遺⾔書を作成しなくてはいけない理由

一般の方が「遺言書」と聞くと、自身が亡くなった時のことを想像してネガティブなイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。また、自身が亡くなった後は、家族の内の誰かが財産を引き継ぐので、遺言書を書かなくとも問題はないと思われている方も多いかと思います。

確かに、家族の間で遺産の分配について話し合うことや手続きに協力できる関係性であれば、遺言書を作成する必要はないかもしれません。

ただし、相続手続きに関わる専門家の立場から申し上げると、相続トラブルを予防し、かつ相続手続きを円滑に進められるためにも遺言書を作成することをお勧めします。

近時の相続トラブルには、相続人同士で遺産の分配について争うことだけではなく、相続人の高齢化や一部の相続人と連絡が取れず、相続手続きを進めることができないケースも含まれます。

当事務所で実際に受任した手続きの中にも遺言書がなく手続きが困難となったケースや、反対に故人が遺言書を残されていたことで、円滑に手続きを進められた事例もありました。

また、遺⾔書がどういった制度なのかある程度は把握しているけど、実際にどういったことを書けるのか、遺言書を書くことで、どのような効果が得られるのかイメージを持てない⽅もいらっしゃるかと思います。

ここでは、相続においてトラブルになりやすい事例を交えて、遺⾔書に書けることや遺言書の効果についてご説明します。

遺⾔書を書くことを検討した方が良いケース

遺⾔書を書くことの必要性について、事例を交えてご説明いたします。

①お⼦様のいないご夫婦

ご夫婦にはお⼦さんがおらず、夫の両親は既に亡くなっていますが、兄が1⼈います。

この事例で、夫が亡くなると妻と夫の兄が相続⼈になります。各相続人の法定相続分は、妻が4分の3、兄が4分の1です。

①お⼦様のいないご夫婦

ご夫婦の⼀⽅が亡くなられた場合に、故人の妻(配偶者)が全財産を相続できると思われている⽅がいます。実際には、亡くなった夫に兄(兄弟姉妹)がいると、その兄も相続⼈になるため妻が全ての財産を相続できるわけではありません。

こういったケースでは、⻑年連絡を取っていなかった兄弟姉妹から相続をきっかけに相続⼈としての権利を主張されてしまい、相続トラブルに発展することも少なくありません。

なお、妻は亡夫の兄から遺産分割協議で合意が得られないと財産の全てを相続することが出来ません。

遺産分割協議がまとまらず、法定相続分で相続するのであれば妻が4分の3、兄が4分の1の割合で夫の財産を共有することになります。

このようなケースでは、夫が遺⾔書に「妻に全財産を相続させる」と書いておくことで、遺産分割協議で兄から合意を得る必要もなく、相続⼈間で争うことなく妻が夫の財産全てを相続することができます。

また、亡くなられた人の兄弟姉妹には遺留分もありませんので、それ以上は相続財産に対する権利も主張できませんので、遺⾔書を書くことが⾮常に有効なケースでもあります。

※遺留分について詳しくは「遺留分について」をご覧ください。

②離婚した前妻との間に⼦どもがいる

夫は、再婚をしていて後妻との間にはお⼦さんがおらず、前妻との間に⼦がいるケースです。

離婚した前妻は相続⼈にはなれませんが、前妻との間の⼦は、夫の⼦に対する親権の有無を問わず相続⼈になります。したがって、夫が亡くなったときの2人の相続分は、後妻が2分の1、(前妻との)⼦が2分の1となります。

②離婚した前妻との間に⼦どもがいる

このようなケースのとき、遺⾔書がなければ、相続⼈である⼦と後妻が協⼒して相続⼿続きを進めることになります。

離婚後も夫と⼦どもが頻繁に連絡を取るなど良好な関係であったなら良いのですが、再婚をした時点でお⼦さんとは疎遠になっていることも多く、また、後妻は前妻との間に⼦がいたことを知らないことがあります。

