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相続⼈の調査とは
相続人の調査とは、亡くなられた人の財産を相続(承継)する人が誰になるのか、相続人を確定させるための手続きのことです。
相続人の調査は、相続手続きの入り口となり、かつ最も重要な手続きになります。
相続⼈を確定できなければ、相続⼈全員が参加する遺産分割協議や故⼈(被相続⼈)の不動産、預貯⾦、株式など相続財産の名義を相続人に変更するための⼿続きを進めることもできません。
当事務所においても相続人の調査を行う前提として、ご依頼者様から故人の親族関係の聞き取りを行い、伺った内容からある程度の相続関係の概要は把握をしますが、その後の戸籍調査で家族や親族の方が知りえない人が相続人として戸籍上に稀に存在することがあります。
相続人調査の重要性
相続人の調査が重要になるのは相続手続きにおける遺産分割協議の場面です。
遺産(相続財産)を分け合うために話し合う遺産分割協議は、相続人全員の参加と同意が必要になります。
相続人の一部でも欠けている遺産分割協議は無効となり、後から新たな相続人が判明した場合には、再度協議や相続手続き自体をやり直す必要があります。
さらに、被相続人の不動産や預貯金等の相続財産を相続人名義に変更する手続きでは、遺産分割協議書に相続人全員の署名・捺印(実印)と印鑑証明書の添付と併せて、その協議書に署名・捺印しているのが相続人全員であることを証明するための戸籍謄本等の提出が求められます。
言い換えると、遺産分割協議書に署名・捺印している人以外に相続人がいないことを戸籍により証明する必要があります。
相続人の調査は、相続開始時の入り口であり、かつその後の相続手続き全体に影響を及ぼす重要な手続きとなりますので、迅速かつ慎重に調査を進める必要があります。
相続人調査の方法
ここからは、「誰が相続人になるのか」を調査・確定するための手続きについて、ご説明します。
相続人を調査する方法は、戸籍の収集です。ただし、戸籍は収集するだけではなく戸籍に記載されている情報を丁寧に読み取り、亡くなられた人の相続人が誰になるのか法律上の規定に沿って、慎重に調査する必要があります。
以下からは、収集する戸籍の範囲・種類や相続人となる人をご説明します。
戸籍とは
相続人調査は、被相続人(亡くなった人)の「戸籍(謄本)の収集」から始まります。
戸籍とは、日本国籍の方の親族関係などを登録して公に証明する制度です。戸籍には、その人の家族関係や親族関係が記載されており、被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集することで、自ずと相続人が誰であるか特定することができます。
戸籍に記載されている内容
記載事項 | 内 容 |
本 籍 | 戸籍が置かれている場所のことです。 |
筆頭者 | 戸籍の最初に記載されている方です。筆頭者は、その人が死亡しても変わりません。また、婚姻により婚姻後の氏を、夫の氏とした場合は夫が、妻の氏とした場合は、妻が筆頭者になります。 |
戸籍事項 | 戸籍の編製日(戸籍が作成された理由・原因・作成日)が記載されます。また、戸籍の全部が消除(削除)された場合は、その年月日と原因などが記載されます。 |
身分事項 | 筆頭者以外の戸籍に記載されている方の「氏名」、「生年月日」、「父母や兄弟姉妹などの続柄」、「配偶者(夫又は妻)」や戸籍の届出(出生届、婚姻届、死亡届など)、「養子縁組や子の認知」が記載されます。また、別の戸籍から異動してきた場合には、その年月日や原因、異動前の本籍地や筆頭者が記載されます。 |
戸籍の種類
種 類 | 内 容 |
戸籍謄本 | 戸籍謄本とは、筆頭者や身分事項も含めた現在の内容を記載した戸籍の写しのことをいいます。相続手続きでは、被相続人が亡くなったときの戸籍謄本を取得することから始めます。 |
除籍謄本 | 戸籍に記載されている方が婚姻や離婚、養子縁組により他の戸籍に異動したり、死亡したりすると、その方は戸籍から除かれます。この戸籍から除かれることを「除籍」といい、戸籍に記載された全員が除籍された後の戸籍を除籍謄本といいます。 |
