記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田武史です。
亡くなった人から相続する財産の中には、土地や建物といった一般的には価値が高い不動産が含まれていることが多いでしょう。
ただ、不動産だからといって必ずしも経済的な価値があるとは限りません。
相続した不動産の中には、資産価値が低いもしくは、ほとんど価値が無い「負動産」が含まれていることもあります。
亡くなった人から財産を相続するときに、一部の財産を相続して、一部の財産を放棄するなど、財産を選択して相続することもできません。財産を相続することは、必然的に「負動産」も相続することになります。
そういった「負動産」を相続した方の中には、相続登記をせず放置していたり、処分に困っている方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では「負動産」を相続した方に向けて、その対処方法について説明いたします。
このページの目次
「負動産」とは?
一般的に言われる「負動産」とは、資産価値が低く、利用価値もない、売りたくても売れない不動産のことをいいます。
そういった不動産は所有しているだけで毎年維持管理費がかかるだけの「負の財産」になってしまうことがあります。亡くなった人が「負動産」を所有していた場合、その相続人に引き継がれます。
現時点で、親が「負動産」を所有もしくは相続した方であれば、やがて子に引き継がれることになります。ただ、今後は相続登記が義務化され、負動産であっても登記手続きが必要になりますので、将来の相続に備えて今の内から対策すること重要になります。
「負動産」の放置はリスクが拡大する
令和6年4月1日から始まる相続登記の義務化は、どのような不動産であっても対象になります。これまでは、不動産を相続したとしても相続登記をするかは、相続人の任意でした。
ただ、今後は負動産であっても相続登記の申請が必要になります。
そして、長年相続登記を放置している不動産によくあるケースとして、その不動産の名義人である人が何世代も前の親族であり、相続が発生してから何十年も経過していることです。
相続が発生してから期間が何十年も経っていると何世代にも亘って相続人も亡くなっており、ねずみ算式に相続人が分散しており、最終的な相続人が数十名になることがあります。
また、相続登記しようにも相続人の数が多ければ、戸籍の収集も大変ですが、相続人全員に連絡することも困難になることがあります。そうなると司法書士などの専門家に依頼したとしても通常の料金よりも高額な費用がかかることになります。
負動産の特有の問題でもありますが、資産価値が低い不動産であっても放置している期間が長ければ長いほど、相続登記に掛かる費用が高額になるので、負のスパイラルに陥ることになります。
現在、相続登記を放置している方は、相続登記の義務化だけではなく、次世代に課題を引き継がせないために、今の内から解決するよう行動してみましょう。
負動産を相続したときの対応方法
「負動産」を相続した方に向けて、その後の対応方法について説明します。
売却できないか検討してみる
山林や田、畑など経済的な価値が低かったり、利用目的が限られている土地であっても、売却できないわけではありません。また、建物であっても自分では利用しない場合でも、人によっては住みたいというニーズは、一定数あります。
まずは、複数の不動産会社に不動産の査定や売却活動を依頼してみて、買い手がいないか売却活動をするのも一つの方法です。
隣地の所有者に声を掛けて譲り受けてもらう
相続した土地でも売れなかったりする場合は、当該土地に隣接する土地の所有者に譲り渡せないか声を掛けてみるのも一つの方法です。隣接する土地を購入することで、土地の立地条件が良くなり、隣地の所有者にとっては、自身の土地の価値が上昇するなど、メリットになることがあるからです。
空き家バンクに登録する
現在、自治体やNPO法人などが空き家の所有者から情報を募り、空き家の利用を希望する人に向けて物件の情報を提供する「空き家バンク」というサイトがあります。この空き家バンクに、相続した物件の情報を登録して、利用希望者とマッチングすることで売却することができます。
空き家バンクへの登録は、無料なので利用してみるのも良いかもしれません。
参考までに、東京都が運営する空き家情報サイトを以下に載せておきます。
【東京都空き家情報サイト】(引用元:東京都住宅政策本部HP)
田や畑であれば「農地バンク」を利用してみる
農地バンクとは、農林水産省が主導して農地の貸し出しをあっせんする事業のことです。
上述した空き家バンクと同じく各地の自治体が運営する農地中間管理機構といつ法人が間に入り、農地を借り受ける人への貸付を行い、農地の集積及び集約化を目指しています。
言い換えると農地中間管理機構が間に入って、農地を相続した人と農地を借りたい人とのマッチングをすることです。
農地バンクへの登録は無料なので、こちらも利用してみるのも良いかもしれません。
農地バンクの概要について、参考サイトを以下に載せておきます。
【農地中間管理機構】(引用元:農林水産省HP)
土地であれば国に引き取ってもらう
亡くなった人から相続した不動産が「土地」であれば、国に引き取ってもらうことができる制度があります。この制度のことを「相続土地国庫帰属制度」といいます。
令和5年4月27日から始まった新しい制度ですが、相続した不動産の中で不要な土地があれば、法務局に申請して承認してもらうことで、土地を国に引き取ってもらうことができます。
ただし、引き取ってもらうには、更地であることや隣地との境界が明確であることなど、いくつかの要件をクリアする必要があり、申請したからといって必ず引き取ってもらえるとは限らないことにご注意ください。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
参考記事:「相続土地国庫帰属制度とは」
専門の不動産会社に有料で引き取ってもらう
どうしても売却ができなかったり、相続土地国庫帰属制度の利用も難しく処分が困難な不動産であれば、専門の不動産会社に費用を支払って、引き取ってもらうこともできます。
不動産を売却するのとは異なり土地を所有している側が費用を支払って、不動産会社に引き取ってもらう方法になりますが、最終的な手段として検討してみるのも良いかもしれません。
ただし、不動産会社の中には、高額な費用を請求して引き取った後に倒産するなど、詐欺まがいの行為をする会社も存在するので、契約内容や引き取った後の利用目的などを慎重に確認したうえで、契約するようにしましょう。
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
本記事では、「負動産」を相続した方に向けて、その後の対応方法についてご紹介しました。
負動産の多くは、そのまま放置されがちですが、今後は相続登記の義務化がされます。
処分に困っている方は、あきらめずに専門家などに相談してみて、解決方法を探してみることをお勧めします
相続した不動産でも相続登記を放置している方や処分に困っている方は、当事務所までご相談ください。
山田武史司法書士事務所
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