そういった場合に、相続人2⼈で遺産分割協議などの話し合いを⾏うために連絡を取り合うことは相当な負担を伴い、話し合いを進めることができず⼿続きが停滞してしまう可能性もあります。

また、各相続人には遺留分がありますので、遺言書を書く場合にも注意が必要になります。例えば、遺言書により後妻に全ての財産を相続させるなど、⼦の遺留分を侵害するような遺⾔内容だった場合には争いになることが予想されます。

それでも遺⾔書を作成するメリットがあるのは、遺⾔書に⼦の遺留分を考慮した財産の分け⽅を指定しておくことで、相続⼈間で遺産分割協議をする必要がなくなり、相続人同士の話し合いなどの負担を減らし、相続手続きを円滑に進めることができます。

遺留分を配慮した遺言書の作成を検討されている方は、専門家に相談することをお勧めいたします。

③所在が分からず⾏⽅不明の家族や親族がいるとき

夫には、妻と⻑男・⻑⼥がいます。⻑男は結婚をしていて、長男には妻と⼦A・⼦Bがいますが、長男自身は行方が知れず、連絡が取れません。

このケースでは夫が亡くなり、相続が開始すると、妻(相続分4分の2)、行方不明の⻑男(相続分4分の1)、⻑⼥(相続分4分の1)の3人が相続⼈になります。

③所在が分からず⾏⽅不明の相続⼈がいるとき

夫が亡くなった後に相続が開始すると、所在が分からない⻑男を含めた相続人全員で遺産分割などの相続手続きを行う必要があるため、手段を講じて⻑男と連絡を取る必要があります。

また、遺産分割を⾏わず法定相続分で⼿続きをするとしても本⼈と連絡が取れない限りは、相続⼿続⾃体を進めることは出来ません。

こういった所在不明の相続⼈については、⼾籍の附票などを取得して本⼈の居所を調査しますが、それでも連絡が取れず、所在もわからない場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理⼈」の選任申⽴てを⾏います。

不在者財産管理⼈とは⾏⽅不明の⻑男に代わって財産の管理を⾏う⼈のことをいいます。

不在者財産管理⼈が選任された後は、他の相続⼈と遺産分割協議を行って相続手続きを進めることになりますが、裁判所の許可が必要になるなど、さらに⼿続きの手間と時間、費⽤がかかります。

さらに、⻑い間⾏⽅が分からない⼈については、失踪宣告の申⽴てを⾏って、⾏⽅不明の⻑男を法律上は死亡したとみなして⼿続きを進めることも検討しますが、同様に時間と⼿間がかかります。

このケースで遺⾔書を作成する例としては、⾏⽅不明の⻑男以外の相続⼈である妻と⻑⼥や孫である⻑男の⼦A・⼦Bと⻑男の妻に対して相続(遺贈)する財産を指定しておくなど、夫が⽣前に遺⾔書を書くことで相続開始後の遺産分割協議や裁判所に対する⼿続きなどを⾏う必要がなくなり、スムーズに相続⼿続きを進めることが可能になります。

その他遺言書の作成が必要なケース

相続⼈が多数となる

遺⾔書がない相続⼿続きでは、誰がどの財産を相続するか相続⼈全員による話し合いにより決めることになります。これを遺産分割協議といいます。

各相続⼈によって⽣活状況や価値観は異なりますので、相続⼈の数が多いほど遺産分割協議などの話し合いにおいて意⾒をまとめるのが難しくなります。

また、相続財産である不動産の名義変更や預⾦口座の解約などの相続⼿続きでは、相続⼈の内1⼈でも同意しなければ⼿続きを⾏うことはできません。

あらかじめ遺⾔書に、誰がどの財産を相続するかを指定することで、遺産分割協議を⾏う必要がなくなりますので、相続⼿続きを円滑に進めることができます。

特定の相続⼈には、必ず財産を残したい

ご⾃⾝が亡くなった後のお⼦さんや配偶者(夫・妻)など、ご家族の⽣活を保障するために、特定の相続⼈には、必ず財産を渡したいときは、遺⾔書を作成することが必要になります。