改製原戸籍 | 現在の戸籍は、法改正に伴い電子化(コンピューター化)されて改製(作り直された)ものになります。そして、改製する前の戸籍を「改製原戸籍(かいせいはらこせき)」と呼びます。改製原戸籍は、電子化されたときに、本籍を置いていた市区町村役場に保管されています。 |
戸籍を取得する方法
戸籍は、本籍のある市区町村役場で取得することができます。
戸籍を取得すると、どこの本籍地から転籍してきたのか記載がされているので、転籍前の本籍へ順番に遡りながら本籍地のある所轄の市区町村役場で個別に戸籍謄本等を収集します。
また、亡くなった人の戸籍謄本を調査する中で、子(認知、養子縁組)や元配偶者(離婚など)の存在が判明した場合は、その人の本籍のある市区町村役場で戸籍謄本等を取得します。
取得方法は、役場の担当窓口に直接出向くか、郵送で請求することもできます。
※戸籍法改正により令和6年3月1日からは、本籍地以外の市区町村役場でも戸籍謄(抄)本の取得ができるようになります。
相続⼈(法定相続⼈)とは
相続人は、被相続人(亡くなった)の親族であれば誰でもなれるわけではなく、相続人になれる人の順位(順番)や範囲が法律に定められています。
その法律に定められた相続人のことを「法定相続人」と呼びます。
法定相続人は、被相続人との続柄(親族関係など)に応じて順位(順番)が定められており、相続財産を承継する割合(相続分)についても順位に応じて異なります。
そして、戸籍を収集するときに、まず意識するのがこの法定相続人の順位です。戸籍を収集することで、被相続人の親族関係も明らかになり、法定相続人に応じて収集する戸籍の範囲も決まります。
各相続人の順位・被相続人との続柄・法定相続分(割合)をまとめると下記のようになります。
法定相続⼈の順位と相続分(相続する割合)
相続関係図
※イラストをクリックすると拡大表示されます。
法定相続人の順位と相続分
相続する順位と続柄 (被相続⼈との関係) |
常に相続⼈ | 相続分 | 備考 |
第1順位 直系卑属 (被相続⼈の⼦、孫など) |
配偶者 |
⼦=2分の1 |
被相続⼈に⼦がいれば、被相続⼈の配偶者と第1順位である⼦(孫・ひ孫)が相続⼈となります。 ※⼦が複数いる場合は、相続分2分の1を⼈数に応じて分配します。 |
第2順位 直系尊属 (被相続⼈の親、祖⽗⺟等) |
|||
直系尊属=3分の1 配偶者=3分の2 |
被相続⼈に第1順位の直系卑属(⼦、孫)がいない場合は、配偶者と第2順位である被相続⼈の直系尊属(⽗ ⺟⼜は祖⽗⺟)が相続⼈となります。 ※直系尊属が複数いる場合は、相続分3分の1を⼈数に応じて分配します。 |
||
第3順位 兄弟姉妹 (被相続⼈の兄弟姉妹) |
兄弟姉妹=4分の1 |
直系卑属と直系尊属がいない場合には、配偶者と第3順位である被相続⼈の兄弟姉妹又は甥・姪が相続⼈になります。 ※兄弟姉妹が複数いる場合は、4分の1を⼈数に応じて分配します。 |
法定相続人となる配偶者とは
被相続⼈の配偶者(夫または妻)は、常に相続⼈となります。
ただし、配偶者が法定相続人になるには、被相続⼈が死亡した時に法律上の婚姻関係にあることが必要になります。
つまり、被相続人と内縁関係にある事実婚や被相続人と既に離婚されている人は、法定相続人になれません。
【法定相続人になれる配偶者】
- 被相続人が死亡した時点で婚姻関係にある配偶者
第1順位の法定相続人である直系卑属とは
第1順位の法定相続人である直系卑属(ちょっけいひぞく)とは、被相続人の子(孫など)のことをいいます。
法定相続人となる「子」には、被相続人と婚姻関係の間に生まれた「子(嫡出子)」以外にも「被相続人が養子縁組」や「認知」、「被相続人が離婚した前妻(前夫)との間の子」も相続人に含まれます。
反対に、被相続人と再婚した配偶者に連れ子がいる場合には、その連れ子は、原則として法定相続人にはなれません。ただし、被相続人が亡くなる前に連れ子と養子縁組をしていた場合には、被相続人の子(養子)として法定相続人に含まれることになります。
そして、被相続人の実子、養子、認知した子の各相続分は平等です。
また、被相続人よりも先に子が亡くなっている場合には、「孫」が代わりに相続人(代襲相続人)になります。その孫も亡くなっているときは、ひ孫が代わりに相続人となり、さらにひ孫も亡くなっている場合には、さらにその子へと代襲相続や数次相続により相続権が移ることになります
