を相続する相続人であるため届出書の提出以外にも行う必要がある手続きがあります。

以下に、申告書を受け取った後の対応方法についてご紹介します。

不動産を相続したい方は、相続登記を申請する

申告書を受け取った後に、不動産を相続することを希望する方は「相続登記」を法務局に申請する必要があります。

相続登記とは、不動産の登記簿に記載されている所有者としての名義を亡くなった人から相続人に変更するための法務局に対する手続きのことをいいます。

申告書を提出したとしても、不動産の名義が自動的に変更されることはなく、別途法務局に相続登記を申請する必要があります。

詳しくは、「不動産の名義変更(相続登記)」をご覧ください。

また、相続登記も令和6年4月1日から申請することが義務化されました。つまり、不動産を相続した方、もしくは不動産を相続したい方は、不動産を相続することを知った日から3年以内に法務局に相続登記を申請する必要があります。

参考記事:「開始直前!!知っておくべき相続登記の義務化についてのポイント

固定資産税を負担したくない方は、「相続放棄」をする

通知書を受け取った方の中には、固定資産税を負担したくなかったり、不動産を相続することを望まない方もいます。

そういった場合は、「相続放棄」をすることで不動産を相続することもなくなり、申告書を提出する必要もなくなります。

相続放棄とは、亡くなった人の財産を相続する権利を手放す法律上の手続きをいいます。

相続放棄は、財産を放棄する旨の意思を表示するだけではなく、家庭裁判所に申立てを行い受理してもらう必要があります。相続放棄が受理されると法律上は相続人ではなくなるため、不動産を相続することもなくなるので、申告書を提出する必要もなくなります。

もっとも、相続放棄にも期限があり、「自己のための相続の開始を知った日から3か月以内」に家庭裁判所に申立てる必要があります。

固定資産(土地家屋)の現所有者に関する申告書」を受け取った後、固定資産税を負担したくない方は、そのまま放置せず、速やかに司法書士などの専門家に相談して、相続放棄の手続きをするようにしましょう。

詳しくは、「相続放棄とは」をご覧ください。

申告書を受け取った方は、当事務所にご相談ください。

最近、当事務所にご相談頂く方の中で増えてきているのが本記事でご説明した「固定資産の現所有者に関する申告書」を受け取った後の対応方法についてです。

事案の多くは、面識のない親族が所有していた不動産についての申告書が送られてきた後、どうすれば良いのか分からなかったり、相続放棄したいとのご相談やご依頼をいただくことです。

当事務所では、相続登記に限らず相続放棄の手続きを一括して承っております。

あなた自身が申告書を受け取って、どうすれば良いのか迷われていたり、悩んでいる場合は、当事務所までお問い合わせください。

是非、お気軽にご相談いただければと思います。

山田武史司法書士事務所 
〒107-0062 東京都港区南青山二丁目2番15-1319号
TEL 03-6434-0717 FAX 03-6434-0727

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