婚姻をしていない(内縁の)ご夫婦

法律上の婚姻関係にない内縁の妻(夫)は相続人になれません。⻑年⼀緒に暮らして献⾝的に尽くしてくれた⽅であっても法律上の婚姻関係にないと相手方の財産を相続する権利もありません。

したがって、内縁の奥さんに財産を渡したという想いがある方は、遺⾔書を作成することが必要になります。

判断能⼒に疑いのある相続人がいる

相続⼈の中に認知症を発症している方や判断能⼒に疑いのある⽅がいる場合は、家庭裁判所から後見人を選任してもらい、遺産分割協議を含めた相続手続きを進めることになります。

もっとも成年後見人を選任したからといって、遺産分割協議を自由にできるわけではなく、また、遺産分割協議が終了したからといって、直ぐに成年後見人を辞任若しくは解任することはできません。この部分で成年後見制度をよく知る方は、抵抗感を持たれます。

⽣前に遺⾔書を残しておくことで、遺産分割協議を行う必要がなくなり、相続⼿続きを円滑に進めることができます。

相続⼈になる⽅が1⼈もいない

独⾝の⽅でご⾃⾝が亡くなった後に、財産を相続する⼈が1⼈もいない場合は、その方の財産は国庫に帰属(国のもの)されます。お世話になった⽅や仲の良い友⼈、慈善団体や福祉団体などに、ご⾃⾝の財産を譲り渡すこともできますが、その際は遺⾔書を作成して意思を明確にすることが必要になります。

会社を経営している

会社を経営されている⽅で事業承継が絡む相続では、後継者への集中した株式の引継ぎと経営に関わらないご家族にとって公平な相続を両⽴させるためにも遺⾔書の作成が必要になります。

遺⾔書がなければ、誰が相続するかは相続⼈次第です。

相続財産に、ご⾃⾝が経営されている会社の株式が含まれるときに、後継者に株式を取得させたいと思っても遺産分割の結果によっては、必ずしも後継者が取得できる保証はなく、事業の承継⾃体が難しくなることがあります。

円満かつ円滑な事業承継のためにも遺⾔書を作成する必要があります。

相続⼈以外にも財産を譲り渡したい⼈がいる

ご本⼈の⾝の回りのお世話をしてくれた⽅や、どんなに献⾝的に尽くしてくれた⽅でも、相続人として相続する権利がなければ、ご⾃⾝が亡くなった後に財産を譲り渡すことはできません。

例えば、⾃⾝の⼦のお嫁さんや甥・姪など、献⾝的に尽くしてくれた親族や親族以外の⽅にも財産を譲り渡したいと希望される⽅は、遺⾔書を作成することが必要になります。

遺⾔書に書けること

遺⾔書には、どのような内容でも書くことはできますが、法的に有効と認められる事項は限られています。これを「遺⾔事項」といいます。

遺⾔事項には、相続・財産に関すること以外に⾝分に関するものなどが含まれます。

下記に、遺⾔事項について、ご説明します。

遺⾔事項とは

①相続に関すること

各相続⼈が財産を相続する割合を指定する

遺⾔によって、各相続⼈が財産を相続する割合(相続分)を指定することができます。
例えば、「妻に6分の4」、「⻑男に6分の1」、「次男に6分の1」など、法律に定めれられた相続分とは異なる割合の相続分を遺⾔書で指定することができます。

遺産分割の⽅法を指定する

遺産分割の⽅法を指定するとは、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」など、本来相続⼈間で話し合って決める遺産分割の内容を遺⾔書によって、あらかじめ指定しておくことです。