※代襲相続について、詳しくは「代襲相続・数次相続(再転相続)の違い」をご覧ください。
【法定相続人に含まれる被相続人の子】
- 被相続人の子(婚姻関係の間に生まれた子)
- 被相続人の離婚した前妻(前夫)との子
- 被相続人が養子縁組した子
- 被相続人が認知した子
第2順位の相続人である直系尊属とは
第2順位の相続人となる直系尊属(ちょっけいそんぞく)とは、被相続人の「父母(又は祖父母など)」のことをいいいます。
被相続人に子がいない場合や子がいたとしても既に亡くなっていたり、相続放棄をしたときは、被相続人の父母が相続人になります。また、被相続人の父母には、血縁関係にある親に限らず、養子縁組した養親も含まれます。
そして、被相続人の父母が既に亡くなっている場合でも祖父母のどちらか一方でも健在であれば、被相続人の祖父母が法定相続人になれます。
つまり、被相続人に子がいない場合には、第2順位の法定相続人として被相続人の世代に一番近い人が法定相続人になるということです。
例えば、被相続人よりも先に親が死亡している場合は、祖父母が相続人となり、祖父母も先に死亡しているとすると曾祖父母が健在であれば相続人になります。
【法定相続人に含まれる被相続人の直系尊属】
- 被相続人の父母(実親)、祖父母など
- 被相続人と養子縁組した養親
第3順位の相続人である兄弟姉妹とは
被相続人(亡くなった人)の親など(直系尊属の全員)が既に亡くなっているときは、第3順位の相続人である被相続人の兄弟姉妹が法定相続人になります。
法定相続人となる兄弟姉妹には、被相続人の義兄弟姉妹(配偶者の兄弟姉妹)は含まれません。
ただし、異父・異母(片方の親が同じ)の兄弟姉妹や、親が養子縁組した子や認知した子(ex.被相続人の父が養子縁組や認知した子)も被相続人の兄弟姉妹として法定相続人に含まれることになります。
なお、異父・異母の兄弟姉妹の相続分は、父母を同じくする兄弟姉妹(全血の兄弟姉妹)の相続分の半分になります(民法第900条4号)。
被相続人の異父・異母兄弟間の相続分(第3順位の法定相続人)
上記図のように、被相続人には父母を同じくする弟のほか、異母兄弟の兄がいます。法定相続分は、被相続人の弟(全血の弟)が3分の2、兄(半血の兄)が3分の1となります。また、上記の図において、亡父が前妻と婚姻関係になく、亡父のみが兄を養子縁組若しくは認知した場合も同様となります。(民法第900条4号但書)
※誤解しやすいのが、亡父が被相続人になる相続では、前妻の子(若しくは養子や認知した子)も他の相続人である子(全血兄弟)と相続分が平等になる点です。
そして、被相続人よりも先に兄弟姉妹が死亡しているときは、被相続人の「甥・姪(養子の兄弟姉妹であれば、その養子縁組後に生まれた子)」が代わりに、相続人になります。
ただし、被相続人よりも先に、「甥」「姪」が死亡しているときは、甥・姪の子は相続人(代襲相続人)になれません。つまりは、兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっているときは、相続人(代襲相続人)となれるのは一世代限りということです。
※詳しくは「代襲相続・数次相続(再転相続)の違い」をご覧ください。
【法定相続人に含まれる被相続人の兄弟姉妹】
- 被相続人の兄弟姉妹(父母を同じくする兄弟姉妹)
- 被相続人の異父・異母の兄弟姉妹
- 被相続人の親が養子縁組、認知した子
相続⼈の調べ⽅(戸籍収集の流れ)
以下は、第1順位から第3順位の法定相続人を調査するときの基本的な流れになります。
ただし、相続関係や相続手続きの方法によっては、収集する戸籍が異なることもあります。
STEP1.被相続人の戸籍を収集する
相続人の調査をするうえで、必ず収集するのが「被相続人の出生から死亡するまで繋がりが取れる戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)一式」です。
出生から死亡するまでの戸籍を取得することで、被相続人の婚姻・離婚の有無、子の存在の有無(認知・養子縁組)を確認できますので、法定相続人である配偶者や順位に応じた法定相続人を把握することができます。
