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株式・有価証券も相続財産となる
被相続人(亡くなった方)が株式・有価証券を所有していた場合には、不動産や預金と同じく株式・有価証券についても相続手続きが必要になります。
一般的に株式・有価証券といわれるものには、証券取引所で売買されている「上場株式」と、親族で経営している会社の株式のように、証券取引所での売買を予定されてない「非上場株式(非公開株式ともいいます。)」の2種類あります。
上場株式は、証券会社の証券口座で管理されています。したがって、相続手続きについても被相続人の証券口座がある証券会社に対して行うことになります。
また、被相続人が会社を経営しており、その会社の株主である場合には、被相続人が保有している株式(非上場株式)を後継者(相続人等)に承継させるために株主名簿の書換え手続きが必要になります。
いずれにしても、株式の名義が被相続人のままでは、配当金を受け取ったりすることができず、また、株主が確定しないと株主総会において議決権が行使されずに、会社経営に大きな影響を及ぼすこともありますので、株式・有価証券についても相続手続が必要になります。
上場株式の相続⼿続きについて
上場株式の相続手続きには、相続人の証券口座が必要
現在の上場株式は全て電子化されており、証券会社にある証券口座で管理されています。 そして、上場株式を相続するときは、被相続人が保有している上場株式を被相続人の証券口座から相続人の証券口座に移し替える手続きが必要になります。
これを口座の移管手続きといいます。
したがって、相続した上場株式等を直ぐに売却する予定でも相続人が証券口座を持っていない場合は、新たに相続人名義の証券口座を開設した後に、株式を売却するという流れになります。
また、相続人が被相続人の口座のある証券会社とは、異なる証券会社に証券口座を持っている場合でも、その口座への移管手続きに各証券会社が対応できないときは、被相続人と同じ証券会社に相続人が新たに証券口座を開設して移管続きを行うことになります。
相続手続きに必要となる書類や手続きの流れは、預貯金の相続手続きと似ている部分がありますが上場株式を相続するときは、相続人の証券口座が必要になることに特徴があります。
上場株式の相続⼿続きの流れ
ここからは、被相続人の証券口座から相続人の証券口座に、株式を移管するまでの手続きについて、ご説明いたします。
基本的な手続きの流れは、以下のとおりです。
被相続人宛に証券会社から送られてくる郵便物やパソコン・スマートフォンのメール、閲覧履歴などから口座のある証券会社を調べます。
- 相続が発生した旨を証券会社に連絡して、所定の必要書類を取り寄せます。
- 併せて口座のある証券会社に残高証明書を請求します。
証券会社などから送られてきた書類に必要事項を記入して、戸籍謄本などの必要書類と一緒に、証券会社に提出します。
相続人名義の証券口座を開設した後、株式の移管手続きが行われます。
※口座の移管手続きが完了した後に、株式の換金(売却)が可能となります。
STEP.1 被相続⼈の証券⼝座を調べる
被相続人が上場株式を保有していたのかを調べるには、被相続人の証券口座がある証券会社(上場株式等の場合)を特定することから始めます。
株取引をされていた方であれば、毎年一定の時期に証券会社から運用報告書、目論見書、取引残高報告書などの書類が郵送されてきます。これらの書類を確認すれば、被相続人の証券口座がある証券会社を特定できます。
また、インターネットを利用して株取引をしている場合は、被相続人のパソコンやスマートフォンのメールや閲覧履歴などから取引先の証券会社が判明することもあります。
証券口座のある証券会社が判明しない場合
被相続人の証券口座がある証券会社が判明しないときは、「証券保管振替機構(通称:ほふり)」に開示請求をします。
ほふりとは、証券会社等などから預けられた上場株式等の保管業務を集中的におこなっている機関のことです。ほふりに、「登録済加入者情報の開示請求」という手続きを行うことで、被相続人がどこの証券会社と取引していたのか判明します。
