相続登記が放置される理由と対策

記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田武史です。

前回から引続き、相続登記の義務化に関連する記事になります。

以前の記事では、相続登記が義務化される前に知っておきたいポイントや今の内から確認することをご紹介しました。

今回は、現在不動産を所有されている方に向けて、相続登記の義務化に備えた対策方法をご紹介します。

相続登記の放置には理由がある

そもそも相続人が相続登記を放置する理由は何でしょうか?

「相続」という手続きに関わったご経験のある方や不動産を相続した方であれば、何となく想像ができるかもしれません。

対策方法を検討する前に、相続登記が放置されてしまう理由を今一度確認してみましょう。

相続人が相続登記をしない、できない理由

不動産を相続しても相続人が利用する予定がない

相続人の中には、自宅を所有されている方も多く、また、離れて生活している家族にとっては、地方や遠方にある実家を相続しても利用する予定がないため、不動産を相続しても管理や処分することが負担になり、相続登記せずに放置してしまうことがあります。

利用や処分ができない不動産に費用や手間を掛けたくない

実際のところ相続した不動産が経済的な価値が高い場合や市場からみて需要のある不動産であれば、売却することができるため最終的には相続登記がされます。

ただし、相続する不動産の中には、利用する予定もなく売却を含めた処分ができない不動産も存在します。そういった不動産を相続するとしても費用や手間をかけてまで相続登記しようと思う方は多くありません。

相続する不動産を把握してなかった

相続人が相続する不動産を把握できないことがあります。先祖代々引き継いできた地方にある土地などは、ご家族が調査しても判明しないことがあります。

また、亡くなったご本人も把握していない不動産が存在することがあります。例えば、故人が遺言書を書いていたところ、意図せず一部の不動産について記載漏れがあることも珍しくありません。

故人や相続人が把握していない不動産は、その不動産の名義人が何世代も前の方であることが多く、相続登記しようにも戸籍の収集に手間や費用が掛かってしまい、そのまま放置してしまうことがあります。

相続人同士の話し合いがまとまらない

相続登記できない代表的な例として、相続人同士の話し合いがまとまらず不動産を相続する人を決められないまま、相続登記が放置されてしまうことです。話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所を介した遺産分割調停や審判により、不動産を相続する人を決めることもできます。ただし、解決するまでに時間や費用もかかるため、そこまでして相続登記しようと思わない方もいます。

一部の相続人と連絡が取れず、手続きができない

相続人の人数に関わらず、一部の相続人と連絡が取れないことがあります。不思議に思われる方もいますが、実際にそういった事例はあります。例えば、一部の相続人の連絡先が分からず、戸籍や住民票を取得しても実際には、その住所地に居住していないなど、現在のお住いや所在が判明しないケースです。

そういった場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任してもらい、所在が分からない相続人に代わって、遺産分割などの相続手続きや相続登記の申請人として関与してもらうことになります。

ただ、不在者財産管理人の選任には時間と費用が掛かるため、裁判所の手続きを含めて手続きをせずに放置されてしまうことがあります。

今後は、どういった対策が必要になるのか

ここからは、不動産を所有されている人や将来不動産を相続する人に向けて、相続登記を円滑に進める方法や相続登記が放置されないための対策方法をご紹介します。

対策方法①ご家族で話し合って対策する機会を設ける

相続登記が放置される理由の大部分は、相続人が不動産を相続しても利用する予定がなく、管理や処分に困るためです。

そういったことを理由に相続登記を放置されないために、将来不動産を相続する家族がどういった考えを持っているのか、今の内から家族間で話し合うことが大切です。

また、相続の話題を親である本人に話しづらい場合は、「相続登記の義務化」や「所有者不明土地問題」など、世間の話題をきっかけに対策することについて、親がどんな考えを持っているのか聞いてみるのも良いでしょう。また、当事務所を含めた専門士業のホームページやコラムなどを紹介してみることもお勧めです。

対策方法②相続登記を円滑に進めるために、「遺言書」を作成する

相続登記を含めた相続手続きを進めるうえで、もっとも問題になりやすいのが遺産分割協議です。遺産分割協議とは、遺産の分け方について相続人全員で話し合うことです。

遺産分割協議が複雑化して時間が掛かるケースは以下のとおりです。

遺産分割協議が複雑化して時間が掛かるケース
  • 遺産の分け方について相続人同士の意見がまとまらない
  • 相続人の中に認知症を発症もしくは、判断能力に疑いのある方がいる
  • 一部の相続人と連絡が取れず、所在も分からない