例えば、「⻑男に⾃宅を相続させる」や「A不動産については売却して、その売却⾦を⻑男に4分の1、次男に4分の3を相続させる」などです。

※遺産分割⽅法について詳しくは「遺産分割協議書の作成」をご覧ください。

遺産分割を禁⽌する

遺言によって、相続⼈間で遺産分割協議を行うことを5年間に限り、禁⽌することができます。

遺⾔執⾏者の指定(または指定の委託)

遺⾔執⾏者とは、遺⾔書に書かれた内容を実現するために相続⼈に代わって⼿続きを⾏う⼈のことをいいます。

遺⾔執⾏者は、家庭裁判所に申立を行い選任してもらうこともできますが、遺言書の中で、自身が信頼している親族や知⼈の⽅を遺⾔執⾏者に指定しておくこともできます。

※遺⾔執⾏者について、詳しくは「遺⾔執⾏者について」をご覧ください。

特別受益の持ち戻しを免除する

特別受益の持ち戻し」とは、特定の相続人が被相続人から生前に財産の贈与を受けた場合や遺言書により財産の遺贈を受けた場合には、他の相続人との公平を図る目的で、その贈与や遺贈された財産を相続財産に加えて、各相続人の相続分を再計算することをいいます。

例えば、夫には、妻と長男がいたとします。夫は、現金4,000万円を所有しており、生前に夫から妻に1,000万円を贈与したとします。

夫が亡くなった後は、残りの3,000万円が相続財産となります。このときに、妻への1,000万円の贈与を考慮しなければ、3,000万円を妻が1,500万円、⻑男が1,500万円を相続することになります。

ただし、長男は、妻への贈与1,000万円が無ければ、亡夫(父)の本来の財産である4,000万円の内、2,000万円を相続できたことになります。そこで、相続人間の公平を図るために、生前に妻へ贈与された1,000万円を特別受益とみなして相続財産に加えて、各相続人の相続分を計算することができます。

これが「特別受益の持ち戻し」です。

特別受益を持ち戻して計算した相続分

  • 長男の相続分(3,000万円+1000万円)× 1/2 - 0円 = 2,000万円
  •  妻の相続分(3,000万円+1000万円)× 1/2 - 1,000万円 = 1,000万円

上記が特別受益の持ち戻しとなりますが、遺言書に妻に贈与した1,000万円を相続財産に加えることを免除する旨を記載することにより、夫が亡くなったときに所有していた3,000万円を相続財産として、当初の相続分である妻が1,500万円、⻑男1,500万円として各相続人に財産を相続してもらうことができます。

これが「特別受益の持ち戻し免除」になります。

⼀部の相続⼈に贈与したことが後々トラブルにならないよう、特別受益の持ち戻しを免除する旨を遺言書に記載して明確に意思表⽰をすることが必要になります。

遺留分侵害額請求の方法を指定する

「遺留分(いりゅうぶん)」とは、一定の相続人に保証されている最低限の相続分のことをいいます。ただし、遺留分が認められるのは、被相続人の配偶者、直系尊属(子など)、直系尊属(父・母など)です。(※被相続人の兄弟姉妹には、遺留分は認められてません。)

そして、遺留分を有する相続人が財産の一切を相続できない場合には、遺留分に相当する金銭の支払いを財産を譲り受ける相続人等に対して請求することができます。

例えば、相続財産の総額が4,000万円として、被相続人には妻、長男、次男がおり、「妻に2,000万円、次男に2,000万円を相続させる」と遺言書に書いた場合は、財産の一切を相続できない長男は、遺留分に相当する金銭の支払いを妻と次男に請求できます。

このときに、妻が負担する遺留分を減らしたい場合には、長男が遺留分を請求する際の相手や順番を遺言書に定めておくことができます。(※妻に遺留分を請求しないよう指定することはできません。)

例えば、「遺留分侵害額については、まず次男に請求を行い、その後に妻に請求するように定める」と遺言書に書くことで、長男は次男にまとめて遺留分侵害額請求ができます。

補足として、前述した「特別受益の持ち戻しの免除」と「遺留分」の関係ですが、特別受益の持ち戻しの免除をしても遺留分を有する相続人は、過去に贈与された財産を加えて、遺留分を請求することができます。相続分の計算とは、取扱いが異なることになります。

