記事をご覧いただき、ありがとうございます。司法書士の山田武史です。
相続が発生したときに、亡くなった人の財産について、どのように分けるのか相続人全員で話し合うことを遺産分割といいます。
複数の相続人がいる事案では、遺産分割を行うことが必要になるケースがほとんどです。
それでは、相続人全員が合意をした遺産分割について、再度やり直すことができるのでしょうか。
本記事では、一度成立した遺産分割のやり直しができるのか解説いたします。
このページの目次
遺産分割とは
遺産分割とは、どういった手続きなのかご説明いたします。
遺産分割とは、亡くなった人の相続人が複数人いる場合、相続人全員が話し合って、遺産の分け方を決める手続きのことをいいます。当然、相続人が1人しかいなければ、遺産分割を行う必要はありません。
人が亡くなり相続が発生すると、原則として、亡くなった人の財産は、民法で定められた相続分の割合で相続人が引き継ぐことになります。これを法定相続分といいます。
法定相続人には、順位(順番)があり、順位に応じて各相続人の相続分が異なります。
ちなみに亡くなった人の配偶者は、常に相続人になります。
- (第1順位)子と配偶者 ・・・ 子2分の1、配偶者2分の1
※子が複数いる場合は、2分の1を⼈数に応じて分配します。 - (第2順位)両親と配偶者 ・・・ 両親3分の1、配偶者3分の2
※両親が複数いる場合は、3分の1を⼈数に応じて分配します。 - (第3順位)兄弟姉妹と配偶者・・・ 兄弟姉妹4分の1、配偶者4分の3
※兄弟姉妹が複数いる場合は、4分の1を⼈数に応じて分配します。
上記のとおり、相続人が複数いる場合に遺産分割をしなければ、各相続人の相続分に応じて遺産を共同で所有することになります。
ただし、財産を共同で所有することは、相続する財産によってはデメリットになることもあります。
預金や現金であれば、各相続人の相続分に応じて、均等に分け合うことはできます。ただ、不動産などの財産は、その管理や処分をするには、相続人全員の合意で決めなければならず、意見がまとまらないこともあります。
また、時間の経過と共に、不動産を相続した相続人が亡くなり、次の世代へ相続が発生(数次相続)して、不動産を所有している人が多数となり、権利関係が複雑になることがあります。そのため、亡くなった人の財産に不動産がある場合は、遺産分割を行い特定の相続人に権利を集約するために遺産分割をすることが多くあります。
詳しくは、「遺産分割協議書の作成について」もご覧ください。
遺産分割は、やり直しできるのか
相続人全員で話し合って、一度成立した遺産分割はやり直すことができるのでしょうか。
先に、結論を申し上げると遺産分割をやり直すことはできます。
ただし、やり直しができるケースは限られています。
以下に、遺産分割をやり直すことができるケースについて、解説いたします。
遺産分割をやり直すことができるケース
相続人全員がやり直すことに合意したとき
遺産分割をやり直すことについて、相続人全員の同意があれば、再度遺産分割をやり直すことができます。ただし、先に行った遺産分割の後に、相続人が取得した財産を第三者に売却など処分してしまっている場合は、遺産分割をやり直すために、第三者に財産を返還するよう請求することは難しくなります。
遺産分割の対象となる財産に漏れがあった
遺産分割が成立した後に、亡くなった人の財産が新た見つかった場合は、遺産分割をやり直すことができます。この場合は、既に話し合った財産を含めて遺産分割をすることや、新たに見つかった財産のみを対象として遺産分割をすることもできます。
他の相続人から詐欺や脅迫を受けた
遺産分割を行った際に、一部の相続人が相続財産を故意に隠していたり、他の相続人に対して強迫(脅迫)したなどの場合は、既に行った遺産分割を取り消したうえで、再度やり直すことができます。
これは、詐欺や脅迫により行った遺産分割は、法律上取り消すことができるため、やり直しが可能になります。
遺産分割が有効に成立していなかった
遺産分割が有効に成立するには、相続人全員が合意することが条件になります。もっとも一部の相続人が参加していなかったり、後から相続人が見つかることもあります。また、未成年者や認知症等により判断能力が無い相続人は、遺産分割に直接参加することができないため、相続人全員が参加していたとしても遺産分割自体は無効となります。
未成年の相続人の場合は、特別代理人の選任が必要になったり、判断能力が無い相続人については後見人を家庭裁判所から選任してもらったうえで、改めて遺産分割を行う必要があります。
遺産分割をやり直す際の注意点
遺産分割をやり直す際に、注意が必要なのが課税される税金です。
亡くなった人から財産を相続すると、相続財産の総額によっては相続税が課税されるのはご存知の方も多いのではないでしょうか。
もっとも遺産分割をやり直すと相続税以外にも課税される税金があります。
以下に、遺産分割をやり直すことで課税される税金を記載いたします。
相続税のほか贈与税・所得税が課税される
相続人全員の合意のうえ、一度成立した遺産分割は、その時点で「相続」により各相続人が財産を取得したことになります。
そして、再度遺産分割を行い当初とは、別の相続人が財産を取得すると、当初財産を取得した相続人から別の相続人へ財産の「贈与」があったものとして、財産を取得した相続人に「贈与税」が課税されることになります。また、別の相続人が財産を取得する代わりに対価の支払があれば「売買」と取り扱われて、対価を受けた相続人に対して「所得税」が課税されることになります。
特に、相続税が課税されるケースで、再度遺産分割を行うとなると、贈与税や所得税などの二重課税になるケースがあるということです。遺産分割のやり直す際は、慎重に検討する必要があります。
不動産がある場合は登録免許税も課税される
遺産分割をやり直す際に、相続財産の中に不動産がある場合は、相続登記もやり直す必要があります。
相続登記とは、亡くなった人が所有していた不動産の名義を遺産分割により不動産を取得することになった相続人名義に変更するための法務局に対する手続きのことです。
相続登記は、法務局に申請する際に、登録免許税という税金を納付する必要があります。
そして、一旦成立した遺産分割により相続登記をした後に、遺産分割をやり直して別の相続人が不動産を取得することになった場合は、相続登記もやり直すことになるため登録免許税も再度納付する必要があります。
先に相続登記をした際に納付した登録免許税も還付されることもありません。
まとめ
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
遺産分割をやり直すことができるのか、ご相談を頂くことがあります。その際、安易にやり直すことがきるとは言い切れません。
本記事でご説明したとおり、遺産分割をやり直すとなると余分な税金が課税されてしまう他、再度相続人全員に連絡を取り、書面に押印を頂く必要があり、必ずしも相続人全員がやり直すことに納得するとも限りません。
司法書士などの専門家に依頼すると、費用が掛かるためご自身で手続きされる方もいます。
たしかに、専門家に依頼すると報酬等の手数料がかかります。また、ご自身で手続きすることも否定はしません。
もっとも専門家に依頼することで、相続人の調査や相続財産の調査を含めて、遺産分割をやり直す必要がないよう慎重に手続きを進めていきます。それは専門家としての責任もあるからです。
遺産分割のやり直しを含めて、後日トラブルにならないよう相続手続きを完了させたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをお勧めします。
当事務所では、遺産分割協議書の作成や相続登記を含めた相続手続きを一括して代行しております。
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山田武史司法書士事務所
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