【収集する戸籍】
- 被相続人の「出生から死亡まで繋がりが取れる戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)」
STEP2.配偶者の有無を確認
被相続人の死亡時に婚姻関係(再婚も含む)にあった配偶者(夫又は妻)の存在が確認できた場合は、その配偶者は相続人になります。
また、離婚した配偶者の間に子がいる場合には、その子も法定相続人になるためその子の戸籍を取得します。
【収集する戸籍】
- 配偶者の(現在の)戸籍謄本
※被相続人の戸籍に配偶者の記載があれば共通で使用できます。
STEP3.子の有無を調査
被相続人の戸籍を収集・調査していく中で、子の存在が確認できた場合には、その子の戸籍謄本を取得します。
相続人になれる子には、被相続人が養親となって養子縁組した子や認知した子も含まれます。
ただし、子が既に死亡していた場合には、死亡した子の子(孫)や法定相続人(配偶者など)へと相続(代襲相続・数次相続)する権利が移ります。したがって、亡くなっている子の出生から死亡までの繋がりが取れる「戸籍謄本等」を取得して、次に相続人となれる人がいないか調査する必要があります。
※被相続人の子や孫などの存在が確認できた場合は、ここで戸籍の収集は完了します。
反対に、子の存在が確認できない場合は、次のステップに移ります。
【収集する戸籍】
- 子の戸籍謄本
※子が既に死亡している場合は、以下の戸籍を収集
- 亡子の「出生から死亡まで連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)」
- 亡子の相続人(孫など)の戸籍謄本
STEP4.子の存在を確認できない
被相続人に、子(孫)がいない場合や子が既に死亡しており、亡子に配偶者や子(孫)もいない場合には、第2順位の法定相続人である被相続人の父母(若しくは祖父母)が相続人になるため、父母(養父母を含む)の「戸籍謄本等」を取得します。
ただし、父母及び祖父母のいずれも既に亡くなっている場合は、第2順位の相続人が存在しないことになり、第3順位の法定相続人である被相続人の兄弟姉妹を調査するために、亡父母の出生から死亡まで繋がりが取れる戸籍を収集して、被相続人の兄弟姉妹を確定させます。
父母(又は祖父母)の出生までの戸籍を取得するとなると、年代によっては戸籍の記録が破棄若しくは消失していることもありますが、可能な限り遡って戸籍を収集する必要があります。
※被相続人の父母などの存在が確認できた場合は、ここで戸籍の収集は完了します。
反対に、父母(又は祖父母)が既に亡くなっている場合は、次のステップに移ります。
【収集する戸籍】
- 父母(若しくは祖父母)の戸籍謄本
※父母(若しくは祖父母など)が既に死亡している場合は、以下の戸籍を収集
- 亡父母の「出生から死亡まで連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)」
STEP5.父母(や祖父母)も既に死亡している
父母、祖父母などを含めた被相続人の直系尊属が既に死亡している場合は、第3順位の法定相続人である被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。
そして、兄弟姉妹も既に亡くなっている場合は、兄弟姉妹の子(被相続人の甥・姪)が相続人となるため、亡兄弟姉妹の出生から死亡までの連続した戸籍を収集して、次に相続人となる人を調査します。
ただし、被相続人の死亡日よりも前に甥・姪も死亡していた場合は、甥・姪の子には相続権は移りません(代襲相続は発生しない。)
反対に、被相続人が死亡した後に甥・姪が死亡していた場合は、数次相続により甥・姪の子に相続権が移ります。
※詳しくは、「代襲相続・数次相続(再転相続)の違い」もご覧ください。
【収集する戸籍】
- 兄弟姉妹の戸籍謄本
※兄弟姉妹が既に死亡している場合は、以下の戸籍を収集
- 亡兄弟姉妹の「出生から死亡まで連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)」