※遺留分について、詳しくは「遺留分とは」をご覧ください。

相続⼈の廃除および廃除の取り消し

相続⼈の廃除とは、特定の相続⼈の相続権を失わせるための法律上の制度です。

例えば、お⼦さんが⾃⾝に対して虐待をしたり、著しい⾮⾏を⾏ったりした場合には、その⼦が⾃⾝の相続⼈となる資格を奪う(廃除)ことができます。

相続⼈の廃除をする⽅法は、本人の⽣前に家庭裁判所に申⽴てをするか、相続⼈を廃除することを遺⾔書へ書く⽅法の2つです。

したがって、自身が亡くなった後に、特定の相続⼈を廃除したい場合には、その旨を記載した遺言書を作成する必要があります。

反対に、⽣前に家庭裁判所で相続⼈の廃除が認められた場合でも遺⾔書に書くことで相続⼈の廃除を取り消すことができます。

ただし、遺言書により、相続人の廃除又は廃除の取消しをする場合には、遺言執行者が手続きを行う必要があり、遺言書で遺言執行者を指定をするか、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうことが必要になります。

※遺言執行者について、詳しくは「遺言執行者について」をご覧ください。

②その他財産に関すること

相続⼈以外の⼈に財産を譲り渡す(遺贈する)

遺言書により、財産を譲り渡す相手は相続人以外の人であっても可能です。このときに、相続⼈以外の⼈に財産を譲り渡すことを「遺贈」といいます。

例えば、遺言書に相続人以外の親族である甲に対して、「甲に財産の2分の1を遺贈する」など割合を指定して財産を承継してもらうことや「甲に、X不動産を遺贈する」など、特定の財産を指定して譲り渡すこともできます。

また、譲り渡す相手は、個人だけではなく、法⼈や団体などに財産を遺贈(「遺贈寄付」ともいいます。)することもできます。

信託の設定

遺⾔により、信託(家族信託・⺠事信託)を設定することもできます。

ただし、遺言により、信託を設定したとしても遺言書を書いた本人が亡くなった後に受託者となる人から承諾を得られないと信託を開始することが事実上困難になることがあります。

遺言書により家族(⺠事)信託を設定することを検討されている方は、予備的な受託者を定めるなどの工夫や確実に信託を設定するのであれば、信頼できる方と生前に信託契約を締結する方法をおすすめいたします。

※家族信託・民事信託について、詳しくは「家族信託(家族のための信託)とは」をご覧ください。

⽣命保険⾦の受取⼈変更

遺⾔書に書くことで、⽣命保険の保険⾦受取⼈を変更することができます(保険法44条1項)。

ただし、遺⾔書により、生命保険金の受取⼈を変更する場合は、あわせて保険会社に受取⼈の変更があったことを知らせるための「通知」が必要になります(保険法44条2項)。

この通知をしなければ、変更後の受取⼈は保険会社へ保険⾦を請求することはできませんので、ご注意ください。

③⾝分に関すること

⼦を認知する

認知とは、婚姻関係にない男女の間で⽣まれた⼦を父親が自身の子であると認める手続きのことです。

認知は、父親の生前に手続きをすることもできますが、遺⾔書に書くことで父親自身が亡くなった後に子を認知することができます。ただし、遺言書により、子を認知する場合には遺言執行者から認知届出などの各種手続きを行う必要があるため、遺言書に遺言執行者を直接指定するか、家庭裁判所に申立てを行い遺言執行者の選任をしてもらう必要があります。