ただし、ほふりから開示される情報で判明するのは、被相続人の証券口座がある証券会社や信託銀行までになります。被相続人の証券口座にある株式の銘柄や数量などを確認するためには、開示情報に記載されている証券会社等に問合せをして残高証明書の発行請求をします。
〈必要書類〉証券保管振替機構(ほふり)への開⽰請求
- 開⽰請求書(証券保管振替機構から取り寄せます。)
- 被相続⼈の⼾籍(除籍)謄本と住⺠票の除票(⼜は⼾籍の附票)
- 相続⼈の⼾籍謄本と印鑑証明書(発行後6か月以内)
- 相続⼈の本⼈確認資料(ex.運転免許証の写しなど)
- 発⾏⼿数料(1通/6,050円程)
STEP.2 証券会社への連絡と残高証明書の請求
証券口座のある証券会社等に相続があった旨を連絡して、口座の移管手続きの手順と必要書類の確認、証券会社の所定の書類なども一緒に取り寄せます。
また、被相続人が亡くなったときに保有していた株式の銘柄や数量などが判明しない場合には、証券会社に残高証明書の発行請求をします。
残⾼証明書とは
預金の相続手続きでも被相続人が死亡した日の預金残高を確認するために、銀行から残高証明書を取得しますが、上場株式の相続手続きでも同様に被相続人が亡くなった時に、どのくらいの株式(銘柄や数量)を保有していたのかを確認するために証券会社から残高証明書を取得します。
この残高証明書は、相続人の1人からでも発行の請求ができます。また、証明する日を指定して請求できますので、相続税の申告が必要な方は、被相続人の死亡日時点の残高証明書を取得します。また、過去の株取引の履歴を確認したい場合には、残高証明書と一緒に取引履歴証明書も取得します。
残高証明書は、相続税の計算にも役立つ
残高証明書は、上場株式の相続税評価額を算定する際の参考にもなります。
日々価額が変動する上場株式を相続したときに相続税が生じる場合は、いつの時点の株価で相続税を計算するのかがポイントになります。
税務上は、上場株式の相続税評価額を下記の①~④のいずれかを選択して計算することになります。
※詳しくは、専門家である税理士の方へご相談ください。
- 故⼈が亡くられた⽇の終値
- 故⼈が亡くられた⽇の⽉の取引⽇ごとの平均終値
- 故⼈が亡くられた⽇の⽉の前⽉の取引⽇ごとの平均終値
- 故⼈が亡くられた⽇の⽉の前々⽉の取引⽇ごとの平均終値
証券会社から残高証明書を取得すると被相続人の死亡日を基準とした上記4つの価額を確認することができます。
相続⼈間の遺産分割協議や相続税の申告が必要な場合には、この残⾼証明書が非常に役⽴ちますので取得することをおすすめします。
残高証明書を発行する際のポイント
- 死亡⽇時点での残⾼証明書を取得する。
- 被相続人の証券口座のある証券会社に発行の請求をする。
- 相続税の申告が必要な⽅は必ず取得する。
〈必要書類〉残高証明書の発行請求
- 発行依頼書(証券会社の所定様式による)
- 被相続⼈の⼾籍(除籍)謄本と住⺠票の除票(⼜は⼾籍の附票)
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の印鑑証明書(※発行日などの有効期限は要確認)
- 相続人の本人確認資料(ex.運転免許証の写しなど)
- 発⾏⼿数料(1通/1,100円程)
※各証券会社ごとに、事前の確認は必要です。
STEP.3 必要書類の準備と提出
口座の移管手続きに必要な書類を収集して、証券会社に提出します。
必要書類は、遺言書の有無など相続手続きの内容や方法により異なります。
下記に、必要書類をケース別にまとめましたのでご覧ください。
※ただし、証券会社ごとに取扱いが異なることがあります。
必要書類について
①遺産分割協議書が有る(遺言書がない)
遺言書が無く、遺産分割協議書が有る場合は、概ね次の書類が必要となります。
必要書類
- 証券会社所定の書類(株式名義書換依頼書など)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