上記のいずれかに該当する場合は、家庭裁判所を介した手続きが必要になり、当事者である相続人が想定しているよりも手続きに手間や費用、時間がかかります。

遺言書を作成して、あらかじめ財産の承継先を指定することで、相続人同士で遺産分割協議を行う必要がなくなり、相続登記を含めた相続手続きを円滑に進めることができます。

現代の相続トラブルは、相続人同士の争いだけではなく、高齢化社会における特有の問題が存在します。遺言書を作成することは、相続登記を円滑に進められるだけではなく、相続トラブルを予防する方法として非常に効果的です。

相続登記の義務化に備えるためにも遺言書を作成することをお勧めします。

対策方法③あらかじめ不動産を売却して現金化する

相続登記の義務化に備える対策として、最もシンプルな対策方法は、将来相続人が取得(相続)する財産に不動産がないことです。相続する不動産が無ければ相続登記も必要ありません。

また、相続人が複数人になる場合は、不動産そのものを共同で相続するよりも現金で分け合った方が相続人同士のトラブル予防になります。不動産を共同で所有することは、リスクになることが多く、相続する不動産に相続人が居住もしくは利用する予定もなければ、現金を相続する方が相続人にとっても適切なことがあります。

現在、複数の不動産を所有されている方は、今の内からご家族で話し合っていただき、不動産を処分・整理することも方法の一つとして検討してみてください。

対策方法④売却が難しい不動産は専門業者に有料で引き取ってもらう

不動産を売却するにしても買い手を見つける必要があります。

もっとも、最近では不要な土地・建物を有料で引き取るサービスを行っている専門の不動産会社があります。これは、売却とは異なり、不動産の所有者が不動産会社に費用を支払って土地や建物を引き取ってもらう方法です。

一般の取引では売却できない不動産を処分する方法の一つとして検討してみてください。

ただし、有料の引き取りサービスを行っている不動産会社の中には、詐欺をはたらく会社もあります。不動産を引き取ってもらう際は、支払う費用の妥当性や支払うタイミング、不動産の名義変更の有無や引き取った後に不動産会社がどういった目的で不動産を利用するのか確認することが重要になります。

対策方法⑤相続した不要な土地を有料で国に引き取ってもらう

以前の記事でもご紹介しましたが、相続した不要な土地を有料で国に引き取ってもらうこともできます。これを「相続土地国庫帰属制度」といいます。現在、所有されている不動産の中に、先代から相続した土地があり、処分に困っている場合は対策方法の一つとして検討する余地はあります。

ただし、あくまでも私見ですが、引き取ってもらうための要件は厳しく、ある程度の費用もかかるため、利用する場合は、お近くの法務局(本局)や司法書士などの専門家に一度は相談することをお勧めします。

参考記事「相続土地国庫帰属制度とは

今後は、何もしないことが一番のリスクになる

これまでは、相続登記を放置しても義務や罰則はなかったため、そのまま放置しても直ぐに問題にならなかったかもしれません。ただし、今後は相続登記が義務化されて期限や罰則が設けられます。

「相続人申告登記制度」を利用することで、一時的に義務を果たして罰則を免れることはできますが、最終的には「本来の相続登記」を申請する必要があります。

また、「相続」という手続きは、どこかの段階(世代)で解決しなければ、更に複雑になる性質があります。複雑になるほど、相続人自身で解決できないだけでなく、専門家に依頼するとしても難易度が高くなるため費用も比例して高額になることがあります。

ご自身の後に続く世代のためにも今の内から手続きを終わらせるようにしましょう。

相談先を迷っている方は、司法書士に相談してください!

現在、相続登記を放置されている方で、ご自身で手続きすることが「難しいなぁ…」、「無理そうだなぁ…」と思われた方、相続登記の義務化に備えた対策方法をご検討中の方は、司法書士にご相談ください。

当事務所でも相続登記をはじめ事前の対策としての遺言書の作成や家族信託(民事信託)などのご相談やご依頼を承っております。

お気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら

山田武史司法書士事務所 
〒107-0062 東京都港区南青山二丁目2番15-1319号
TEL 03-6434-0717 
FAX 03-6434-0727

keyboard_arrow_up

電話番号 問い合わせバナー 無料相談について