「遺産放棄(財産放棄)」と「相続放棄」は違う

記事をご覧いただき、ありがとうございます。港区の司法書士山田武史です。

相続手続きのご相談やご依頼を受けたときに、一部の相続人から「遺産放棄したい」「亡くなった人の財産を放棄したい」もしくは「相続放棄したい」と言われることがあります。

ただ、世間一般の方が言われる「遺産放棄(財産放棄)」と「相続放棄」では、それぞれ法的な意味や効果が異なります。

本記事では、「遺産放棄(財産放棄)」と「相続放棄」の違いについて、解説いたします。

「遺産放棄(財産放棄)」は、遺産をもらわないこと

「遺産放棄(財産放棄)」とは、相続人が他の相続人に対して「自分は遺産(財産)を相続しない」という意思を伝えることです。もっとも、「遺産放棄」そのもの自体に法律上の制度は存在しません。

したがって、遺産を相続したくない相続人は、他の相続人と遺産分割協議により財産を相続しない旨を取り決めたり、他の相続人に自身の相続分を譲渡することにより、遺産を放棄することになります。

相続分の譲渡について、詳しくは「相続放棄以外にも遺産を手放す方法がある」をご覧ください。

「相続放棄」は、相続人としての権利等を手放すこと

相続放棄とは、相続人としての地位や権利を放棄する法律上の手続きです。

遺産放棄とは異なり、相続放棄には法律上の制度があります。具体的には、「相続放棄受理申述申立て」という手続きを家庭裁判所に行い認められる必要があります。

そして、相続放棄が認められると法律上は、「初めから相続人ではなかった」という扱いになります。

その結果、相続財産の一切を相続できなくなります。

相続放棄について、詳しくは「相続放棄とは」をご覧ください。

遺産放棄(財産放棄)と相続放棄の違い

相続人としての立場の違い

遺産放棄するために、相続分の譲渡や遺産分割協議により遺産を相続しないことになっても、相続人としての地位や権利は残るため、その後の相続手続きに関与することが必要になります。

一方の相続放棄は、家庭裁判所に相続放棄が認められると初めから相続人ではなかったとみなされますので、遺産分割協議に参加する必要もなく、相続手続きに関与する必要もありません。

相続債務の取扱いの違い

「相続債務」とは、亡くなった人が負担していた借金などのことです。相続債務は、亡くなった人から相続人に承継されます。

つまり、亡くなった人に代わって相続人が借金などの返済をすることが原則になります。

そして、「遺産放棄」の場合は、遺産分割協議や相続分の譲渡により、遺産を相続しないことになっても相続債務を引き継ぐことになります。

一方の「相続放棄」は、初めから相続人ではないという法律上の取り扱いになりますので、相続債務を引き継ぐこともありません。

相続放棄には期限があるが、遺産放棄には期限がない

遺産放棄をするための期限はありません。遺産分割協議や相続分の譲渡には原則として期限がないためです。

一方の相続放棄は、「自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内」に家庭裁判所に申立てる必要があります。ただし、例外的な取り扱いとして3か月が経過した後でも相続放棄が認められることもあります。

詳しくは「3か⽉経過後の相続放棄について」をご覧ください。

もっとも相続放棄を確実にしたい方は、亡くなった人が死亡した事実を知った日から3か月以内に手続きすることをお勧めします。

遺産放棄と相続放棄、結局どちらを選べばいいの?

遺産放棄(財産放棄)を選択するケース

  • 一部の遺産のみ相続したい
  • 相続債務がなく、相続手続きになるべく関与したくない
  • 特定の相続人に、遺産を相続してもらいたい

相続放棄を選択するケース

  • 相続財産のうちプラスの財産よりもマイナスの財産が多い
  • 相続手続きの一切に関与したくない
  • 他の相続人と関わりたくない

まとめ

遺産放棄と相続放棄は、それぞれの法的な意味や効果が異なります。相続人皆様自身が希望することや方針によって、正しく使い分ける必要があります。

特に相続手続きや他の相続人との関わり合いを持ちたくないために相続放棄を選択する場合は、相続の開始を知ってから3か月以内に手続きをしなければなりません。

ご自身にとって、どちらが最良の選択なのか判断に迷われている方は、なるべく早めに司法書士等の専門家に相談することをお勧めします。

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