- 甥・姪等の戸籍謄本
ケース別の具体例
以下に、収集する⼾籍についてケース別にまとめた具体例をご紹介します。
※相続人の状況や相続⼿続きの⽅法によって、収集する戸籍が異なることがあります。
①被相続⼈(夫)の妻と⼦2⼈が相続⼈となる
- 被相続⼈夫の「出⽣から死亡まで繋がりが取れる⼾籍謄本(除籍謄本・改製原⼾籍)」
- 妻の⼾籍謄本
※被相続⼈夫の⼾籍謄本に妻の記載があれば、共通で使⽤できます。 - ⼦(2⼈)の⼾籍謄本
※被相続⼈の⼾籍謄本に⼦の記載があれば、共通で使⽤できます。
ただし、⼦が婚姻(結婚)等により除籍されている場合は、⼦の⼾籍謄本を別途取得する必要があります。
②被相続⼈(夫)の⼦1⼈が相続⼈となる
(被相続⼈の妻は、既に亡くなっている)
- 被相続⼈夫の「出⽣から死亡まで繋がりが取れる⼾籍謄本(除籍謄本・改製原⼾籍)」
- 亡妻の⼾籍謄本(除籍謄本)
※被相続⼈夫の⼾籍謄本に妻の死亡の記載があれば、共通で使⽤できます。 - ⼦の⼾籍謄本
※被相続⼈の⼾籍謄本に⼦の記載があれば、共通で使⽤できます。
ただし、⼦が婚姻(結婚)等により除籍されている場合は、⼦の⼾籍謄本を別途取得する必要があります。
③被相続⼈(夫)の妻と亡夫の親が相続⼈となる
(被相続⼈に⼦がいない)
- 被相続⼈夫の「出⽣から死亡まで繋がりが取れる⼾籍謄本(除籍謄本・改製原⼾籍)」
- 妻の⼾籍謄本
※被相続⼈の⼾籍謄本に妻の記載があれば、共通で使⽤できます。 - 親の⼾籍謄本
④被相続⼈(夫)の妻と亡夫の弟が相続⼈となる
(被相続⼈に⼦がおらず、親も既に亡くなっている)
- 被相続⼈夫の「出⽣から死亡まで繋がりが取れる⼾籍謄本(除籍謄本・改製原⼾籍)」
- 妻の⼾籍謄本
※被相続⼈の⼾籍謄本に妻の記載があれば、共通で使⽤できます。 - 亡親についての「出⽣から死亡まで繋がりが取れる⼾籍謄本(除籍謄本・改製原⼾籍)」
- 弟の⼾籍謄本
※亡親の戸籍謄本に弟の記載があれば、共通で使用できます。
ただし、弟が婚姻(結婚)等により除籍されている場合は、弟の⼾籍謄本を別途取得する必要があります。
相続関係説明図の作成と法定相続情報一覧図を取得
戸籍等を収集して相続人の調査が完了した後は、「相続関係説明図」を作成します。
相続関係説明図とは、亡くなった人(被相続人)と相続人の関係を整理して、相続人の調査結果を一覧にまとめた家系図のようなものです。相続手続きでは、銀行や法務局、税務署等から戸籍と一緒に相続関係説明図の提出を求められることがあります。
また、相続関係説明図と似ている証明書として、「法定相続情報一覧図」があります。
法定相続情報一覧図とは、法務局が戸籍等から相続関係を確認して、証明(認証)してくれる証明書になります。
各種相続手続きで法定相続情報一覧図を提出することで、戸籍等の提出を省略できます。
法定相続情報一覧図は、複数の相続手続きを同時並行で進める際には、非常に便利な書類になりますので、取得することをお勧めいたします。
※ 詳しくは、「相続関係説明図と法定相続情報証明制度」をご覧ください。
連絡が取れない、所在不明の相続人がいる場合
所在不明の相続人も遺産分割協議に参加する必要がある
戸籍を調査していく中で、お互いに面識のない相続人や疎遠で連絡先が分からない相続人がいることも少なくありません。連絡先や所在が分からない相続人がいる場合でもその相続人には、遺産分割協議に参加してもらうなど、相続手続きに関与・協力してもらう必要があります。
こういった場合に遺産分割協議をせずに手続きを進めることも考えられます。
ただし、実務上は不動産や預貯金などの相続財産の名義を変更するための手続きでは、連絡先が分からない相続人を含めた相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書の提出、各種の手続きに使用する書類への押印(実印)が必要になります。
つまり、遺産分割協議をしない場合でも相続人全員と連絡が取れない限り、手続きを進めることが事実上困難となります。
連絡先や所在が分からない相続人との連絡方法
連絡先や所在が分からない相続人がいる場合の対応方法ですが、まず、その相続人の住所を確認するために、「戸籍の附票(こせきのふひょう)」を取得します。