※法務局が発行する「法定相続情報一覧図の写し」を提出すれば戸籍謄本一式の提出は不要です。法定相続情報一覧図の写しについては、こちらをご覧ください。 - 相続人全員の印鑑証明書・住民票(又は戸籍の附票)
- 遺産分割協議書(相続人全員が実印を押印する)
②遺言書が有る
遺言書が有る場合の相続手続には、概ね次の書類が必要となります。
必要書類
- 証券会社所定の書類(株式名義書換依頼書)
- 遺言書(検認済証明書付)または公正証書遺言書
- 被相続人の死亡の事実が確認できる戸籍(除籍)謄本
- 株式を相続する人の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書及び実印
- 遺言執行者の印鑑証明書(遺言書で遺言執行者が指定されている場合)
- 遺言執行者の選任審判書(家庭裁判所で遺言執行者を選任している場合)
③遺言書が無く、遺産分割協議書も無い
遺言書が無く、遺産分割協議書も無い場合の手続には、概ね次の書類が必要となります。
各相続人は、法定相続分で株式等を相続することになります。
必要書類
- 証券会社所定の書類(株式名義書換依頼書)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
※法務局が発行する「法定相続情報一覧図の写し」を提出すれば戸籍謄本一式の提出は不要です。 - 相続人全員の印鑑証明書・住民票
STEP.4 相続⼈の証券⼝座を開設・移管が完了
証券会社に書類を提出してから2週間から3週間程で相続人の証券口座が開設されて、相続した上場株式が被相続人の証券口座から相続人の証券口座に移管されます(口座の移管手続き)。
口座の移管手続きが完了した後に、相続した株式を売却することができます。
相続した上場株式を売却する方法
相続した上場株式を売却するための具体的な方法は、相続人の内1人が代表者として株式を一括して売却する方法と株式を相続した各相続人が個別に売却する2つの方法があります。
上場株式の売却方法
相続人1名が証券口座を開設して、株式の一括売却を行う方法
相続人の内1人が代表者相続人として証券口座を開設して口座の移管手続きをした後に、株式の売却手続きを行い、売却代金を代表相続人から各相続人に分配する方法です。
相続した株式を相続人全員が現金で分配することに同意するのであれば、もっとも最適な方法となります。
各相続人が個別に証券口座を開設をして、株式を売却する方法
遺産分割協議により、各相続人ごとに相続する上場株式の銘柄や数など、相続する割合を定めた場合には、相続人が個別に証券口座を開設して売却することもできます。
ただし、証券会社に対する相続手続きは、あらかじめ遺産分割の内容を証券会社に申し出る必要があり、手続きが完了した後に、遺産分割協議をやり直したい場合でも手続きのやり直しを再度申し出ることは基本的にはできません。
また、遺産分割協議をやり直すとなると相続税以外にも贈与税などの税金が別途課税される可能性もあります。遺産分割の際に、相続財産である上場株式の運用・売却などの方針を相続人全員でしっかりと話し合うことも必要になります。
上場株式を相続する際の注意点
準確定申告が必要になることもある
被相続人が生前に、株取引若しくは株式の売却などにより利益(譲渡益)を出していた場合には、確定申告が必要になります。その確定申告を被相続人に代わって相続人が行うことを準確定申告といいます。
準確定申告の手続きは、相続開始から4か月以内という期限があります。ただし、被相続人の証券口座が「特定口座(源泉徴収あり)」であれば、準確定申告は不要です。
※詳細については、証券口座のある証券会社や専門家である税理士の方にご相談ください。
相続した株式を売却したときの税金
相続した上場株式を売却することにより利益が生じた場合には、相続人に対して相続税とは別に譲渡所得税が課税される可能性があります。
譲渡所得税とは、株式を売却したときの利益に対して課税される税⾦のことです。