遺⾔書で認知された⼦は、亡父の相続⼈として財産を相続することができるようになります。

※遺言執行者について、詳しくは「遺言執行者について」をご覧ください。

未成年者の後⾒⼈や後⾒監督⼈の指定

未成年のお⼦さんがいる方が亡くなった後に親権者となる人がいなくなる場合には、その⼦の監護養育や財産管理を⾏う⼈である後⾒⼈を遺⾔書で指定することができます。

また、未成年後⾒⼈の事務を監督する、後⾒監督⼈も遺⾔書で指定することができます。

その他

祭祀承継者の指定

お墓や仏壇などの先祖を守るための財産を承継する⼈を遺⾔によって指定できます。

付⾔事項について

遺言書に書けることは遺言事項以外にも付⾔事項があります。付言事項とは、相続や財産に関すること以外に、ご⾃⾝から家族などに最後に伝えておきたいメッセージのことです。

具体的には、遺⾔書を作成するに⾄った趣旨や経緯などを遺⾔者⾃⾝から家族や親族、関係者に対して感謝の⾔葉などを交えて付言事項として遺言書に書くことです。仮に不平等と思われる遺⾔内容でも、付言事項を併せて書くことで相続⼈間の紛争を最⼩限に防ぐことが期待できます。

反対に、遺⾔書に付⾔事項を書いていないと、相続⼈間であらぬ誤解が⽣じてトラブルに発展する可能性があります。

付⾔事項は法的な効⼒はありませんが、ご⾃⾝の想いを伝えることは、本⼈だけではなく残された家族にとっても⼤切です。

付⾔事項の例

妻に多くの財産を残したい

私は、永年にわたり献⾝的に尽くしてくれた妻である○○に⼼から感謝しております。

私がこのように財産を○○に相続してもらうのは、これまでかけた苦労に報いるためにも○○には⽼後の⽣活をのんびり過ごしてほしいと、切に願っているからです。

⻑男□□や⻑⼥△△は納得できないこともあるでしょうが、⽗の最後のわがままと思いどうか理解してください。私の亡き後も揉めることなく家族皆がお互いを助け合って幸せな⼈⽣が送れることを願っております。

相続⼈以外へ財産を譲り渡したい

⻑男□□の嫁である○○さんには、私の介護をお願いすることになり⼤変な苦労と負担をかけてしまいました。

ただでさえ、孫たちの⾯倒をみるだけでも⼤変なのに、○○さんはいつも⼀⽣懸命で最期まで献⾝的に私の⾝の回りのお世話をしてくれたことに感謝しています。

その苦労を報いるためにも、先に記載したとおり、○○さんに私の遺産の⼀部を遺贈いたします。

葬儀を⾝内だけで執り⾏ってほしい

私が死亡した後は葬儀および告別式は執り⾏わずに、家族だけの葬儀でささやかに済ませてくれることを望みます。

遺⾔書の作成を検討している⽅へ

遺⾔書を書こうと思ってはいるけど、いざ書こうと思ったら気が重くなったり、実際に書こうと思っても何を書けばいいか迷われている⽅がいます。

そういった⽅に向けて、司法書⼠の⽴場からお伝えしたいことは、ご⾃⾝のために遺言書を書くのではなく、ご家族や周辺関係者のために書くことを意識してみてください。

司法書士は、相続手続き業務を通して、当事者ではなく第三者の⽴場から故人のご家族と関わりますが、実際に相続が開始すると亡くなった本⼈が意図せず、相続⼈の方々が苦労されている場⾯をよく目にします。

遺言書を書くことで、ご自身が亡くなった後の意思を明確にして、残されたご家族が適切かつ円滑に手続きを進めることができます。

また、遺言書の内容や作成の方法を迷われている方は、弁護士や司法書士など専門家に相談してみることもお勧めいたします。専門家であれば、第三者の立場から最適なご提案とサポートをして頂けると思います。

当事務所でも遺⾔書の相談から⽂案の検討及び遺言書の作成が完了するまでを一括してサポートさせて頂きます。お気軽にご相談いただければと思います。

keyboard_arrow_up

電話番号 問い合わせバナー 無料相談について