「戸籍の附票」とは、住民票の異動履歴が記載された証明書になります。戸籍に記載されている本籍地で「戸籍の附票」を取得することで、その相続人の現在の住まいが判明します。
そして、判明した住所宛に、相続手続きに関する事情を説明した手紙を送ります。
お送りする手紙の内容としては、その方が相続人として手続きに関与・協力して頂く必要があることを説明するために、「相続関係説明図」と手続内容や事情を簡単に説明した書類をお送りします。
ただし、書類の文言には慎重になる必要があり、相手の感情を害さないためにも最大限の配慮が必要です。
また、手紙で全ての内容を説明する必要はなく、ご自身の連絡先を記載して、先方から連絡を頂いてから詳細な内容を説明するようにします。
住所が判明しても連絡が取れない場合
住所を判明したとしても、実際にはその住所に相続人が住んでいないこともあり、連絡が全く取れず所在が分からないことがあります。
こういった場合には、事情に応じて、行方不明の相続人に代わって、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらい、他の相続人と不在者財産管理人との間で遺産分割協議を行って相続手続きを進めます。
その他にも、行方不明となってから一定期間を経過している相続人の場合は、家庭裁判所へ失踪宣告の手続きを行うことで、その行方不明となった相続人を法律上死亡したものとみなして、相続手続きを進めることになります。
ただし、不在者財産管理人や失踪宣告の手続きは手間と時間がかかり、相続手続き自体が完了するまでに相当の時間が掛かります。
相続人の中に連絡先や所在が分からない人がいる場合には、遺産分割協議をせずに相続手続きを進められるよう、あらかじめ遺言書を作成するなどの対策をすることも検討してみてください。
※詳しくは、「遺言書を作成しなくてはいけない理由」をご覧ください。
相続人でも相続する権利を失うことがある
相続人であったとしても相続するための地位や権利を失うことがあります。
具体的には、以下に記載する3つのケースです。
ケース1:相続⽋格
相続欠格とは、相続において利益を得ることを目的に不正な行為をしようとした相続人については、法律上の相続する権利(遺留分も含めて)を失わせるための制度のことです。
相続欠格に該当する行為は、民法で定められている以下の事由が該当します。
- 故意に相続⼈または相続について先順位もしくは同順位にあるものを死亡させた者、⼜は死亡させようとしたために刑に処せられた者
- 被相続⼈の殺害されたことを知って、これを告発せず⼜は告訴しなかった者。ただし、その者に是⾮の分別がないとき、⼜は殺害者が⾃⼰の配偶者もしくは直系⾎族であったときは、この限りではない
- 詐欺⼜は脅迫によって、被相続⼈が相続に関する遺⾔をし、撤回し、取り消し、⼜は変更することを妨げた者
- 詐欺⼜は脅迫によって、被相続⼈に相続に関する遺⾔をさせ、撤回させ、取消させ、⼜は変更させた者
- 相続に関する被相続⼈の遺⾔書を偽造し、変造し、破棄し⼜は隠匿した者
相続⽋格の⼿続⽅法
上記に該当する行為を行った相続人が相続欠格により相続権が失われたことを証明するには、その相続人自身が「相続欠格証明書」を作成して署名・押印(実印)するか、訴訟により特定の相続人が相続欠格に該当することを裁判所に認めてもらう必要があります。
また、いつの時点で相続する権利を失うのかというと相続発生後に相続欠格になった場合には、被相続人が亡くなったときに遡って相続権を失います。相続発生前に相続欠格となったのであれば、その時から相続権を失います。
ただし、相続欠格により相続権を失った相続人に子など直系卑属がいる場合には、その子が代わって相続人になります(代襲相続人)。つまり、特定の相続人が相続欠格により相続権を失った場合でもその相続人の子に相続する権利が移るということです。
ケース2:相続⼈の廃除
相続人の廃除とは、被相続人に対して虐待などの暴力を振るったり、それに等しい重大な侮辱をした相続人については、相続する権利(遺留分も含めて)を失わせるための制度のことです。
具体的に、どういった行為をすると相続人の廃除ができるのか民法の条文には規定されていませんが、以下のような場合には相続人の廃除に該当するとされています。