税⾦の計算式は、以下のとおりです。
〈計算式〉
(株式の売却価格−株式の取得価格)×20.315%=譲渡所得税・住⺠税 |
譲渡所得税が生じる場合は、相続税の申告とは別に相続人自身の確定申告が必要になりますが、相続人が開設する証券口座の種類により確定申告の要否が変わります。証券会社に開設している証券口座が「特定口座で源泉徴収あり」であれば、原則として確定申告は不要となります。
相続した株式を直ぐに売却するのであれば、口座の移管手続きの際に相続人が開設する証券口座を特定口座(源泉徴収あり)を選択して開設するようにします。
※譲渡所得税について詳しくは、専門家である税理⼠の方にご相談ください。
その他に必要となる手続き
単元未満株式の相続手続き
元々、株式は株券という紙で管理されていましたが、2009年以降は、紙の株券が全て廃止されて、株式の電子化がされています。
株式の電子化とは、株主自身が保有していた紙の株券を証券会社に預けて、その後は証券保管振替機構(ほふり)及び証券会社等に開設された証券口座において、株式を電子的に管理するというものです。
その際に、当初から株券が発行されていなかった単元未満株式などは、証券会社に株券を預けることができず、電子化されなかった経緯があります。
そういった電子化されなかった単元未満株式は、発行会社が指定した信託銀行(株主名簿管理人)の「特別口座」で管理されていることがあります。
特別口座とは、電子化されなかった株式を管理するために、信託銀行等の株主名簿管理人が開設した口座のことをいいます。
単元未満株式とは
上場株式には、銘柄ごとに売買するための最低限の株式数が決められています。その株式の売買単位のことを「1単元」といい、1単元に満たない株式のことを「単元未満株式」と呼びます。
通常は、株式を売買するための1単元が100株とされており、例えば120株を保有している方は、20株が単元未満株式となります。
この単元未満株式には、株主総会における議決権等も認められていないので、1単元に満たない株式を保有している株主には、株主総会の招集通知が送られてこないなど、被相続人である本人自身もその存在を忘れているケースがあります。
ただし、この単元未満株式も通常の株式と同様に相続手続きの対象となります。
単元未満株式の有無を調査する方法
被相続人が単元未満株式を保有しているか調査する方法は、以下の3つになります。
①配当金計算書を確認する
株式を保有している株主に対しては、毎年、一定時期に配当金が支払われます。配当金が支払われる際に、株主名簿管理人(信託銀行等)から株主宛に「配当金計算書」が送られてきます。
配当金計算書には、保有している株数、配当金額のほか、配当金から差し引かれる税額が記載されています。この税額の欄が「***」(アスタリスク)で表示されていて具体的な税額が記載されていないときは、「株式数比例配分方式」という配当金の受け取り方を選択しており、株式等を保有している証券会社の口座で単元未満株式を管理していることになります。したがって、この場合は、口座のある証券会社に問合せをして、単元未満株式についても併せて相続手続きを行います。
その反対に、具体的な税額が明記されている場合は、所有株数の欄に記載されている株数から単元未満株(100株未満)にならないかを確認します。単元未満株式であることが判明すれば、配当金計算書に記載されている株主名簿管理人(信託銀行等)に問い合わせてをして相続手続きを行います。
②証券保管振替機構(ほふり)への開示請求
被相続人が取引していた証券会社が判明しないときは、「ほふり」に開示請求することは、先程ご説明しました。
ほふりからの開示情報には、証券口座のある証券会社以外にも「信託銀行等」が記載されていることがあります。開示情報に信託銀行等の記載がある場合には、「特別口座」で管理されている株式が存在している可能性があります。
ただし、特別口座が開設できる会社は限られており、開示情報に、以下の会社が記載されている場合には、個別に問い合わせて相続手続きを行います。
