記事をご覧いただき、有難うございます。港区の司法書士の山田武史です。
一部の相続人と連絡が取れず、所在も分からない場合は、そのままでは相続手続きを進めることができません。
この記事では、行方不明の相続人がいる場合の相続手続きの進め方について解説いたします。
このページの目次
行方不明の相続人を特定する方法
①行方不明者の住所を特定することから始める
住所や連絡先が分からない相続人がいる場合は、まず、その相続人の住所を調べることから始めます。住所を調べるには、その相続人の戸籍謄本を取得し、戸籍に書かれている本籍地で「戸籍の附票(こせきのふひょう)」を取得します。戸籍の附票には、その本籍地で戸籍が作られてから現在までの住所移転の履歴が記載されています。
そして、戸籍の附票に記載されている最新の住所地宛にお手紙を送ります。お手紙の内容としては、相続が発生したことや、相続人であることを理解してもらうために、相続関係を示した図などを同封し、相続手続きに協力してもらいたい旨を記載します。また、折り返しの連絡がもらえるよう、送り主であるご自身の連絡先を明記しておくことも必要になります。
ここで、ご注意頂きたいのが遺産分割協議書をいきなり送ってしまうと、相手の気分を害したり、不安にさせてしまうこともあり、手続きに協力してもらえないだけはなく、トラブルに発展する可能性もあります。お送りする書類や内容については慎重になる必要があります。
戸籍の附票に海外へ転出している記録がある場合は、日本国内に居住していない可能性があります。その場合は、海外に住んでいる相続人の親族や共通の知人に連絡先を聞いてみるか、外務省に「所在調査」を依頼する方法があります。
所在調査とは、海外に居住しているが、その所在が確認されていない日本人の連絡先等を外務省が調査するサービスのことです。
ただし、調査依頼ができるのは、その本人の3親等内の親族に限られ、また、所在が判明しても所在地を開示することに、その海外に居住している本人から同意を得られなければ開示されません。
引用元:外務省ウェブサイト「所在調査」
② 連絡しても返信がないとき
住所や電話番号が判明していてもお手紙を返信してもらず、連絡も来ない場合は、何らかの理由で無視している可能性があります。
こういった場合は、家庭裁判所を介して話し合いの機会を設ける方法があります。この方法を「遺産分割調停」といいます。
家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てると相手方に呼び出し状が送達され、裁判官と調停委員が相続人全員から事情を聴き取り、遺産の分け方について話し合いによる解決を図ります。仮に、話し合いがまとまらなかったり、相手方の相続人が調停手続に協力しなかった場合には、審判手続きに移行されて、裁判官が遺産の分け方について審判を下します。
もっとも遺産分割調停は裁判所を介した手続きであるため時間や費用もかかります。遺産分割調停は最後の手段として、調停を申し立てる前に粘り強く連絡を試みるようにしましょう。
③相続人の所在が全く分からず、連絡を取る手段がない
行方不明の相続人が住民票や戸籍の附票に記載されている住所には実際に住んでいなかったり、その住所地に居住していた形跡はあるが帰ってくる見込みがなく、連絡を取る手段もない場合の対応方法は、以下に記載する2つの方法です。
不在者財産管理人を選任してもらう
一部の相続人の所在や連絡先が分からず、行方不明である場合は、家庭裁判所に申立てをして「不在者財産管理人」を選任してもらいます。
家庭裁判所は、提出された申立書や資料を確認して、申立人や行方不明になっている相続人の親族から事情を聴取し、不在者財産管理人を選任することが相当であると判断した場合に、不在者財産管理人を選任します。
不在者財産管理人は、行方不明になっている相続人自身の財産を管理したり、家庭裁判所から許可を得たうえで、その行方不明の相続人に代わって遺産分割協議や相続手続きを行うことができます。
行方不明になった経緯や期間によっては、「失踪宣告」を申し立てる
失踪宣告とは、生死不明になってから一定の期間が経過している人については、家庭裁判所の審判によって法律上死亡したものとみなす制度です。
失踪宣告には、その人が行方不明となった経緯や期間に応じて、「普通失踪」と「特別失踪」の2種類があります。
普通失踪
普通失踪とは、家出などにより、ある日突然連絡が途絶えてから生死不明の状態が7年経過している場合に、家庭裁判所に申立てることで、その7年が経過した日に死亡したものとみなされる制度のことです。
特別失踪
特別失踪とは、震災や災害、事故により生死不明となって1年経過している場合、家庭裁判所に申立てることで、その震災や災害、事故にあった時に死亡したものとみなす制度のことです。
相続手続きでは、行方不明の相続人について失踪宣告されると、その相続人(行方不明者)を死亡したものとして遺産分割協議を含めた相続手続きを行います。また、死亡したものとみなされた相続人(行方不明者)に配偶者や子などが存在する場合は、遺産分割協議などの相続手続きに加わってもらい手続きを進めることになります。
相続発生したときに困らないよう対策しましょう
ここまでご説明したとおり、相続人の中に行方不明者がいる場合は、「不在者財産管理人の選任」や「失踪宣告」など、家庭裁判所を介した手続きが必要になります。もっとも実際に全ての手続きが完了するまでには、相当の時間や費用がかかり、残された他の相続人にとっては大変な負担になることがあります。
自身の相続人になる人の中に行方不明や音信不通の方がいる場合は、将来、相続が発生したときに備えて、今の内から「遺言書」を作成して対策することを強くお勧めします。
遺言書とは
遺言書とは、財産を所有している本人が自身が亡くなった後の財産の承継先を指定する法的な文書のことです。
例えば、行方不明者以外の人に財産を相続させる旨の遺言書を作成しておくことで、相続が発生した後は、その遺言書のとおりに手続きを進められるため、不在者財産管理人選任や失踪宣告の申立てを行うことなく、不動産の名義変更や預貯金の相続手続を円滑に進めることができます。
今現在、ご家族(推定相続人)の中に行方不明者がいる方にとっては、相続トラブルの予防になります。
詳しくは、「遺⾔書を作成しなくてはいけない理由」をご覧ください。
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ここでは、行方不明の相続人がいる相続手続きについてご説明しました。
行方不明といっても住所や連絡先が分からないだけなのか、全く連絡が取れず行方不明なのか、経緯や背景など様々なケースがあります。
また、現在、ご家族の中に行方不明者の方がいる場合は、今の内から遺言書を作成するなど対策しておくことも重要になります。
対応方法や対策に困ったときは弁護士や司法書士などの専門家に、一度は相談してみてください。
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