- 被相続⼈に対して虐待をしていた場合
相続⼈が被相続⼈の⾝体に直接暴⼒を振るったり精神的な苦痛を与えるなどの「虐待」をしていた場合です。 - 被相続⼈に対して重⼤な侮辱をした場合
相続⼈が被相続⼈の名誉や⾃尊⼼を⼤きく傷つけるなど侮辱する⾏為を⾏っていた場合です。 - その他著しい⾮⾏があった場合
被相続⼈の財産を勝⼿に売却したり、相続⼈⾃⾝の借⾦を被相続⼈に返済させたことや相続⼈が重⼤な犯罪⾏為をして有罪判決を受けたりなど、被相続⼈に対する直接的な⾏為ではないですが、相続⼈が⾏った⾏為により被相続⼈がそれに等しい程を苦痛を与えられた場合です。
相続⼈廃除の⼿続⽅法
相続人廃除の手続きは、本人(被相続人)が(生前に)家庭裁判所に相続廃除の申立てを行う方法、又は相続発生後に手続きをする場合は、あらかじめ本人(被相続人)が特定の相続人を廃除する旨の遺言を作成する2つの方法があります。
特に注意したいのが、本人が死亡した後に特定の相続人を廃除したい場合には、遺言書を作成する必要があるということです。また、遺言で相続人を廃除するためには、「遺言執行者」から家庭裁判所に申立てる必要があります。したがって、遺言書には、「相続人を廃除する理由」と共に「遺言執行者の指定と権限」を具体的に書く必要があります。
ただし、相続発生後に相続人を廃除するための原因や理由、根拠となる事実を立証することは、非常に困難であるため遺言を書く段階であらかじめ遺言執行者(弁護士など)と打合せをして証拠となる書類や記録なども残しておく必要があります。
なお、相続人の廃除により相続権を失った相続人に子がいる場合には、相続する権利が移ることは相続欠格と同様です。
相続⼈の廃除と相続⽋格との違い
相続⼈の廃除と相続⽋格は、特定の相続人について相続する権利を失わせるという効果があるのは同じです。ただし、主に異なる点が3つあります。
①相続⼈の廃除は、後から取り消すことができる
相続人の廃除は、一度家庭裁判所に受理されたとしても後から取り消すことができます。
例えば、本人(被相続人)の生前であれば、本人から家庭裁判所に相続人の廃除を取消すための申立てをするか、相続発生後であれば遺言に相続人の廃除を取消す旨と遺言執行者を指定することで、家庭裁判所に相続人の廃除を取消すための申立てをします。
家庭裁判所に廃除の取消しが受理されると相続人としての権利は復活します。
※相続⽋格は、後から取り消すことはできません。
②相続⼈の廃除は、⼾籍に記載される
相続人の廃除は、その旨が戸籍に記載されます。
したがって、被相続人の生前に相続人として廃除をされた人がいる場合には、戸籍謄本を調査することで判明することになります。
また、相続手続きでは相続人の廃除をされた人の戸籍謄本を添付することで、その人が相続する権利がないことを証明できます。
※相続欠格の場合は、戸籍に記載されません。別途「相続欠格証明書」や裁判所の「確定判決の謄本」が必要になります。
③相続⼈の廃除ができる対象は、遺留分を有する相続⼈のみ
相続人廃除の対象となるのは、遺留分を有する相続人である配偶者、子、父母のみです。遺留分を持たない兄弟姉妹が相続人となる場合は、相続人の廃除をすることはできません。
これは相続が発生したときに、自身の財産を兄弟姉妹に渡したくないときは、遺言書に、兄弟姉妹に財産を渡さない旨(若しくは、別の親族等に遺贈するなど)を記載することで、兄弟姉妹には遺留分は認められておらず、たとえ遺言の内容を不満に思っても財産を相続するための権利をそれ以上は主張することが出来ないためです。
※相続欠格は、全ての相続人が対象となります。
※遺留分について、詳しくは「遺留分とは」をご覧ください。
ケース3:相続放棄
相続欠格と相続人の廃除以外にも相続人が相続する権利を失うことがあります。
それは、相続人自らが相続権を手放すための手続きである「相続放棄」です。
例えば、被相続人が生前に多額の借金などを負ったまま亡くなった場合は、相続人がその借金を引き継ぐことになります。つまりは、被相続人に代わって相続人が借金を返済することになります。
こういった場合に、相続人は家庭裁判所に相続放棄の申立てをすることで、被相続人が負っていた借金などを返済する義務を免れます。