- 三菱UFJ信託銀行
- みずほ信託銀行
- 三井住友信託銀行
- 東京証券代行株式会社
- 日本証券代行株式会社
- 株式会社IR Japan(アイ・アールジャパン)
③特別口座のある信託銀行等に問い合わせる
配当金計算書やほふりの開示情報から特別口座のある信託銀行等が判明した後は、直接問い合わせて特別口座にある単元未満株式の銘柄や数量などを問い合わせます。
ほふりへの開示請求をせずに、上場株式の銘柄(会社名など)だけでも判明していれば、株式を発行している会社のホームページ等から株主名簿管理人を確認して、個別に問い合わせて手続きをすることもできますが、却って手間と時間がかかります。
ほふりへの開示請求を行ってから問い合わせた方が効率的であり、確実な方法です。
単元未満株式を相続する方法
単元未満株式を相続する方法は、以下のとおりです。
①相続人の証券口座に移管して保有する
単元未満株式を売却せずに、保有することを希望する場合には相続人名義の証券口座へ移管(移し替える)することになります。
相続人の特別口座を開設することはできないので、移管先となる口座は証券会社の証券口座になります。したがって、相続人が証券口座を持っていなければ、新たに口座を開設する必要があります。
手続の内容や必要書類は、上場株式を相続する際の手続きと基本的には同じ流れとなりますが、あらかじめ特別口座のある信託銀行と移管先の証券口座がある証券会社に、手続きの手順や必要な情報などを確認します。
②単元未満株式を買い取ってもらう(売却する)
単元未満株式は、株主名簿管理人(信託銀行など)を介して、株式を発行している会社に買い取ってもらうことができます。これを単元未満株式の買取請求といいます。
単元未満株式は、株式の売買単位に満たない株式であるため証券取引所での売買(売却)ができません。そのため単元未満株式を売却したい場合には、株式を発行している会社に買い取ってもらうよう請求します。
買取請求の手続きは、口座の移管手続きをせずに、被相続人の特別口座にある株式を直接買い取ってもらうか、相続人の証券口座に移管してから買取請求をすることもできます。
始めから単元未満株式を保有するつもりがなければ、口座の移管手続きをせずに、買取請求を行う方が手間が掛からずに済みます。
未受領配当金の相続手続き
配当金とは、株式を発行している会社が利益の一部を株主に還元する目的で会社から株主に配当する金銭のことです。
配当金は、各会社ごとに定められた一定の時期に配当する金額を確定して、株式を保有している株主に支払われることになります。
そして、株主の死亡等によって、受け取られない配当金のことを未受領配当金といいます。未受領配当金があれば株式の相続手続きと併せて手続きを行います。
未受領配当金も相続財産に含まれる
被相続人が受け取っていない配当金(未受領配当金)も相続財産となります。
未受領配当金は、株式を相続する相続人が同時に相続すると思われがちですが、上場株式とは、別に配当金についても遺産分割協議が必要になり、協議が成立するまでは相続人全員が配当金を共有することになります。
したがって、配当金を相続するときは、遺産分割協議で配当金を相続する人を別途定める必要があります。通常は、遺産分割協議書の中に上場株式を相続する人が併せて未受領配当金を相続する旨を記載します。
未受領配当金の調査と相続手続きの方法
①「配当金送金依頼書」又は「振替払出証書」がある
株主名簿管理人(信託銀行等)から被相続人宛に「配当金送金依頼書」が送付されている場合は、被相続人が受け取っていない配当金があるということです。
被相続人が配当金を銀行口座で受け取っていた場合には、被相続人の死亡により銀行口座が凍結されて、株主名簿管理人からの配当金も振り込めなくなります。そういった場合に、株主名簿管理人から被相続人宛に「配当金送金依頼書」という書類が送付されます。
相続人は、新たな受取先口座を指定するなど、配当金を受け取るための手続きを株主名簿管理人に対して行います。
