司法書士が家族信託に注目した理由

記事をご覧いただき、有難うございます。港区の司法書士山田武史です。

家族信託の利用件数は、年々増えてきており、一般の方にも大分浸透してきた印象があります。

僕個人の感覚としては、家族信託が注目されたのは10年程前からです。

家族信託とは、財産を所有する人が認知症や介護が必要になった時に備えて、ご自身の家族に不動産や預貯金等の財産管理や処分等を任せる仕組みのことです。

僕は司法書士なので、完全なポジショントークになるかと思いますが、いち早く家族信託に注目したのは、士業の中でも司法書士ではないでしょうか。

この記事では、僕が司法書士として家族信託に注目した理由について、お話ししようと思います。(※本記事に記載する内容は、一司法書士の見解や考えになります。)

家族信託に注目した理由

僕が家族信託に、最初に注目したのは、不動産を売却する際に財産を所有している本人以外の人が売主として手続きを進められる点です。

司法書士が取扱う業務には、不動産売買の立会い業務というものがあります。

不動産売買の立会い業務とは、売買代金を支払う際に、司法書士が売主及び買主の本人確認と意思確認を行い、売主から買主へと不動産の名義を変更するための書類が整っているか確認する手続きのことです。

その際に、特に気を付けるのが不動産の所有者である売主に売却する意思があるのか、しっかり売主本人から確認できるかです。

認知症などにより判断能力が低下すると本人が意思表示できなくなり、売却する意思が確認できず、そのままでは不動産を売却することはできません。

こういった場合は、契約を途中で解約するか、家庭裁判所から成年後見人を選任してもらい、売却手続きを進めるか選択することになります。

成年後見制度を利用することについて

売主本人の意思確認が取れない場合は、そのままでは不動産を売却することはできません。したがって、どうしても不動産を売却したい場合は、これまでは家庭裁判所から成年後見人を選任してもらうしか方法がありませんでした。

ただし、僕個人としては不動産売買を成立させる目的のために、成年後見制度を利用することには躊躇することがあります。

なぜなら、成年後見制度の本来の目的は、判断能力が低下した本人の生活や財産全般を法律的に保護し、支えるための制度だからです。

不動産の売買取引では、売主が高齢であることがよくあります。ただ、多くのケースでは、その売主本人の生活を支援したり、定期的にお世話をしている親族の方がいます。

つまり、本人の生活を支援している人が既にいる方でも不動産売買の取引を成立させるために、あえて後見制度を利用しなければならず、そういった意味では僕個人としてもジレンマを感じることがありました。

もっとも司法書士の立場としては、本人の意思確認ができない以上、成年後見人を選任するしかないことは、十分に理解はしていますが既に本人の生活を支援している親族がいる方にとっては、必要のない手続きでもあるとも言えます。

ただし、成年後見制度自体を否定するつもりはなく、本人の生活を支援できる親族がいない方にとっては、有用な制度であることは間違いありません。

詳しくは、「成年後見について」をご覧ください。

家族信託では家族(受託者)が不動産を売却できる

家族信託では、本人の意思確認ができる元気な内に、ご家族と信託契約を締結しておくことで、本人が認知症等を発症したとしても家族(受託者)が売主となり、不動産を売却することができます。

つまり、本人のお世話をしてくれている家族や親族がいる方は、あらかじめ家族信託を利用して、不動産を売却するための権限をそのご家族に与えておくことで、本人の判断能力が低下したとしても成年後見制度を利用することなく、ご家族が不動産を売却するための手続きを行えます。また、不動産を売却した後の現金についても家族(受託者)が本人(親)の生活費などのために支出することができます。

僕が家族信託に最初に興味を惹かれたのもこの点です。

もっとも成年後見制度自体を否定するわけではありません。ただ、成年後見制度以外の選択肢ができたことは、財産を所有する本人やご家族だけではなく、実務を取り扱う司法書士としても大きな意味があると感じます。

詳しくは、「家族信託(家族のための信託)とは」をご覧ください。

まとめ

最後まで、記事をお読みいただき、ありがとうございました。

不動産売買に立ち会う機会が多い司法書士としては、家族信託は有用な制度であると思います。将来の財産管理について、ご不安をお持ちの方は、元気な内から対策することを検討してみてください。

当事務所では、家族信託を含めた生前対策についてご相談を承っております。

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