ただし、一度相続放棄してしまうと借金以外の被相続人が所有していた不動産や現金なども相続できなくなります。
また、相続欠格や相続人の廃除とは違い、相続放棄をした相続人に子など直系卑属がいたとしても、その子には相続する権利は移りません。
※相続放棄について詳しくは、「相続放棄とは」もご覧ください。
相続人がいないと相続財産は国に帰属する
戸籍を収集した結果、相続人の全員が死亡若しくは、相続放棄等により相続する権利を持つ親族等が全くいない場合には、最終的に相続財産は国に帰属することになります。
相続財産を国に帰属するための手続きは、前提として家庭裁判所に相続財産管理人(改正民法では「相続財産清算人」といいます。)を選任してもらい、債権者や特別縁故者等に相続財産の分配を行い、残った相続財産を国庫に帰属させる手続きを行います。
そのため、ご自身の財産を相続する人がいない方や法定相続人以外の親族等に財産を譲り渡したいと希望される方は、あらかじめ遺言書を作成することも検討してみてください。
※遺言書について、詳しくは「遺⾔書を作成しなくてはいけない理由」についてもご覧ください。
専門家に依頼するメリット
弁護士や司法書士などの専門家に相続人調査を依頼することで、ご自身で必要な戸籍の収集をする手間を省けるだけではなく、相続人の調査・特定を確実にしてもらえることが最大のメリットになります。
また、専門家に依頼することで、相続関係説明図の作成や法定相続情報一覧図の取得にも対応してもらえるので、その後の相続手続きをご自身で行う場合でも手間が簡略化できます。
相続手続きを専門家に依頼したときの報酬が気になる方は、相続人の調査など相続手続きの一部を弁護士や司法書士などの専門家に依頼することも可能です。
専門家などに相続人の調査を相談・依頼することで、その後の相続手続きのアドバイスなども頂けることがありますので、その後の手続きがスムーズに進みます。
相続人の調査のみでも専門家に依頼することを検討してみてください。
当事務所の業務について
相続人調査は、相続手続きの当事者となる相続人を確定させるための重要な手続きであり、相続手続きの入り口です。
ご依頼者の中には、相続人となる親族をある程度は把握されているようですが、実際に戸籍を収集してみると既に相続人が死亡していたり、ご依頼者と面識のない相続人が現れたりと想定外のことが起こることも少なくありません。
当事務所では、相続人調査だけではなく、遺産分割協議書の作成から不動産の相続登記など各種相続手続きのご依頼も承っております。
お気軽にご相談ください。
当事務所の業務内容(相続人調査)
ご依頼頂いた場合の当事務所の業務内容は、以下のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍等の取得
- 相続⼈全員の⼾籍謄本の取得
- 相続⼈全員の住⺠票等の取得
- 相続関係説明図の作成
- 法定相続情報⼀覧図と申出書の作成・申出・取得
※相続手続きに必要な戸籍等の収集を代行いたします。
当事務所へのご依頼から完了までの流れ
当事務所は、初回は無料相談を⾏っています。相続⼿続きでお困りの方は、お気軽にお問合せください。
- ご相談時に、相談者様(相続⼈代表者)の⾝分証明書(運⼿免許証など)をご持参ください。
- 被相続⼈の⼾籍(除籍)謄本(1通)⼜は相続⼈(相談者)の⼾籍謄本を⼀緒に、ご⽤意頂ければその後の⼿続きがスムーズに進みます。
当事務所で⼾籍を代行して取得します。可能な限り迅速に進めていきますが、通常は相続人の調査が完了するまでに約1か⽉から2か⽉ほどかかります。
戸籍の収集が完了した後に、法務局に法定相続情報一覧図の申請(申出)をします。申請した⽇から7⽇から10⽇程で法定相続情報⼀覧図の写しが交付されます。
当事務所から相続⼈の調査・確定の結果について、ご報告・ご説明させていただきます。
その後の相続⼿続きについて可能な限りフォローをさせていただくこともできます。
相続登記などの⼿続きをご依頼をいただければ、そのまま当事務所で⼿続きを代⾏させていただくことも可能です。
戸籍の読み方など内容の確認や戸籍を収集することに、ご不安な方はお気軽にご相談ください。