記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士山田武史です。
相続により、森林や山林を相続した方は相続登記だけではなく、森林を管轄する市区町村への届出が必要になります。
平成23年の森林法改正により、森林や山林の所有者となった方は、市町村長への所有者変更の届出が必要になりました。
本記事では、森林や山林を相続した方が必要になる手続きについて解説いたします。
あまり知られていない制度なので、あなたが森林や山林を相続されたのでしたら、是非参考にしてみてください。
このページの目次
森林や山林を相続したら相続登記をする
亡くなられた方から森林や山林を相続した場合は、相続登記が必要になります。
相続登記とは、不動産の名義人が亡くなったときに、相続や遺贈などによって、不動産を取得した人に名義を変更する手続きのことです。
土地や建物と同じく、森林や山林も不動産と取り扱われますので、所在地を管轄する法務局に相続登記を申請する必要があります。
また、2024年(令和6年)4月1日以降は、この相続登記が義務化され、山林や森林を相続することを知った日から3年以内に相続登記を申請することになります。
正当な理由なく、3年以内に相続登記しないまま放置してしまうと10万円以下の過料が科されることがありますので、ご注意ください。
詳しくは、「不動産の名義変更(相続登記)」をご覧ください。
森林の所有者の変更届出をする
森林や山林を相続したときは、相続登記した後に、森林・山林の所有者変更届出が必要になります。
森林法改正により、2012年(平成24年)4月以降に、相続等により森林の土地の所有者となった方は市町村長への届出が必要になりました。
まずは、森林の土地の所有者届出の概要についてご説明します。
森林の土地の所有者届出制度とは
相続などによって山林・森林を取得した方は、管轄する市町村長に所有者の変更届出をすることが必要になります。この制度を森林の土地の所有者届出制度といいます。
この制度は、国が森林や山林の所有者を正確に把握するためにできた制度です。
現在でも所有者の所在が掴めない森林や山林が増加してます。
所有者がわからないと行政が森林所有者に対し森林の整備等に関する助言を行ったりすることができず、また、事業者が森林を伐等をする際に、造林命令、保安林における監督処分などの諸制度を円滑に実施する上で、森林所有者を把握する必要があり、新たに森林の土地の所有者となった旨の届出等に関する規定が設けられました。
ただし、国土利用計画法に基づく土地売買契約の届出を提出している方は届出の必要はありません。
国土利用計画法に基づく土地売買契約とは、一定の面積以上の土地を売買する場合は、その土地の所在地がある都道府県に届出をする必要があります。したがって、一定の面積を超える森林については、森林所有者の変更届出をする必要はありません。
詳しくは、こちらもご覧ください(引用元:国土交通省ウェブサイト)
届出対象者
届出の対象になる方は、相続等により森林土地を取得した方です。
ただし、前述したとおり国土利用計画法に基づく土地売買契約の届出を提出している方は対象外です。
届出の対象になる土地
届出の対象になる土地は、都道府県が策定する地域森林計画の対象となっている森林土地です。
登記簿に記載されている地目によらず、現在の土地の状況が森林の場合も届出の対象になる可能性があります。
届出の対象になる森林土地に該当するかは、当該土地の所在地を管轄する都道府県か市町村に確認してみてください。
届出の期限
届出には期限があります。森林土地の所有者となった日から90日以内に届出をする必要があります。
期限内に届出をしないと10万円以下の過料が科されることがありますので、ご注意ください。
届出様式
届出書には、届出者と前所有者の住所及び氏名、そして新たに所有者となった人が土地を取得した年月日や取得原因、土地の所在と面積、土地の用途などを記載します。
届出書の様式については、下記を参照してください。
所有者届出書は、林野庁ウェブサイトからも取得できます。
(引用元:林野庁ウェブサイト)
添付書類
- 所有者届出書
- 土地を取得した後の登記事項証明書(不動産の登記簿謄本)
- 土地の位置を示す図面(公図など)
森林を相続したくない方は、相続放棄する
森林や山林を相続したとしても利用することもなく、管理するにも費用がかかります。したがって、これから相続する人にとっては大きな負担となることもあります。そこで、森林や山林を相続したくないとお考えの方は、相続放棄を選択することもできます。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続人として地位や権利を手放すための法律上の手続きをいいます。
相続放棄をすると、相続人ではなくなるので、森林や山林を相続することもなくなります。
ただし、注意が必要のなのが、相続放棄をしてしまうと、森林や山林以外のほかの財産も相続することができなくなります。つまり、森林や山林については相続放棄をして、他の財産は相続するなど選択して財産を相続することを希望する場合は、相続放棄はお勧めできません
また、相続放棄には、期限があり、原則としてご自身が相続人になったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所に申し立てる必要があります。
詳しくは「相続放棄とは」もご覧ください。
既に森林や山林を相続して処分に困っている
既に亡くなった人から森林や山林を相続した方や所有されている方で、処分や管理に困っている方は、以下に記載する対応を検討してみるのも良いかもしれません。
相続土地国庫帰属制度を利用する
相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地を国に引き取ってもらう制度のことです。令和5年4月27日から始まった新しい制度ですが、山林や森林の土地もこの制度の対象になります。
もっとも、無条件で引き取ってもらうことはできません。一定の要件を満たして承認をもらう必要があります。
相続土地国庫帰属制度のメリットは、必要な不動産を相続し、必要のない土地を国に引き取ってもらうなど、相続する不動産を選択することができる点です。ただし、先程も述べたとおり、相続土地国庫帰属制度により、土地を引き取ってもらうには、境界が明確である土地や崖がないなど、一定の要件を満たす必要があります。
さらに、土地を引き取ってもらうための負担金を納める必要もあり、無償で引き取ってもらうことができるわけではありません。特に、山林や森林については、面積に応じて負担金の額が定められており、宅地や農地、原野などとは異なり、納付する金額が高額になることがあります。
相続土地国庫帰属制度を利用する場合は、法務局や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。
参考記事「相続土地国庫帰属制度とは」
山林や森林の土地を売却する
山林や森林の土地は利用価値が乏しく、売却することも難しいかもしれません。
ただ、場所によっては、キャンプ場や林業などに利用できる場合がありますので、売却することができないか一度検討してみるのも良いかもしれません。
また、山林をご自身で管理できない場合は、地元の森林組合や林業を行っている会社に管理を委託する方法も考えられます。
自治体や森林組合等に寄付する
売却が難しい場合は、土地の所在地がある市町村や森林組合等に寄付等をすることも考えられます。
山林や自然保護に有用な山林など、場所によっては、地元の自治体や企業が寄付を受け入れてくれる場合もあります。
一度は、地元の自治体や企業などに寄付の受け入れが可能か、問い合わせてみるのも一つの方法です。
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
山林や森林を相続した方の中には、相続したまま相続登記をせず放置されている方も多いのではないでしょうか。
来月(4月)からは相続登記が義務化されます。相続登記の義務化された後は、相続登記を放置すると過料が科される可能性があります。
それ他にも長年の間、相続登記が放置していると、何世代にも亘って相続が発生しており、相続人の数が数十人となることも珍しくありません。
あなた自身が山林や森林を相続したまま相続登記を放置しているのであれば、今の内から登記の専門家である司法書士を頼ってください。
当事務所では、相続登記を含めた相続手続きを一括してサポートいたします。
お気軽にお問い合わせください。
山田武史司法書士事務所
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