その他にも「振替払出証書」という書類が送られてきた場合には、ゆうちょ銀行に、振込払出証書を持参して手続きを行うことで配当金を受け取ることができます。
②「配当金領収証」がある
配当金領収証とは、株主名簿管理人(信託銀行等)から株主宛に送られてくる配当金を受け取るための証明書になります。ゆうちょ銀行に、配当金領収証を持参して相続手続きを行うことで配当金を受け取ることができます。
配当金領収証は、被相続人が配当金を受け取っていなかった場合の他に被相続人が死亡した後に、配当金が発生した場合にも送られてきます。
ただし、配当金領収証には、配当金を受け取ることができる期限(払渡期間)が定められており、期限が過ぎた場合は、配当金領収証では配当金を受け取ることはできません。期限が過ぎている配当金領収証がある場合には、別途株主名簿管理人(信託銀行等)に問合せをして、配当金を受け取るための手続きを行う必要があります。
③「証券会社」や「株主名簿管理人」に問い合わせる
証券口座のある証券会社や信託銀行等(株主名簿管理人)に請求することで、未受領配当金の有無を調査してもらうことができます。
調査を依頼する際は、所定の「証明書発行依頼書」と共に、被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本や請求する相続人の戸籍謄本等が必要になります。
その後、未受領の配当金を受け取るための相続手続きを行います。
⾮上場株式の相続⼿続きとは
⾮上場株式の相続⼿続きは、証券会社ではなく、株式を発行している会社に直接問い合わせるか、株式を発行している会社の登記簿謄本を取得して、株主名簿管理人の記載がある場合には、その株主名簿管理人に問い合わせをして相続手続きを進めていくことになります。
相続手続の内容や必要書類は、各発行会社ごとに異なりますが、通常は株主名簿の書換えや相続により取得した株式を発行会社に売却するための手続きを行います。
また、非上場株式を相続するときの相続税評価額の計算は、非常に複雑であるため専門家である税理士に相談しながら手続きを進めていくことをおすすめします。
当事務所の業務について
株式・有価証券の相続⼿続きは、預⾦⼝座の相続⼿続きと共通しているところがありますが、株取引を普段は⾏わないという相続⼈の⽅にとっては、何から⼿を付けていけばよいのか分からないという⽅もおられます。
当事務所では、証券会社への問合せや書類の取り寄せ、⼾籍謄本などの必要書類の収集、遺産分割協議書の作成など、株式を相続するときに必要となる手続きを一括してサポートさせて頂きます。
相続⼿続きにご不安があったり、お⼿間を感じられる⽅は、お気軽にご相談ください。
株式・有価証券の相続⼿続きの業務内容
ご依頼頂いた場合の当事務所の業務内容は、以下のとおりです。
- ⼾籍謄本などの必要書類の取得(相続⼈調査)
- 法定相続情報⼀覧図と申出書の作成・申出・交付
- 財産⽬録の作成(必要に応じて)
- 遺産分割協議書の作成
- 相続⼈間での必要書類の押印⼿配
- 証券会社への⼿続き代⾏(書類の⼿配・提出など)
当事務所へのご依頼から完了までの流れ
当事務所へのご依頼から完了までの基本的な流れは、下記になります。
※証券会社や⾦融機関によって手続きの内容が異なることがあります。
- ご相談時に、相談者様(相続人代表者)の身分証明書(運転免許証など)と証券会社からの郵送物や被相続人の戸籍謄本(1通)をご用意ください。
- ご相談内容に基づき、お手続きの進め方や費用(見積)などをご案内いたします。
正式なご依頼を頂いた後は、相続人皆様から当事務所作成の委任状へ署名・捺印(実印)を頂きます。
※相続人の方は実印と印鑑証明書のご用意をお願いいたします。
当事務所から証券会社に問い合わせて書類の取り寄せや戸籍などの必要書類を収集します。
遺産分割協議書など必要書類に相続人全員から署名・捺印(実印)をいただきます。
当事務所にて、証券会社へ必要書類を提出し手続きを行います。
書類提出後、2週間から3週間程で相続人の証券口座が開設されて移管手続きが完了します。